中3から高1になっても通塾を続ける 中小塾が“中高一貫塾”になるための秘策とは ~高1の最初の中間テストが その後のすべてを決める~

以前の記事で、小6から中1に上がるタイミングで退塾する生徒を減らすための方策を提示しましたが、中3から高1の段階においても壁があり、高校入試が終わるとその学年の生徒が一時的にがくっと減る塾は少なくありません。 そうした塾特有のリスクを最小限にとどめるために必要なこと。それが、中学も高校も続けて自塾に通ってもらうため、“中高一貫”のスタイルの塾に生まれ変わることです。 ただし、いくら言葉だけで「当塾は中高一貫スタイルで継続して通える塾です」と言っても説得力がありません。具体的にどのような体制やカリキュラムを整えれば良いのでしょうか。今回は、塾を中高一貫スタイルで運営するためのノウハウを提供します。

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中3→高1の進級のポイント

中学に入ったら三者面談で大学進学の話を

中3から高1に上がる際に退塾を防ぐためには、高校入試は通過点であり、本命はあくまで大学受験であることを意識させる必要があります。大学受験合格という新たな目標を作ることによって、高校に入ってからも塾に通い続ける動機付けが可能になるからです。

では、どの時期に具体的な大学進学のイメージを聞くべきでしょうか。様々な時期が想定されますが、できれば中学生になった時、最低でも高校受験の志望校を決める時までには、塾長か教室長、保護者、生徒の三者面談で尋ねておくべきでしょう。

聞き方としては、まず、高校卒業後は大学進学する意思はあるかを聞きます。「大学に行きたいか」と聞かれれば、大半の中学生は「行きたい」と答えます。親が大学卒だったり、兄弟姉妹が既に進学していたりするなど、身近な肉親が大学に行っていれば、自分も進学するイメージが付きやすいからです。

具体的な大学名が出ない場合は将来の夢から逆算

ただ、中学生の場合、行きたい具体的な大学名が出てこないことも考えられます。その際、有効なのが、以前にも他の記事で紹介した、将来の夢から逆算する方法です。今回はもう少し詳しく活用の仕方を解説します。

三者面談の際、仮に生徒が「将来は弁護士になりたい」といった場合、法学部を目指すことが目標となります。法学部は国公立、私立の大学にありますが、どの大学の法学部に入れば弁護士になる確率が高まるかは、毎年、発表される大学別司法試験合格者数・合格率ランキングを見れば想定できます。基本的にはランキング上位の大学に行くのが司法試験合格への近道です。

上位の大学の法学部に行くためにどうすれば良いかと言えば、それぞれの法学部に進学している数が多い高校を選ぶことが重要となります。例えば、ある国公立の上位大学に何人行っているかが分かれば、その進学校の上位何%に入れば行ける確率が高まるかが見えてきます。あるいは、上位の私立大学への進学者数を見て、上位何%であれば行けるかを見定めます。

夢を決めて、そのために行く大学を決め、その大学に行くための高校を決めて受験する。そして、高校に入ったら、当該大学に行ける上位の成績をキープし、最終的に大学受験に臨む。こうして夢を実現させるまでの道筋を描くことで、まずはその高校に受かることが目標となり、合格するために、いつまでに何をやらなければならないかが明確になるわけです。


しかし、夢を聞いても「まだ分からない」「将来やりたいことはまだない」と答える生徒もいるかもしれません。その場合、どうすれば良いか。答えは簡単です。やりたいことがないなら、ひとまず偏差値の高い大学を目指せ」とアドバイスするのです。理由は、偏差値の高い大学の方が、良い人間関係を築けたり、刺激を受けてやりたいことが見つかったりする可能性が大きいからです。

大学受験まで面倒を見る体制と心構えが必要

自塾で大学受験まで目指すことを話すのであれば、当然のことながら、高3の大学受験までしっかりとサポートできる体制を整えておく必要があります。大学受験に向けた指導ができる質の良いアルバイト講師を雇用し、それらの講師も「絶対合格させる」とやる気に溢れていることが不可欠。塾長も生徒に「高校からの3年間はきっちり面倒見るから、自塾で一緒に頑張ろう」と自信を持って言える心構えが大切です。

塾長や教室長が、日々インターネットなどを通じて情報収集に励み、大学の受験制度の理解、合格への戦略立案、生徒のモチベーションコントロールなど、指導以外の受験テクニックにも精通していることも重要です。

そうした点では、中小の塾は強みを発揮できるといえます。大手は教室長や社員が異動することがあり、「私が最後まで面倒を見る」とは言いづらい状況があります。一方、中小の塾では、塾長や教室長が変わることはほぼなく、「自分はここにいるからずっと一緒に頑張ろう」といって、生徒の信頼を得ることができるわけです。

高校最初の中間テストで頑張れば成績順位をリセットできる

高1のスタートダッシュで上位を目指す

大学受験まで自塾で面倒を見ることを生徒、保護者と共有できれば、次に大切なのは、中3から高1へのステップを円滑につなげる施策です。実は、高校生活の勉強で最も重要なのが、入学して最初に実施される定期テストである「中間テスト」で成績上位に入ることです。なぜなら、この中間テストの出来次第で、高校3年間で常に上位にいることができるかどうかが決まるといっても過言ではないからです。

ここで上位に入れば、高校3年間はよほどのことがない限り、上位をキープできます。逆に、下位になってしまうと、そこから這い上がるのが難しくなります。高校最初の中間テストはそれほど大事なもの。とにかくスタートダッシュを決めて上位に食い込むことが何より重要なのです。

中学の時、あまり成績が振るわなくても、高校に入って初めての中間テストで好成績を上げて上位に入れば、そこからは中学時代とは全く異なり、優秀者の仲間入りをして希望の大学に行ける可能性も高くなります。つまり、自分をリセットすることができるのです。最初の中間テストでは絶対につまずかないこと。これが、高校生活の最大のポイントです。

“つまずき”を防ぐための春休み指導

高1の中間テストで上位を目指すために必要となるのが、高校生活が始まる直前の春休みの間に、高校の授業の内容を先取りして予習する指導を、自塾でみっちりと行うことです。高校は中学に比べて科目数が格段に多くなるため、勉強のやり方や対策ができていないと、後手、後手に回り、追いつかなくなって落ちこぼれてしまうのが悪いパターン。そうならないためにも、先手、先手で予習する習慣を春休みの2週間で付けて、高校生活の第一歩を最高のコンディションで踏み出す作戦です。

中間テストが大事なこと、そのために春休み指導を実施することは、前年の11月の保護者会、12月の三者面談などで予め伝えておきます。これを伝えることで、「この塾は高校の勉強についてもしっかりとした方針と施策を持っていて信頼できる」と保護者や生徒に印象付けられます。

そうなると、塾を続ける動機付けにもなるわけです。「継続してください」などという必要はありません。高1の中間テスト対策を行うことを伝えれば、保護者も生徒も、自然と高校に入っても通塾する考えになり、大半がほぼ自動的に継続してくれます。これが“中高一貫塾”になるための大きなポイントの一つといえるでしょう。


独自の継続キャンペーンでさりげなく負担を軽減

高校生活に入っても通塾するか迷っている家庭に対し、多くの塾では「3月無料」「4月無料」など、授業料を取らないことを売りにして、つなぎとめるやり方が一般的のようです。しかし、中高一貫塾の方針と施策があれば、そうした無料施策を打たなくても継続してもらえる可能性が高いのがメリットです。

高校に入って最初の頃は、塾は週1回で良いという考え方もあります。ただ、中間テストでしっかりと良い点を取ってもらうためには、春休みのうちから週2回通ってもらいたいというのが本音です。そのため、中間テストまでは、週1回の料金で週2回の通塾ができる割引キャンペーンを提供し、さりげなく家庭の負担を減らす施策を打つことも有効です。

これは、継続を促すためではなく、継続してくれたことに対する感謝を形にして表すもの。特に私立高校に通い始め授業料が高い家庭にとっては、しっかりと勉強の面倒を看てくれるのに、授業料を減免してくれる有り難い施策となり、結果として塾への印象はより良好になります。こうしてさりげなく家計を助ける思いや実際の施策があることも、支持を受ける塾になるためのポイントといえるでしょう。