塾講師に求められるスタンスとは?個人塾の生命線となる”良い”塾講師を揃えるにはどうすればいいか【後編】

前編では、塾にとって看板商品である講師を揃えるには、とにかく多くの応募(母数)を積極的に集め、その中から面接を通じて、コミュニケーション力がある人材を採用することが重要であるとお伝えしました。また、応募を集める方法、人材を見極めるポイントについても触れました。それを踏まえて、後編では集めた人材をどのように育成していくか、あるいは、どうやって定着を図っていくかについて、解説していきます。

監修いただいた先生

十分な研修と試用期間で本採用の合否を判断する

応募してきた学生に対し、面接でスクリーニングし、求めていた人材を採用できたとします。ただし、面接で完璧に人物を見極めることは困難な場合もあるでしょう。100%は無いということです。実際に働き始めると、面接で受けた印象と違うということも想定されます。


そうした場合のために、設定しておきたいのが研修期間と試用期間です。例えば、研修を2週間、試用を2カ月などと設け、研修期間では先輩の教え方を見ると同時に模擬授業を行い、試用期間では実際に生徒を教えさせて、それぞれの期間で教室長などと毎回振り返りをします。そうした試みを通じて、学生に教え方を身に付けてもらうと共に、塾側が適性を判断し、最終的に本採用の合否を決めるという流れです。


研修2週間、試用2カ月というのは、やや長く、丁寧かもしれません。人手不足を解消するため、1、2回の研修ですぐにシフトに入れる塾もあるでしょう。しかし、研修と試用をおざなりにすると、講師の教え方に問題があることを見抜けなかったり、まだ教え方が十分に身に付いてないためにミスを連発してしまったりするなど、クレームにつながりかねない事態が起こることも考えられます。そこで万が一悪い噂が立ってしまったら、個人塾にとっては命とりです。教室の価値を下げないためにも、「間違いのない人物」を「仕上がった状態」で表に出すことが非常に重要ですそのために、十分な研修と試用期間を確保することが必要なのです。

塾長や教室長と講師、講師同士が話す機会を意図的に作る

では、研修と試用期間を経て、仲間に加わってくれた講師を、どうすれば卒業するまで定着させることができるでしょうか。知っておくべきなのは、いかに良い講師でも、モチベーションが変化することがあるということです。やる気に満ちている時期もあれば、調子が上がらない時もあります。悪い意味で慣れが生じて惰性で授業をやってしまう場面もあるかもしれません。


そうした変化をいち早く把握するために有効なのが、定期的に30分~1時間の時間を割き、塾長や教室長が一人ひとりの講師とマンツーマンで面談を行うことです。そこで、自塾で働いていてどうか、生徒に関する悩みはないか、大学で困っていることはないか、就職活動(就活)はどうか……など、仕事のことから人生相談までできる機会を設けるのです。いわば、家族のように接し、講師が生徒の話を何でも聞くように、塾長や教室長が講師の話を傾聴することで、講師の心の状態を確認したり、助言を与えたりする場とします。

また、日々の授業が終わった後、30分~1時間、講師が生徒の指導報告書を書く際も、全員を集め、同じ場で作業をするようにします。菓子や飲み物を提供し、和気あいあいと話しても良い場にして、講師同士の交流と生徒に関する情報共有の時間とするわけです。こうして、塾長や教室長と講師、あるいは講師同士が話せる機会を意図的に作ることによって、一体感や居心地の良さを醸成すると同時に、問題の芽があれば早めに摘み取れるようにします。その結果、講師のモチベーションを保つことができると共に、長く続けられる環境も整えられるというわけです。


模擬授業大会によって講師同士が切磋琢磨する

一方、講師の教え方の質も、アップデートが必要です。そこで、年3回程度、授業が無い土日などに、4〜5時間かけて講師研修会を開催します。その中では、全講師が授業のやり方を披露する模擬授業大会を実施し、他の講師が採点します。見事トップに輝いた講師にはクオカードや図書カードを進呈するなど、インセンティブも用意します。模擬授業を互いに見ることによって、向上心に火が点き、他の講師の良いところを学んで自分の指導に活かすレベルアップも期待できるというわけです。


さらに、講師研修会とセットでマナー研修や就活セミナーを実施することも有効でしょう。これから就活に臨む大学生にとってイベントのメリットが高まり、積極的な参加を促進できます。就活セミナーでは、エントリーシートの添削や面接練習なども組み入れると、より一層参加意欲が沸くでしょう。講師研修会も当然のことながら時給を支払います


そして、イベント終了後は懇親会を行い、互いの親睦を深めます。時給が支払われ、就活の支援が受けられ、最後にはご飯も付いてくる。講師にとってこれほどうま味のあるイベントはないでしょう。こうした、自塾のレベルアップと講師の人生サポート、交流の促進が可能となる、一石三鳥のイベントも検討してみると良いでしょう。