[1]塾経営の基本(真髄)を体現してくれたA塾

監修いただいた先生

 

今回からテーマが変わり、私がこれまで関わってきた塾の成功例・失敗例を基に、より具体的な「実践論」をお届けします。 実例を紹介しながら、これまでのマーケティング論の復習をしつつ、新しいヒントを掴んでいただければ幸いです。 第1回はイントロダクションとして塾経営の基本(真髄)を体現してくれたA塾についてお話します。

生徒獲得に必要だったのは「◯◯の壁」を乗り越えること

地方都市の住宅街に位置するA塾は当時、塾生が8人まで減少し、文字通り瀕死の状態でした。古民家?と見間違うくらいの古い一軒家を借りての営業でした。廊下は歩くたびにギシギシと音を立てる有様です。

指導内容は自立学習指導です。当時、すでに型落ちしていた古いCAIを使用していました。塾長は藁にもすがる思いで、私が主宰する塾生獲得実践会の門を叩きました。塾長は必死に運営マニュアルに書かれていたとおりの実践を続けました。そして2年後、塾生は67名になっていました。私が塾長に招かれてA塾を訪問したのは、その年の夏です。

塾長が私に話してくれた重要な点についてお話します。

塾長は次のように話しました。「これまで15年塾経営をしてきましたが、私には塾生50名以上は集められないと思っていました。それが、実践会に入会してから盲目的にマニュアルに書かれていた通りに実行し、必死で2年間を過ごしていたら、いつの間にか50名を突破し、67名までになっていました」

この塾はそれまで、最大でも40名程度の塾生数だったそうです。開校4年目のことです。そこからジリジリと塾生が減り続け、ついには8名までになってしまったというのです。「自分には50名の塾生は集められない」…こうした心理状態をメンタルブロック、日本語で内制止と言います。簡単に言えば心の壁のようなもので、「〇〇は無理だ」と思っている人はけっして、〇〇を達成することはありません。自分には50名の塾生は集められないと思っている人に、50名の塾生は集められないのです。

別の理屈を掲げたメンタルブロックの持ち主も多く存在します。曰く「私は1人ひとりを大切にしたいので、私の手が届く今以上の塾生数を集めようとは思いません」。これなどは、(きつい言い方ですが)今以上の生徒を集められない自分に言い訳をしているに過ぎません。あなたの指導が子どもにとって本当に有益ならば、1人でも多くの子どもに提供するのが正義であり、社会貢献です。あなた自身が成長して、手が届く範囲を広げる努力をすべきです。その努力を怠って「ひとり一人の生徒を大切にしたいから」と言うのは言い訳であり、やはりメンタルブロック(自分にはこれ以上の生徒を集められない)の1つです。

まずはこの内なるメンタルブロックを叩き壊す必要があります。どうやって?-それもA塾の経営者が教えてくれています。

不調の塾の経営者ほど暇を持て余している

手前味噌ですが、私が提供するマニュアルは机上の空論ではなく、現場での実践を通して得られた具体的内容になっています。大きな資本も必要ありません。ただ、それだけに実際に実行しようとすれば多くの時間と労力が必要になります。例を挙げれば、「毎日3通ずつ、生徒に手紙を書きましょう」「テスト当日は早朝の6時から特別授業を行いましょう」等々です。効果は抜群、すでに実証されているものばかりですが、よっぽど本気で取り組まなければ、続けられるものではありません。

しかしA塾の塾長は「盲目的に」それらを実践したというのです、必死で。で、気付けばいつの間にか塾生50名を突破していたと-これがメンタルブロックの壊し方です。もともとメンタルブロックというのは精神的な障壁です。ならば、そんなことを考える暇もないくらいに行動すればいい。悩むより動くことです。何事も、自分が動くことでしか現状を変えることはできません。多くの塾経営者と交流してきた私の経験則ですが、不調の塾の経営者ほど暇を持て余しています。そして「打ち出の小づち」を求めています。好調の塾の経営者は、一日を忙しく「仕事」に充てています。(仕事と作業は別物です。詳しくは別項で)

誤解を恐れずに言えば、どれだけ下手な手法で経営していたとしても本気で、必死で取り組んでいれば、塾生50名~100名の塾は作れます。今、経営不振に悩んでいる塾経営者の皆さん、覚悟を決めることです。3年間、脇目もふらず全てを塾経営(生徒の学力向上と意欲の向上のためにできること)に注いでください。目の前のことに必死になって取り組めば、必ず次にすべきことが見えてきます。そうすれば3年と言わず、3ヶ月で塾の雰囲気が変わってきたことを実感できるはずです。少なくとも生徒&保護者は塾の変化を感じ取ってくれます。

ちなみにA塾はその後、自宅兼塾舎を新築し、生徒数160名が在籍する塾になりました。

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