グレーゾーンの生徒にどう向き合う?自塾でやってみた指導の工夫と保護者アプローチの工夫

監修いただいた先生

発達障害、もしくは発達障害の疑いがあるグレーゾーンの生徒の向き合い方に悩んだ経験はありませんか?学校では専門の支援員のサポートを受けたり、特別な学習指導を受けている生徒さんでも、塾では他の生徒さんと同じように成績UPを求めてきます。私の生徒にもそんなお子さんがいました。

 

おや?と思ったのは入塾面談のときでした。ちょっと落ち着きがない、なかなか目が合わないなという第一印象でした。指導していても、特に行間を読む力が弱くて、これは他の生徒さんと同じ指導では無理だなと思いました。

 

経験の浅い塾の講師、ましてや学生講師は驚くと思います。集中力がなかったり宿題をしてこなかったり、授業に来ないこともよくあります。原因がわからなければ自分を責めるかもしれませんね。

 

発達障害・グレーゾーンの生徒の特徴

 

グレーゾーンの生徒さんについて、具体的には以下のような特徴があると思います。

 

  • 急なお休みが多い
  • 授業に集中できずに上の空のことが多い
  • 宿題や予習を忘れる
  • 質問に対する答えが全然違う
  • 読解力がない

 

どうしてできないんだろうと思うかもしれませんが、その生徒さんの特性なんですね。言いたいことが全く伝わらない、または他の生徒さんに明らかな悪影響があるという場合は「うちの塾ではごめんなさい」ということになるかもしれませんが、保護者とも状況を共有し、コミュニケーションをうまくとれば、できることはあります。

 

わたしの場合、その生徒さんをよく観察して、彼ができないことを見つけ、そのサポートをすることにしました。もちろん、参考になる文献を読んだりして勉強もしました。

 

その生徒さんの場合、解説を読めば理解できるだろうと思っても、解説をめくって該当箇所を見つけるということが難しいようでした。

 

「順を追ってページをめくるのが難しい」

 

このことがわかったので、音読を勧めました。また、読むところに線を引いたり紙で隠しながら読むように指導しました。

 

文字、文章が苦手」

 

集中力が持続しないため、文章を読むのを嫌がりました。そのため、暗記が必要な問題は一問一答の口頭で指導しました。

また、説明はなるべく短くします。「これだけ見て」というレベルまで要点だけ見せました。「この辺りに書いてあるよ」だと理解しづらいので、「ここに書いてあるよ」と端的に伝えます。

 

これ、それなどの指示語が理解できない」

 

指示語が理解しにくいのは発達障害、グレーゾーンの生徒さんの特徴です。「これ」と「それ」の違いを理解するのも難しいので、まずは「これ」という場合と「それ」という場合があるんだよ、と可能性を伝え、あとは少しずつパターンで理解していけるようにしました。時間はかかりましたが少しずつアップデートしていき、入試にも太刀打ちできるレベルになりました。

 

この生徒さんの指導をしながら、マニュアルを作っていきました。こんなときにはこうしようという虎の巻のようなもので、生徒さんには学習時必ず見るように伝えていました。少し共有します。

 

生徒がつまずいていそうなときは、「長文を読むときのルール」をもう一度確認してみよう、などと声をかけます。マニュアルを見てね、では、どこを見るべきか迷うからです。

 

マニュアルも長文はNGです。ポイントだけ番号をつけて箇条書きに。これは実はA4で3枚もあるのでちょっと長いですね…。アップデートしているうちに増えてしまいました。

 

このマニュアルを使い始めて2ヶ月は成績が安定しませんでしたが、3ヶ月ほど経つとなんとなく身についたかな?という兆候が見られ、4ヶ月では「ここまで解けるんだ!」と驚くレベルに成長しました。ちなみに入試でも素晴らしい結果を出してくれました。

 

グレーゾーンを疑う生徒の保護者とのコミュニケーション

 

保護者とのコミュニケーションは悩ましいところです。保護者から学習障害と診断されていることを申告されるのとされない(または隠される)のとでは対応も異なります。非常にデリケートな問題なので、対応如何によっては塾の信用問題にも関わります。

 

今回事例としてご紹介した生徒さんの場合、ちょっとした問題を起こして保護者に連絡した際、実はADHDと診断されているのだと伝えられました。最初から違和感はあったので驚きはしませんでしたが、入塾時に教えて欲しかったと思いました。もしかしたら授業で辛い思いをしていたかもしれませんしね。

 

それ以来、当塾では入塾時にある程度スクリーニングできるよう、申込書に工夫を加えました。ご要望欄のところに、例として「落ち着きがなく、学校・病院などに相談している」という文言を加えました。

 

 

もちろん、子どものそのような特性に触れて欲しくない保護者もいます。「うちの子はちゃんとできるはず!指導が悪い!」と怒って退塾された方もいました。

 

どうしても思うように指導ができない、話を聞いてくれない、集中力が持たない、他の生徒さんにはできることがその生徒さんは何度繰り返してもできない、そのような場合は、指導報告の際に状況だけは伝えるようにしましょう。「ここまでは指導しました。集中力が続かず予定して範囲まで進めることができませんでした。次回この続きからがんばりましょう。」など、塾としてはやるべきことはやったということを伝えていいと思います。

 

保護者との信頼関係が結べていれば、少し踏み込んで「学校や専門機関で生活習慣のことで指摘を受けたことはありませんか?」など聞いてみるのもいいと思います。もしかして発達障害かもと気づきながらも認めたくないパターンと、そもそも気づいていないパターンがあると考えられるからです。

 

もし前者であれば、認識を改めてもらうことが重要で、「〇〇してもらえば△△まではできます」などと具体化して伝えるのがいいと思います。どちらにせよ、保護者も気になっていることがあるなら、本人のためにも専門の窓口に相談してみるという選択肢も伝えられるといいと思います。とてもセンシティブな問題なので、面談で伝えるのがベストです。

 

根気よく寄り添い少しでも成果につながる

 

エヌラボスタディは国語専科なのですが、国語って一番思考があちこちに飛びやすい教科なんです。説明文や評論文はまだしも、小説の理解がなかなかに難しい。自分の解釈を入れてしまうことがよくあります。

 

先のマニュアルを使い慣れてくると、問題を解く前にマニュアルの音読から始めます。その文章に関わりそうなところがわかれば、事前にもう一度ポイントをチェックします。国語の読み書きは「型」があります。それを意識するために丸つけ読みをしたり線を引いたりなどの工夫をします。

 

試験の時も横にマニュアルがないと解けないのでは?と思うかもしれませんね。大丈夫です、これを3〜4ヶ月続けると頭に入ります。

 

発達障害、またはグレーゾーンの生徒、他にも問題のある生徒と向き合うことを避けることは簡単かもしれませんが、根気よく寄り添うと、想定以上の成果を出してくれることもあります。わたしもそのような生徒が都内トップ校に合格したときは飛び上がりました。きっと、あのマニュアルを今でも使ってくれていると思います。やってできない子どもはいませんが、やることが難しい子どもはいます。そのハードルを少しでも下げる工夫を重ねながら、一緒に進んであげられたらと思います。

 

Comiruでも専門家によるセミナーを実施しました。とても参考になる情報が細かい事例とともに紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。

 

発達障がいの子どもたちへの理解と接し方<基礎編>

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