優秀な講師採用の新ルール。集め方と見極め方 <前編/優秀な講師をどう集めるか>

近年、顧客ニーズに柔軟に対応できるという点で、個別指導塾の人気が高まっています。通いたい子ども・通わせたい親が増える一方で、生徒1人または2人につき講師1人を確保しなくてはならない塾側の最大の課題は、ひとえに、「優秀な講師採用」ということにつきます。今回は、元大手塾経営者である経営アドバイザー大澤一通先生に、優秀な講師採用について伺いました。

監修いただいた先生

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塾講師=割りのいいバイトの時代は終わった

———講師の採用に頭を悩ませている学習塾、教室長は多いと思います。この実態をどのようにみていますか? 

一昔前までは、学生にとって塾講師は“割りのいいバイト”でした。時給も高いし、先生と呼ばれる。学校の先生を目指している学生からの応募も多かったと思います。それが、実態が明らかになるにつれ、“割りに合わないバイト”になってきました。 

 例えば、1コマ1時間の授業の準備に、それと同じくらいの時間がかかること。これでは2時間分の時給をもらわないと“割りに合わない”。飲食店のバイトは続ければ時給が上がる、でも塾講師はそんなに変わりません。授業を受け持つのでシフトの柔軟性も少なく、それなのに責任ばかりが重い。教員という仕事も敬遠されがちな時代です。そんな様々な状況において、塾講師はバイトとして“割りに合わない”。応募は減るべくして減っているとみています。

多忙な大学生はバイトをする余裕がない

また、近ごろの大学生は忙しいのも事実です。出席も厳しい、実験や実習もあって、さらに就活の早期スタートと長期化。バイトをする余裕がないというケースも、昔と比べたら増えています。学生は学生で大変なんですね。

 塾運営側の状況はどうかといえば、個別指導塾が増えている以上、講師の人数を確保する必要があります。魅力的なマーケットがあっても、そのエリアに大学生が少ないという理由で開校できないケースも少なくはありません。

そのエリアに大学があって、学生が帰宅前に来てくれるなら何の問題もありませんが、実際には自宅の最寄り駅でのバイトを希望する場合が多いでしょう。そうなると時間が合いません。個別指導塾へのニーズが増えて、実際、個別指導塾も増えている、それなのに講師の大学生が雇えない。これが現状です。 


———講師採用は非常に厳しいということが、仕事の魅力の低下、大学生とのマッチングの難しさという面で理解できました。そんな中でも、できるだけコストと工数をかけずに採用するにはどうすればいいのでしょうか。

採用チャネルごとのポイントは次の通りです。

採用チャネル ポイント 
 卒塾生 塾の方針を理解し、生徒にとってもロールモデルである。講師本人も信頼感を感じ働きやすい環境でもあり、理想の講師と言える。
 紹介制 紹介者のターゲットを絞る。
媒体チラシ
一般的だが費用対効果が悪い。ハードルを下げるメッセージを。「シフトは柔軟に相談にのります」「得意な科目1教科でもOK」「研修があるから安心」 

理想の講師は「卒塾生」。高2から狙いを定めて仕掛ける!

 一番いい方法は、何と言っても卒塾生を引っ張ってくることです。その学生がどんな子か、どのくらいやってくれそうかも分かるし、本人も塾の価値観や理念をベースにした指導法が分かっています。また、塾生にとっても、身近な先輩の成功体験はいい影響を与えます。実際、先輩のアドバイスはよく聞くものです。3者にとって良いことしかない、理想のパターンですね。

ところが、卒塾生の講師が7割、8割占めているという塾もあれば、1割程度という塾もあります。この違いはどこにあるかというと、学生が塾生として通っている時から、「合格したらこの塾で働きたい」と思わせる仕掛けをしているかどうかです。大学に合格してからでは遅いでしょう。特に優秀な塾生には、高2くらいから仕掛けておくことをおすすめします。

また、卒塾生採用は、首都圏の大学への進学が多い地方の塾では難しいかもしれません。また、高等部まで持っているということも、卒塾生採用が可能な条件になるでしょう。 

「紹介」は特別枠とする

———卒塾生以外の採用チャネルは、求人媒体と紹介制が多いと思います。それぞれうまくいくコツはありますか?

求人媒体や紹介制度を利用している塾は多いと思います。媒体については、何しろお金がかかる割に募集が来ない。チラシ配りも含め、マス向けの募集広告は費用対効果がよくありません。講師1人採用するのに5万、10万かかるということも、実は珍しくはありません。昔は大学の入学式に乗り込んで行って、学生たちのサークル勧誘と並んで講師募集をしているところもありました。

紹介制に関してはうまくやれば成功します。ただし、“紹介してくれた講師と採用された人、それぞれにいくら支給しますよ”というやり方を採っているとしたら、それはあまりよくありません。お金がメインの目的となってしまうと、誰でもいいから、適当に都合のいい知り合いに声をかけることだってあり得ます。

ちゃんと対象を見極めて、この子の友達なら間違いないだろうという学生にピンポイントで紹介を依頼するようにしてみてください。20人講師がいたとしたら、2〜3人程度になるかと思います。「他ではない、あなただから頼むんだよ」という特別感が大切です。塾から信頼されていると思うと意識が変わります。わたしの実感値で言うと、信頼できる紹介者が連れてきた講師は、ほぼ9割が優秀でした。そうでない場合、紹介された人で優秀だなと思った学生は、半分くらいだったかと思います。 

———バイトをしたい学生が減り、さらに採用も難しい。今ご紹介いただいた卒塾生や紹介だけでは足りないとすると他にどのような方法が考えられますか?

先程、チャネルの話をしましたが、かといって上記以外にチャネルが増やせるかというと、大手塾でない限り難しいのが実態でしょう。そこで、打ち手としてあげられるのが「ターゲット」と「打ち出し方」の工夫です。 

まず、ターゲットの話です。実際塾講師になりたいと思っている学生(顕在層)は向こうから来てくれます。しかし、そういう学生が年々減っているというのが課題でした。だとすると、塾講師になりたいとは思っていない学生(潜在層)をどうやって引っ張るか、ということになります。

そのようなターゲットへの「打ち出し方」という点で、簡単な手法としては、応募のハードルを下げることです。先ほど述べたような塾のバイトに魅力を感じない理由を、一つずつフォローしてあげます。「シフトは柔軟に相談にのります」「得意な科目1教科でもOK」「研修があるから安心」というように、具体的に打ち出してください。 

もうひとつ、潜在層の中で塾にとって必要な、人から好かれ、明るくて気さくで、コミュニケーション能力が高い学生を、どうしたら採用できるか考えてみます。このような学生は、将来を見据え、企業のインターンに参加するなどいます。こういう学生が普通の打ち出し方で塾のバイトに応募するかというと、普通はしません(笑)子ども相手なんて面倒だし、就活にも役立たず、おしゃれでもないと思われているはずです(笑)そんな学生に魅力を訴求するとしたらこれしかありません。「塾の運営に携わることができる」と「就職活動に活かせる」です。


訴求ポイント1「塾の運営に携わることができる」

先ほど述べた「打ち出し方」も押さえながら、どう訴求すればいいのか。実際にわたしが関わったプロジェクトをご紹介します。 教室から学生講師に、課題と予算を与えます。例えば、生徒をたくさん集めるにはどうすればいいか、などそれぞれの教室のリアルな課題がいいでしょう。学生たちは調査をしたり販促物を工夫したり、主体的に動きます。自分たちで映像授業を作った学生もいましたね。ミッションを与えると、彼らは本当に一生懸命取り組みます。学生にとっては今しかできない、かつ、将来のためになる経験になります。 

訴求ポイント2「就職活動に活かせる」

就活中、大学時代に熱中したことはなんですか?と必ず聞かれます。塾のアルバイトなんて、なんのアピールにもなりません。ところが、塾運営に携わった、主体的に企画して、具体的に成果を出したとなると、ものすごいアピールになります。 

———塾側の負担も大きいのでは?

もちろん負担は大きいです。教室長にその責任を課すと塾運営に支障をきたす可能性があるため、教室長だけではなく、その上の管理職がかかわることも大切です。学生にとっても管理職と直接やり合うことがモチベーションになります。

学生の採用において最も大切なことは、彼・彼女にとって、この塾で働くことが自分たちのためになることです。塾側のメリットだけでは絶対にだめです。むしろ、塾に興味がない人を動かそうと思ったら、「経験」「スキルアップ」しかありません。「お金」ではないと思いますね。優秀な講師を求めるならなおさらです。

<後編/失敗しない講師採用の面接ノウハウ>に続く