Vol.3「教務以外の業務、講師にどう頼む?」

目標だった教室長。でもいざ働き始めると、「こんなはずではなかった」「思っていたより辛い…」という声も。「新米教室長のお悩み相談室」は、そんな悩める新米教室長のためのコラムです。解決するのは、おなじみComiruアドバイザーの大澤先生です。

監修いただいた先生

 

今回のお悩み(中規模学習塾新米教室長 S・Oさん)

「生徒募集のためのチラシを作りたいのですが、自分のセンスに自信がありません。講師に頼むにも、教務以外の業務を頼んでいいものかどうか・・・。」 

苦手な業務でも教室長がやるべきか

前回のお悩み相談室で「事務処理には向き不向きがあるもの」とお伝えしましたね。もちろん事務処理だけではありません。チラシの作成はわたしも苦手でした。苦手でも、教室長だからやるべきなのか。答えはノーです。苦手ならなおさら、やらないほうがいいかもしれませんね。わたしも自信を持って放棄しました。わたしが作ったら募集要項しか書けません。何の魅力もないでしょう?(笑)。

周りを見渡してみてください。デザインが得意そうな学生、マーケティングに興味がありそうな学生がいるのではありませんか?彼らに手伝ってもらえばいいのです。大事なのは、どう巻き込むかです。 

学生講師をどう巻き込むか

もちろん、作業をした分だけ時給が発生するのは大前提ですが、果たして時給だけで彼らは動いてくれるのでしょうか。いや、もしかしたら時給よりも彼らを動かすものがあるかもしれません。

まずは、「自分が得意じゃないから、助けてもらえないか」と、適任だと思う学生に相談してみてください。学生は「教室長に直接頼られた」と新たな責任感が生まれます。こういう経験は、彼らの今後の人生にとって必ずプラスになります。塾運営の裏側を見せることもまた、生きた社会勉強です。目に見えない企業努力、その効果、リアルなPDCAなど、ただ塾で子どもに勉強を教えるだけでは得られない貴重な経験になります。そのためには、目標数値や現状とのギャップなど、リアルな数字も隠さず共有する必要があります。頼られたという自負もより強固になりますよ。 

ありがちな頼み方ですが、「あなたのためにもなるからやるべきだ!」と言ってはダメです(笑)。基本スタンスは「助けて」です。教室長が楽をしているだけだと思わせないこと。その仕事に大きな権限を与えることはできないかもしれませんが、業務の責任はしっかり与えてください。もちろん、最終的な責任は教室長にあります。「責任はとるから思うようにやってみろ」、その一言で学生の目の色は変わるでしょう。

優秀な学生なら必ず、この経験が自分のためになっていることに気づきます。そうすれば、「この塾でアルバイトをすると勉強になる」「就職活動に有利な経験ができる」と、学生たちの間で口コミが広がるでしょう。卒業する講師が、後輩を連れてきてくれるようになります。業務の役割分担ができた上で、講師の採用につながる等、そんなうまい話があるかと思うでしょうが、わたしの塾では少なくとも講師募集にかかる経費削減には繋がりました。実際に講師という仕事を経験したことによって成長した先輩からの紹介なので、募集媒体より良い学生を採用することができました。 

学生講師たちの将来に興味を持っていますか?

どのように彼らを巻き込んでいけばうまくいくか、わたしの経験からお話ししたいと思います。「仕事の頼み方」以前に、まずは「講師との関わり方」について述べます。 デザインが得意そうな子、人を巻き込むのが上手そうな子、器用な子・・・いろいろなタイプの学生がいます。そもそも、みなさんは彼らのことをどのくらい知っているでしょうか。生徒から人気、教え方が上手という、講師としての評価以外の、人となりについて知っていますか?もっと言えば、目の前の学生の将来に興味を持っていますか。ただの学生バイトだと思っていませんか?

塾を大きくしたいなら、そこで働く講師のメリットもちゃんと考えなければいけません。塾講師は基本的に優秀な人材です。そこを過小評価している人も多いと思います。彼らのポテンシャルに気づけていないのかもしれません。まず何より、彼らはデジタルネイティブです。我々はそこには勝てません。また、生徒目線に近いのも講師の方です。生徒との距離も詰めやすく、教室長が聞き出せない話をいとも簡単に聞き出せたりしますよね。彼らの魅力、スキルに気づくこと、可能性を信じてあげることは、塾の成長に大きく寄与します。

わたしは講師全員の希望進路と就活の状況を把握していました。報告させていたわけではありません。「最近どう?就活うまくいってる?」と声をかけていたくらいです。本人も初めてのことで不安ですし、大人に聞きたいことはいろいろありますから、状況を話してくれます。場合によっては、社会人の先輩(同じ塾講師の先輩の場合も多いにあります)を紹介したり、面接の練習に付き合ったりということもしました。そのくらい、彼ら自身や、彼らの将来に興味があり、またそのことを本人たちにも感じてもらっていました。ただの塾バイトではない、ここで働くメリットを感じてもらえていたと思います。 

裁量を与えて自走させる。役割分担することで相乗効果も!

講師との関係性がうまく構築されれば、仕事の依頼もスムーズです。誰が得意そうか、誰の将来に役立ちそうか、彼らにどんなメリットがあるかが分かるからです。

2チームで競わせたりもしました。ゲーム性を持たせると俄然楽しんで参加してくれます。どのくらい効果が出たか、前回と比べてどうだったかなど、フィードバックも忘れずにしてください。「参加率が上がったのは●●君のおかげ」と具体的に褒めるのです。そのうち、「先生、そろそろ講習会のチラシを作る時期だけどやりましょうか?」と自走してくれるようになりました。結果的に、教室長がやるべき仕事に集中できるのです。

生徒から悩みを聞き出すのは講師の方が上手です。一方で、保護者とのコミュニケーションは教室長の方が得意です。塾の業務を棚卸して、役割分担できることはないか考えてみてください。 

教室長の呪縛に囚われないで

講師やスタッフに仕事を頼めない、頼むのが苦手という人は、上長である自分が常に優位に立っていなければならないと思っているパターンが多いように思います。そんな呪縛に囚われていると行き詰ってしまいます。裁量の与え方は難しいものですが、相手の可能性を信じてやらせてみましょう。任せてみて予想以上のアウトプットが出てくると、より彼らへの信頼が高まります。お互いに相乗効果があるということ。学生から学ぶこともたくさんありますよ。 

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