よく聞く「ケアレスミスが直らない…」の悩みにどうアプローチすべきか、ミスのタイプ別に考えていきます。
監修いただいた先生
「ケアレスミスがなかなか直らない。」「何度言っても見直しをしない。」
保護者の方からよくご相談を受けるお悩みトップ3に入っていると言っても過言ではありません。そうですよね、ケアレスミスがなくなるだけで、15〜20点変わる生徒もいると思います。
今回は、15年以上、1,000人以上の生徒さんに向き合ってきた新田先生から、生徒が陥りがちなミスや癖、その修正の方法を伝授いただこうと思います。
ケアレスミスは交通事故のようなもの
私が考えるに、ケアレスミスは交通事故のようなものです。ミスをしたくてしているわけではありません。「ついうっかり脇見をしてしまって…」これと同じことがケアレスミスに関しても起こっているのです。交通事故が起きるのと同様に、「ちょっとぐらい大丈夫でしょ」と、高をくくって結局テストで大事故に至る経験、みなさんもありますよね?(笑)
口を酸っぱく「見直ししなさい」と言っても意味はない
学校の先生も塾の先生も、うっかりの対処法として、口を酸っぱくして「見直ししなさい」と言うでしょう。生徒も最後まで解き終えたら一旦前に戻って見直し作業をしているかもしれません。それでもケアレスミスはなくなりません。なぜでしょうか。それは、「何に気をつけて見直しをすればいいのか」、見直しの『具体的な指示』がないからです。
では、ケアレスミスのパターンに分類して見直しのポイントをご紹介していきます。
よくあるパターン(1)問題の指示に従っていない
漢数字で答えなさい → 算用数字で答えてしまった!
誤っているものを選びなさい → あっているものを選んでしまった!
抜き取りなさい → ちょっと言葉を変えてしまった!
単位を書き忘れた!
このような場合、指摘すると「ああ、わかってるわかってる」なんて言うものです。わかっていたらミスはしません。
そんなときは、パターンを認識させることからスタートしましょう。
「記号で選ぶところを記述しがちだから見直さなきゃ。」
「ちゃんと誤っているものを選んだか確認しよう。」
自分が陥りやすいミスがわかっていれば、具体的に何をどのように見直せば良いのかがわかります。
よくあるパターン(2)書写違い
解答欄には「あ」を選んでいるのに、なぜか解答欄に「え」と書いてあると言うことがよくあります。あるいは、「ー11」のはずなのに字が乱れて「+1」になってしまう。信じられないようなことが、意外とよく起こっています。
漢字のトメやハネ、送り仮名のミスもこれに当てはまるでしょう。
時間がなくて焦ってぐちゃぐちゃに書いてしまうと後が大変になる。そうわかっていれば、時間がないなりに丁寧に、字が汚いなりに正確に書く意識が芽生えます。
よくあるパターン(3)計算過程を端折って見直しできない状況にしてしまう
算数・数学でよく起こるのが、計算過程を焦って端折ってしまうというもの。割り算か掛け算かを直感的に選択してしまう癖のある子も見られます。途中経過がないと解答を見ているだけで、確認の仕様がありません。それから、筆算の行が整っていなくて後から見直しができないなんてことも。
これらのミスが目立つ場合は、算数の場合は計算過程をしっかり書く癖を身につけさせましょう。普段の小テストや宿題でも、途中式を書かなければバツにするくらいで良いと思います。
ケアレスミスを直すために
傾向が見えてきたところで、ケアレスミスを実際に起こさないためのトレーニング法をご紹介しましょう。
(1)ケアレスミスポイントを覚えて、見直しに確保する時間を決める
- 漢数字
- 〜ではないもの
- すべて選ぶ
- 抜き取り
- 単位忘れ
- マイナスの周辺文字
- トメやハネ、送り仮名
- 〜こと/〜から(語尾)
自分がよく間違えることを、テスト問題が配られた瞬間に余白に書いてしまうのも手です。頭では分かっていてもなかなかその通りにできないもの。可視化できる状態にしておくと、「ああ、そうだった、単位を書き忘れていないか見直すんだった」となります。
ケアレスミスが多い生徒には、テスト終了10分前には問題を解くのをやめ、自分のケアレスミスチェックポイントを1つずつ見直すように指導してみてください。5分前だと何かの問題に集中し始めているかもしれません。ポイントは10分前です。
過去問対策中でも、塾の定期テストでも構いません。10分前に手を止める習慣をつけるところから始めてください。子どもは何かを途中で中断することが苦手だと思います。まずは止める練習です。体で覚えてもらう必要があるでしょう。
また、指差し確認も有効です。指示通りに答えたかな?と実際に指で追って確認するのです。飛行機の整備士はネジの1つ1つを指差すと言いますから、やはり確実なんだと思います。
(2)計算スペースには補助線を引く
算数・数学の場合、計算のための空白のスペースがあります。ここに書き散らす生徒が多いこと!これでは解き直しもできません。計算スペースには補助線を引く習慣を身につけましょう。(1)の計算を書き込んだら線を引き、次に(2)の計算を書き込みます。計算スペースを分けることで、書写違いを防ぐことができます。
(3)時間のプレッシャーをかける
ケアレスミスの言い訳の上位が「時間がなかった」です。時間がないのは当然です。そしてみんな同じです。普段から時間に追われて焦って取り組むトレーニングをする必要があると思います。目標時間の8割の時間を制限時間にするくらいがちょうどいいでしょう。タイムウォッチは常に置いておくようにしましょう。
(4)間違えた原因を突き止めるケアレスミス撲滅ノートを作る
間違えた理由をすべてノートに書かせます。これをやると、そもそも分かっていたのか分かっていなかったのかがわかるのでおすすめです。理由に「気合いが足りなかった」「しっかり読んでいなかった」「横着した」のような理解以前の取り組みの姿勢に関する言葉が出てきたら要注意です。何も反省につながっていません。なぜそうなったのか、しっかりと記述していきましょう。
なぜ気合いが足りなかった? → 前日寝不足だったから。
ここまで振り返らないと次に繋がりません。そのミスが起こった真の原因まで突き止めなくては意味がありません。
それでもケアレスミス対策ができない生徒には
私は「Don't」と「Can't」で区別しているのですが、前者は「ケアレスミス対策なんてしない=したくない」というタイプです。この生徒はもしかしたら受験そのものにネガティブなのかもしれません。ですから、なぜケアレスミスをしたのかを聞くと同時に、そもそも受験したいのかどうかを聞いてあげてもいいかもしれません。もしかしたら受験そのものを考え直すきっかけになるかもしれません。
後者は「できない」ですね。しようと思ってもできないという生徒さんは、そもそも学習に支障があるかもしれません。こちらの一方的な指導で生徒が傷つくことになりかねないため、学校、専門機関なども含めて、慎重な対応が必要です。
まとめ
ケアレスミスは、具体的な指示がないがために起こってしまう現象です。生徒ごとのケアレスミスのパターンを知って、その対策を日々のテストの中で習慣化していくことが非常に重要です。
(1)問題の指示に従っていないパターン
自分が間違いやすい指示を意識します。問題が配られたらすぐに余白に「記号で選ぶ」など可視化しておくと、見直しの際に意識することができます。
(2)書写違い
焦って書くことで起こりやすい書写違い。普段から時間に追われるトレーニングを行いましょう。計算スペースには補助線を引くなど工夫でケアレスミスは軽減します。
(3)計算過程を端折って見直しできない状況にしてしまうパターン
時間がなくても計算過程は必ず書くことを習慣化しましょう。普段のテストや宿題でも、途中式を書かないと減点すると意識するようになるでしょう。
ケアレスミスは本人がなぜ間違えたかをきちんと捉えなければなりません。ケアレスミス撲滅ノートを作って、大人も関わりながら徹底的に対策していきましょう。今回は保護者にも伝わりやすい内容でまとめていますので、保護者会や面談などでもご活用ください。