【vol.3】マーケティングの第一歩は教育理念の確立

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自塾のポジションを決めるのは「判断」ではなく「決断」である

唐突ですが、判断と決断の違いをご存知でしょうか。判断とはどこかにある答えを探す行為のことです。例えば、「この行為が法に触れるかどうか」の答えは六法全書のどこかに書いてあります。それを探すのが判断です。ですから判断は専門家に任せても構いません。だれが探しても同じ答えに往き付くのですから。

それに対して決断は、「どこにもない答えを作っていく行為・覚悟」のことです。

あなたの前に二人の女性がいたとします。どちらの女性と結婚すれば幸せになれるか。そんなことは誰にも分かりません。「この人」と決めた女性と一生を賭けて「この人と結婚して良かった」という答えを作っていくしかないのです。それが決断です。

塾に限らず、ビジネスには唯一の解答などは存在しません。全てが決断です。また、教育の問題にも唯一の解答は存在しません。例えば塾の指導形態には集団指導、個別指導、自立学習指導とありますが、「どの指導形態が最も学習効果が高いか」に答えを出すことはできません。あえて言えば、生徒個人にとって効果的な指導形態があるのであって、全ての生徒に優位な指導形態などは存在しないのではないでしょうか。

それでもあなたは、今の指導形態が最も優れていると信じて、あるいは今の指導方法を最も得意としているから、その指導形態を選択しているのですよね。私はそれでいいと考えています。前回指摘したように、市場(見込み客)の20%にとって相応しい塾であることが大切です。「〇〇という希望には応えられないが、△△ならば自塾以外にはない」という主張が必要なのです。

自身が決断した「教育理念」に立ち返ること

同様に正解がないのが教育理念です。「学問を持って社会に貢献する人を創る」「勉強を通して真の生きる力を養成する」「子どもたちに無駄な勉強で遠回りさせない」…多くの塾が様々な理念を掲げています。それらに正否を問うことはできません。単なるスローガンで終わっている塾もありますが、地域に支持をされている塾には確固たる理念が存在しているものです。その理念がスタッフ全員のマインドに染み込み、塾の隅々まで行き渡っている…そんな塾が圧倒的な支持を得ているのです。なぜか。

「人はデジタルには感心するが感動はしない」という原則があるからです。

デジタル処理をされた乃木坂46の歌声は、音程も外しませんし、音もきれいです。もし、純粋に音楽を楽しむだけでしたらCDやiTunesが最適です。それでもファンはライブコンサートを欲します。ライブだと音程を外すこともあるでしょうし、声が掠れることもあるでしょう。しかしそれを凌駕する感動が、ライブには存在するからです。人が感動するのは常に、アナログに対してなのです。

塾も同じです。

たとえ優れたデジタル教材を導入し、優れた指導技術を提供しても、それだけで感動を創出することはできません。そこにアナログ、あなたの人間力が加わって初めて、人を感動させることができるのです。人は感動しなければ行動に移すことができない性質を持っています。

そのアナログ(人間力)の最たるものが教育理念です。繰り返しますが、教育理念に唯一の正解はありません。あなたの掲げた理念に20%の人が「そうですよね」と共感してくれることが重要です。(その意味で、表現力や説得力といった技術は必要です)

誰もが塾を始めた時には純粋な思い、理想があったはずです。それを研ぎ澄まし文章化したものが理念です。もう一度原点を思い出して、自塾の理念を明文化してください。そして、「理念に合うことは何でもする、理念に合わないことは一切しない」と決意することです。それで自塾の方向性が見えてきます。周りから「あの塾は〇〇な塾だ」という評判も作られます。

以前、「マーケティングは塾の良さを早く正確に伝える技術だ」と話しました。それは「あなたの理念を早く正確に伝える技術」でもあります。その伝えるべき理念が空文では意味がありません。ぜひ、明文化してください。アファメーション効果をご存知でしょうか。「文章にしたことは実現する」という現象のことです。実際、「東大合格!」と書いて壁に貼った生徒の方が合格率が高くなることが知られています。教育育理念も曖昧なままにしておくより、明文化することで実現に近づきます。


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