監修いただいた先生
子どものやる気は、起動するまでに時間がかかるのにあっという間にシャットダウンしてしまいがち・・・。うまくやる気を引き出して、前向きに学習に向き合ってもらうために、どんな仕組みや言葉が効くのか。生徒のやる気を引き出す達人が伝授します。
返事くらいしてちょうだい・・・
小学校高学年くらいからでしょうか、反抗期もあり、とにかく反応が薄い、塩対応な生徒がいるものです。話しかけても返事をしなかったり、「あぁ」「はぁ」で返してきたり。これが我が子なら注意もできますが、生徒となると対応に困りますよね。今回はそんな”反応がうすーーい”生徒への対応を考えていきましょう。
反抗期でも授業は受けられる
反抗期はあって当たり前です。正しい成長の過程・・・くらいに思っておけばいいものです。家族や保護者にとっては接し辛いかもしれませんが、塾ではあまり影響がないものです。いくら反抗期でも、子供たちは保護者が塾にお金を払っていること、志望校に合格するにはここで頑張るしかないことくらいわかっているからです。家では「クソババア」なんて言っていても、塾の授業はちゃんと受けると思います。
反応が薄い生徒とは一定の距離を保ってあげること
返事もろくにしない、反応が薄い生徒については、それはその子の性格だと思います。「はぁ」と返事をするような子が、急に「わかりましたっ!」と大声で返事するようなことにはならないと思います。恥ずかしがり屋の子、ちょっと斜に構えた子、それはその子の個性なので、他人が変えようとしても変えられるようなものではありません。いつか状況が変われば変わるかもしれません。
ですから、授業さえちゃんと受けていれば、変に絡みに行かないこと、無理矢理距離を縮めようとしないことです。一定の距離を保ちながら、気にかけるだけはしてあげてください。
ただし、反応が薄い理由が塾側にある場合には、対応が必要です。例えば以下のようなケースが考えられます。
講師との相性が合わないケース
ちょっとこの先生とは合わないな、この先生のここが嫌だな、女子の場合「個別塾・個別クラス」では、男性の先生は嫌だな・・・など、特定の講師とのミスマッチが発生し支障をきたす場合があります。
このような場合は、可能なら講師を変更する、一斉授業のクラスで教師変更が容易でない場合などは、勉強のアドバイスをするのは別の講師・先生からにするなどの計らいがあると良いでしょう。
またこの場合、変更された講師のフォローも大切です。相性の問題であって、講師の落ち度ではないということを説明しましょう。相性が合わないまま続けるのは、お互いにとって良いことは何もありません。入塾時や入社時の最初に塾の方針として説明しておくと良いでしょう。
反応が薄い子でも反応しそうなコンテンツ
先生など目上の人には壁を作りがちな子でも、自分と近い先輩の話には耳を貸すことがあります。同じ中学、同じクラブの先輩、自分が志望する学校に通っている先輩など、自分とちょっと近い先輩の話は素直に聞くことが多いようです。
直接話さなくても、そういった先輩の声を文章にしたものを渡して読んでもらうのでも構いません。むしろ、文章の方が自分なりに解釈して受け取ることができ、「こんな勉強の仕方があるんだ見習おう」と、より自己説得し勉強に向かうことができるでしょう。
反応が薄いことを保護者にどう伝えるか
反応が薄いくらいで保護者に連絡するべきではないと思うかもしれませんが、それが学習効果に悪い影響を与えているようなら、事実を伝えた方が良いと思います。その際、「反応が薄いです」「話を聞いているのか聞いていないのかわかりません」という状況だけ伝えても解決に繋がりません。
「成績が下がってきているようです。最近は表情もパッとしないことが多いように感じていますが、ご家庭での様子はいかがですか?」
「今の講師との相性はいかがでしょうか。本人から何か話がありましたか?」
このように、保護者からコミュニケーションを取りやすくなるよう、こちらから扉を開けてみてください。ひょっとすると、塾では見えてこない悩みを生徒は抱えているかもしれません。
多様性を認める時代。無理に型にはめなくていい。
今は動画で授業ができてしまう時代になりました。先生と生徒が心を通わせるなんて、若い人たちは求めていないのかもしれませんね。たとえそうでも、塾の先生はじっくり時間をかけて生徒と向き合い、魂を込めて指導していくべきだと思います。そのことが、結局長期通塾、退塾防止に繋がっていくはずです。
多様性を認める時代、反応が薄い子だって反抗期の子だっていていいのです。しかし、扱いにくいからといって無視するのは絶対いけません。頭ごなしに否定せず話を聞いてあげる、話をしないなら「気にかけてるよ」ということを態度で示してあげてください。親なら感情的になってうまくいかないこともありますが、塾の先生と生徒という立場なら、お互いに少し冷静になれるかもしれません。
わたしも昔教師をやっていたころに、ちょっと扱いにくいなと思う生徒がいました。彼女はわたしのことを嫌っていたようで、話もしないし、授業後の満足度アンケートで、中学の3年間「普通」をきっと選んでいました。それでも授業は真面目に受けていましたね。その彼女から、高校入試の見送りの際に手紙を受け取ったんです。「先生、手がかかる迷惑な生徒でごめんなさい」と書かれてありました。様々なメッセージや気にかけていたことは伝わっていたんだと思います。結局彼女は高校3年生まで通塾してくれました。
そういう、難しい年頃の子どもたちを相手にするということなんですね。「無理に型にはめずに、でも決して無視はしない」という姿勢で受け止めてあげてください。