部活最優先!勉強は引退後になんとかしようと思っている生徒編

監修いただいた先生

子どものやる気は、起動するまでに時間がかかるのにあっという間にシャットダウンしてしまいがち・・・。うまくやる気を引き出して、前向きに学習に向き合ってもらうために、どんな仕組みや言葉が効くのか。生徒のやる気を引き出す達人が伝授します。


部活は否定しないけれど・・・

今回のテーマは、中学校・高校生活は部活に全集中したいタイプの生徒に、どう机に向かってもらうかについてです。部活を続けることは人生においてプラスになるものです。あの時がんばった経験、あの時仲間と分かち合った経験は、必ず将来役に立つものだよ、と、大人も子どもに言うじゃないですか。それは事実ですから、否定はしません。受験に必要な体力もつきます。しかしながら、受験はそんなに甘くないこともきちんと伝えなければいけません。「部活をがんばっている子は引退後に伸びる!」なんて言う都市伝説はなんの根拠(統計数値)もありませんよね。

部活をがんばるのと同じくらい、勉強にも本腰をいれなければ受験の勝負には勝てません。それをどう伝えればいいのでしょうか。


成績は勉強時間と比例する。当たり前のことをどう伝えるか。

勉強で大切なのは日々の積み重ねです。たとえば英単語。合格のために覚えるべき単語数はいくつでしょうか。それを覚えるのに何時間かかるのでしょうか。今、部活で勉強時間が削られているとしたら、それは何時間なのでしょうか。その間、英単語がいくつ覚えられたのでしょうか。このような”差異”を明確に伝えることで、自分ゴトとして捉えやすくなります。

では早速ロープレを始めましょう!

オレの青春は野球に捧げるって決めてるんだ!部活で悔いなくやり切って、受験はその勢いでがんばろうと思う!

そうか。部活がんばってるのは凄いな!後輩からも信頼されているようだし、誰よりも体力があるしな!だけど、受験のこともそろそろ考えるべき時なんだよ。ライバルにちょっと差をつけられているかもしれない。

大丈夫!この大会が終わったらガチでやるからさ!

キミは英単語1つ覚えるのに1分はかかるよね?30個暗記しても、次の日には10個くらい忘れてるよね。ということは、20個暗記するのに30分かけてるんだよ。キミが行きたいような大学受験で必要な英単語数は4500個だ。ということは・・・6750分もかかるよね。112時間30分だぞ?他の教科の勉強との兼ね合いもあるだろう。

毎日1時間、約113日かけて英単語を覚えるのか、毎日2時間がんばって2ヶ月で終わらせるのか、選ぶのは自分だぞ。

忘れないように必死で覚えるよ。

いい心がけだけど、『エビングハウスの忘却曲線』って知ってるか?人って暗記したことを1ヶ月後には79%も忘れちゃうんだ。これには繰り返しと積み重ねしかないんだよ。高1から勉強で努力を積み重ねている人と勝負できるか?

・・・。そんな急に部活との両立なんてできっこないよ。

いや、それがそうでもないぞ。部活をがんばれる子はガッツがあるからな!例えば、キミの学校の野球部の先輩がこの時期やっていた勉強はこれだ。ノート3冊目、1日の勉強時間は2.5時間だったよ。春までの成績はキミと変わらないな。部活も引退まで続けて、**大学に合格したんだよ。

え!**大学?オレのノートはまだ1冊目・・・。先生、話はもう終わり?帰ってちょっと勉強するね。


これでちょっとやる気が引き出されたはずです。ポイントをまとめましょう。


・部活自体は否定しない 「部活をがんばれる子はガッツがある!」
・学習の積み重ねの大切さを具体的な数字で説明する 「必要な単語数が4500個、習得するのに6750分」
・同じ境遇の先輩の事例を見せる 「先輩はこの時期ノート3冊目」


勉強しようと思わせるポイントは、具体的にイメージさせることです。今どんな状況にいるのか把握させること。目標達成までにしなければいけないことがどのくらいあるかわかってもらうこと。その上で、同じような境遇の先輩がどんなことをして、結果、進路をどう決めたかを伝えるのです。

自身を重ねられる先輩事例は特に効果があるのでおすすめします。わたしの塾ではあらゆる部活の出身者の体験記を集めました。これがあれば、部活が勉強しないこと、成績が伸びないことの言い訳にできません(笑)。データ収集にはかなりの労力が必要ですが、これ以上に生徒の背中を押す言葉はありません。同じ境遇ですから理にかなっているんですよね。やらないといけない!とシンプルに思わせてくれるのです。言葉で説得しなくて良いのです。

また、部活に夢中になる生徒の場合は特に、家庭での声がけも大切です。保護者と共通認識を持ち、双方でアプローチするようにしてください。もちろん、ここに学校が入ってくれれば尚良しです。みんなそれぞれ理論を振りかざすと子どもは混乱、または反発します。部活を続ける条件や学習の目標を、本人を交えて話し合ってください。例えば、塾の成績が100位以内なら部活は続けても良い、などですね。ただし、101位になった途端に部活をやめるのではなく、話し合いのステップを踏むことも忘れないでください。保護者とこんなコミュニケーションができる塾はとてもいい塾だと思います。


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