「どうせ無理」モードの生徒編

監修いただいた先生


子どものやる気は、起動するまでに時間がかかるのにあっという間にシャットダウンしてしまいがち・・・。うまくやる気を引き出して、前向きに学習に向き合ってもらうために、どんな仕組みや言葉が効くのか。生徒のやる気を引き出す達人が伝授します。

「どうせ無理」「どうせわたしなんて」

 模試の結果がE判定。自分の実力と目標とのギャップに気づき「どうせ頑張っても無理」と諦めモード。志望校を下げようとしている。 

「どうせ・・・」と口癖のように言う子は多いかもしれませんね。まだ諦めてしまってはいないけれど、ネガティブ思考が止まらない。

まずはこの生徒さん、挫折したのが今で良かったですね。まだ本番までやりようがあるじゃないですか。「どうせ無理」に対してかける言葉は、「大丈夫だよ」なんていう根拠のない言葉でも、「じゃあ志望校を下げて頑張ってみようか」なんていうネガティブに追い討ちをかける言葉でもありません。

「あなたはどうしたいの?」

この一言です。

やる気はどんな子どもでも持っています。それを引き出すのが大人の仕事です。我々が一方的に与えるものではないのです。だから、「こうした方が絶対にいい」という答えを持っていたとしても、グッとこらえ、どうしたいのかを聞き出してください。本人が答えられないようであれば、本人が気づくように導いてあげるのです。 

 では早速ロープレを始めましょう! 

 

頑張ってるのに成績上がらないし、どうせ受かんないし。志望校変えようかな〜。



そうか。凄く頑張っているのをよく知ってるよ!ちょっとノート見せてごらん・・・。 おー、想像以上によく頑張ってるじゃない!!今週は英語の長文読解8つも解いてる!英単語は100語も勉強してて、凄いよ!これだけ長文を読めるのに点数が取れないのはなぜだろう・・・。この長文読解に何分くらいかかる?


あ〜、けっこう時間かかってるかも〜。。

 

時間をかけすぎなのかもしれないねえ!どうすればいいかな。キミはどうしたい!?

 

速く読めるようになりたいけど今からじゃ無理っしょ〜。単語の意味がわからないと先に進めないんだよね〜。

 

お!弱点がわかってることは素晴らしいよ!単語を1日10単語今より多く覚えてみればどう?それなら無理じゃないかもしれないよ!

 

あ〜、そのくらいならやれそう!ところで数学もやばくない?数学苦手だからやる気も出ないんだよね〜。

 

ふむふむ、キミは図形の問題はよくできてる!苦手分野は二次方程式、二次関数・・・計算問題か〜。先生も数学は苦手だから割り勘ができなくていつも損してる気分になるよ(笑)!これは慣れだからこのプリントを毎日10分やれば力がつく!公式があやふやになっているところがないか、もう一度復習して、あやふやな情報はトイレに貼ったり工夫してみるといいよ!今の時期に苦手が見つかってラッキーだったね!!!(笑顔)ところで志望校を変えるなら作戦会議が必要だね!キミは本当はどうしたい?

 

もうちょっとこのまま頑張ってみるよ!

 

 

これでちょっとやる気が引き出されたはずです。ポイントをまとめましょう。

 

  • 褒めるところを見つけて認めてあげる 「頑張ってるのは凄いこと!」
  • 具体的な数字を出す 「長文読解8つ/英単語100語」
  • 自分で考えさせて自分の言葉で宣言してもらう 「どうしたい?」「時間はどのくらいかかる?」
  • 一緒に状況を把握する 「苦手分野の分析」
  • 救いの言葉をかける 「今の時期に苦手が見つかってラッキー」

 

もしかしたらこんなに悩みを打ち明けてくれないかもしれません。心を開かせるポイントはアプローチの種類と頻度です。

この生徒の場合、<頑張ってるのにできない=具体的に何をどうすればいいか知りたい>というアプローチが有効なので、どの分野をどのように頑張れば良さそうかを提案します。有効なアプローチは生徒によって違います。一例を挙げますので参考にしてください。 

 

志望校を諦めかけているときに有効なアプローチの例 

  • 志望校の制服を一緒に見る(女子の場合特に有効)
  • 学校見学、その志望校に進学した先輩の話を聞く機会をもうける

 

自信がなく頑張る気力もなくなっているときに有効なアプローチの例

  • 笑えるコミュニケーションを心がける(自分の失敗談や困った先輩の話など)
  • 無理強いせず、時間をかけて一緒に状況を把握する

 

成績が上がらない、頑張り方がわからないときに有効なアプローチの例

  • 同じ状況の先輩が過去にどう乗り越えたのか事例を見せる(成績推移などの具体的なストーリーを見せる)
  • 具体的にどんな勉強法が成功したのか事例を見せる(先輩のノートや勉強時間などを見せる)

 

先輩事例の提示はとても効果的です。同じ境遇の先輩が、この時期どのくらいの時間勉強をしたか、そのときのノート、成績・・・出せる情報をなるべく具体的な数字で伝えられるといいでしょう。事実こそが人を動かすのです。これは塾でしか提供できないアプローチです。ぜひ日頃から、今の生徒の情報を蓄積し、次の生徒のための知見とする仕組みを作っておきましょう。 

志望校への士気を高めるアプローチは家庭でもできます。保護者会や面談などの場で、いつ誰が何をすれば良いか、具体的に伝えておきましょう。

家庭でのアプローチの際に、気をつけてもらいたいのが、圧を加えないこと。「どうしたいの?」「どうして欲しいの?」と話を聞くそぶりをしながら、見えない圧を加えるパターン。これでは何も答えられませんね。家庭でのコミュニケーションの取り方までアドバイスしてくれる塾はいいと思います! 

決して忘れてはいけないことは、やる気はどんな生徒にもあるのだということです。頑張る気力がなさそうに見えても、いろいろなアプローチでそれを引き出す努力をしてください。笑えるコミュニケーションも大切です。自虐ネタでもいいので一つ二つ持っているといいですよ。他人の失敗談、特に先生や親の失敗談なんて、自信をなくしている生徒・子どもには格好のエネルギーになりますよ!

 

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