監修いただいた先生
大手塾に勤務してキャリアを積むうち、ゆくゆくは自分の塾を持ちたいと思うことは、講師の方なら一度はあるではないでしょうか。
昨今、子どもにかける教育費用は右肩上がりで、学習塾やその他スクールの数は増加傾向にあります。業界的にも参入障壁が低く、比較的開業しやすいと言えるでしょう。
しかし、塾の業務、教務に自信があって開業しても、初めての経営に戸惑うことは多いはず。準備をしっかりしておかなければ、安定して運営することはできないでしょう。今回は、塾の開業準備について詳しくご紹介します。
塾の開業準備の目安は3〜6ヶ月
小規模な塾の開業にかかる期間は、短くても3〜6ヶ月ほどかかると言われます。自宅開校や既存塾の譲渡など、事前の準備があまり必要ないケースであればもっと短い期間でスタートできるかもしれませんが、新規で物件を借りて開業する場合は、物件探し(ビジネスエリアの選定)、物件の契約、内装工事など、準備の段階で計画通りに進まないことも多いものです。
また、これらはあくまでも塾の“ハード部分”の話。場所が整っても、ターゲットはどうするか、競合との差別化はどこか、コンセプトをどう設計し、プロモーションをどうするかなどの、いわゆる“ソフト部分”がきちんと定まらないと、それはそれで塾運営は続きません。
もちろん、ハードとソフトの準備は並行して行っていくことになると思います。開業が頭に浮かんだら、とりあえずどんな塾を作りたいかというマインドマップを作り始めると良いでしょう。
事前シミュレーションを念入りに
どんな業種でもそうですが、開業は事前準備が非常に重要です。塾の場合、その労力は大部分が生徒募集に当てられるでしょう。
折込チラシ、校門配布、ポスティングなど様々な募集方法を試しても、残念ながらすぐには問い合わせは増えません。そんな状態が続くと、立地が悪かったのか、もっとお金をかけて募集した方がいいのかなど、不安はどんどん膨らむでしょう。
個人塾なら特に、地域での認知には時間がかかります。生徒数が10名程度の場合、どれくらいの期間資金が持続するか、30名を超えるためにはどのような戦略が必要かなど、あらかじめシミュレーションをしておくことが大切です。
特に、開業初期にはアルバイト講師やスタッフを雇う余裕がないため、塾長がすべてを一人で対応することが多いでしょう。だからと言って、授業よりも営業に専念してしまっては、学習塾の本質を見失ってしまいます。生徒が思うように集まらなくても、既存生徒・保護者の満足度を最大限に上げる努力を続けましょう。「内部充実」を優先することが、結果的に塾の評判を高め、生徒募集に繋がります。この時期の自身の動き方についても、シミュレーションしておくようにしましょう。
講師から経営者への転換では、単に教務に集中するだけではなく、経営全般に目を向ける必要があります。開業後、少なくとも半年間は授業に専念できるような体制を整えることが肝要です。
それでは、塾開業の準備について、詳しくご紹介していきましょう。
事業ドメイン・コンセプトを考える
事業ドメイン(事業領域)とコンセプトの設定は、経営の基盤となる重要なステップです。これらは経営の方向性を決定づける要素であるため、慎重に検討し進めることが必要です。
- 集団授業か個別指導か、進学塾か補習塾か
- オンライン指導や自立学習指導の導入の有無
- ターゲットとする学年層
など、明確な事業領域を設定し、経営の目指す方向を定める必要があります。
資金面のプレッシャーが増すと、せっかく定めた方向性を見失い、とにかく生徒を集めることに焦点を当てる傾向があります。そうなってしまうと、希望する層とは異なる生徒が入塾したり、お互いに目的がずれてしまったりして、結果、塾運営がうまくいかなくなってしまいます。
開業初期から全てが順調に進むことは稀ですが、しっかりとした事業ドメインとコンセプトを持つことで、長期的な成功への道を築くことができます。
塾の場所を決める
次に、教室選びのポイントをご紹介します。
塾の立地は、その成功に直結する要素です。立地条件によって生徒の集客数が大きく変わります。ポイントは以下のようなことが挙げられます。
- 大手が出ている住宅地に注目
- 学校が近くにあること
- 駐車場の利用可能な場所
- メイン通り沿いに位置していること
- 国道の渡りが必要ない場所(特に小学生にとって)
- ライバル塾が少ないエリア
- 家賃と集客のバランスを考慮した駅周辺や住宅地
- 講師の募集を考慮した駅周辺の選定
- 特定の学校に近い場所でターゲット層を絞る
- 教育意識が高い地区の特定
- 自転車通学の場合は、自転車置き場の確保
一度選んだ教室の立地は容易に変更できません。現地に出向いて自分の目で確かめ、慎重に選びましょう。競合となる学習塾の場所と生徒数も参考すると良いでしょう。
目標を設定して集客する
開業直後にどれだけ生徒を集めることができるかが、その後の経営に大きな影響を及ぼします。特に、塾業界は口コミで生徒数が増加することが多く、実績のない新しい塾は苦戦するでしょう。
まずは生徒数の目標を決め、その人数を確保することに集中しましょう。高すぎない目標を設定し、経営をスムーズに進めることが大切です。
集客手段は、チラシやインターネット広告、SNSなど選択肢はいろいろありますが、大切なのは他塾との差別化を打ち出すことです。特に小規模塾では、大手塾と同じ方法では生徒を集めることが難しいため、独自性を前面に出してアピールすることが重要です。
最初は生徒数が少なくても、体験授業や日々の授業を通じて良い評価を得ることができれば、その評価はやがて口コミとなり、地域社会に広がっていきます。comiruを使用すれば、口コミを拡散してもらうための仕組みもあります。
学習塾の季節トレンドを抑えて計画を立てる
学習塾における生徒数は、季節によって変動します。特に春、夏、冬の講習会時期には生徒数が一気に増加するケースが多く見受けられます。
3月の入試シーズンが終わると、小6生と中3生が卒塾することが多いため、その学年が多い塾はこの時期の生徒数の減少に注意が必要です。
以下は、ある塾の生徒数の推移の例です。
4月を基準にした場合の各月の生徒数の変動比率と、それに関連するイベントや取るべきアクションを示しています。
開業までに3年かかった例も
実際に塾を開業したエヌラボスタディの新田先生のケースをご紹介します。
一般的には3〜6ヶ月とされる塾開業期間ですが、エヌラボスタディは3年かかりました。理由は、開業資金の貯蓄と場所選びに時間を要したこと。また、古い物件のリフォームにも想定外の時間がかかったことです。
どんな塾にするか、コンセプト設計には特にこだわりました。 塾を開業しようとしたら、そのエリアには大抵4〜5つくらいは既存塾があるでしょう。そこでどう勝負していくのか、しっかり考えて言語化しなければなりません。ポイントは、訴求ワードを相手の要望を組んだ、なるべく具体的な言葉に置き換えることです。
こちらの記事で具体的にポイントをまとめていますので参考にしてください。
まとめ
塾の開業準備についてご紹介しました。
塾の開業は3ヶ月〜6ヶ月が目安です。その間に準備とシミュレーションをしっかりと行いましょう。誰に向けたどんな塾にしたいか、事業ドメインとコンセプトは慎重に言語化し、スタートダッシュが思うようにいかなくても、ブレないようにしましょう。
生徒が思うように集まらなくても、既存生徒・保護者の満足度を最大限に上げる努力を続けましょう。「内部充実」を優先することが、結果的に塾の評判を高め、生徒募集に繋がります。この時期の自身の動き方についても、シミュレーションしておくようにしましょう。
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