【対談】高濱社長に聞く。学習塾の役割と親の役割。自分の心と向き合うこと。

花まるグループ代表の高濱社長とComiruを運営する株式会社POPER 代表取締役栗原の対談の様子をお届けします。

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「花まる学習会」は世の中の多くの塾とは異なり、合格実績ありきの塾ではありません。コンセプトは「メシが食える大人」「魅力的な人」を育てる。この理念のもと、子どもが本当にやりたいこと、好きなことを見つけ、その心を育み、さらにはその子の家族が笑顔になるためのアプローチに力を入れています。

Comiru特別セミナーでは、花まるグループ代表の高濱社長に「受験がなくても選ばれる学習塾の作り方」をテーマにお話を伺いました。

 

セミナーを終えた高濱社長に、弊社代表栗原が、生徒と保護者に向き合う本音や、経営者としてのモチベーションの保ち方、心と向きあうとはどういうことなのかを伺いました。

 

関連記事:受験がなくても選ばれる学習塾の作り方

<前編>塾の教育理念・哲学をオリジナルの言葉と事例で伝える

<後編>教室の顔をいかに魅力的にするか。花まる流人材育成

 

対談者紹介


株式会社POPER 代表取締役CEO:栗原 慎吾(くりはら しんご)


明治大学卒業後、住友スリーエムに入社。2011年に株式会社optに入社しWEBコンサルティングを担当。2012年よりS.T進学教室に共同経営者として参画。経営から講師まですべての業務を経験し、当初20名に過ぎなかった生徒数を60名にまで増加させる。学習塾時代に感じた学習塾での課題を解決するために2015年1月に株式会社POPERを設立し、学習塾向けの業務支援SaaS「Comiru」、オンライン授業支援システム「Comiru Air」などをリリース。全国3000教室以上の学習塾で導入されている。

 

花まるグループ代表:高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

 

1959年、熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年に、「国語力」「数理的思考力」に加え「野外体験」を指導の柱とする学習教室「花まる学習会」を設立。「社会でメシが食える大人を育てる」「モテる人を育てる」というコンセプトを掲げ、会員数は23年目で20,000人を超す。また、1995年には進学塾のスクールFCを設立。障がい児の学習指導や引きこもりの相談を受けるNPO法人「子育て応援隊むぎぐみ」の運営も行う。

 

 

これからの教育は「学習の基盤」と「強みを伸ばす」

 

栗原:「学習の基盤」作りと、その上の「強みを伸ばす」教育があるというお話でした。学習基盤はこれまでも、そしてこれからも、学習塾が寄与していくところだと思っています。繰り返しやるしかない基盤作りの工夫はありますか?

 

高濱:いろいろなやり方はあると思いますが、どうすればみんなが楽しくやれるかを考えることです。花まる学習会の子どもたちは、嫌だなという気持ちを持つこともあるでしょうが、必ずやりきっています。それはなぜかというと、「認める」「褒める」ということを欠かせないからです。ゲーミフィケーションの考え方も取り入れ、例えば時間を伸ばすのではなく、タイムを与える、というように。

 

小学校低学年くらいならこれで大丈夫ですが、6年生、中学生にもなったらやらない子も出てくるでしょう。その時こそが塾の先生の出番です。心身ともに成長し、自我が芽生えてくると、親の言うことを聞かないのは生物学的な本能です。

 

私は保護者向けセミナーでいつも言っています、そうなったら、塾の先生を頼ってください、と。

 

学習塾から保護者へのアプローチのしかた

 

栗原:学習塾が保護者に対して直接アプローチすることは難しいと感じる人もいるかもしれません。コミュニケーションのコツはありますか?

 

高濱:そうですね。保護者自身に気づいてもらうのが一番ではあります。まずは保護者間での対話が大切だということはいつも伝えています。シングルマザー、シングルファーザーでもいいのですが、子どもをよくしようと思ったらその背景にある家族の笑顔が必要不可欠であることは確実だと思います。成績だけならなんとかなるかもしれませんが、心を育むには家族の笑顔、対話が大切です。そのことは発信していくべきだと思います。

 

栗原:子どものいない若い先生にとっては、夫婦の対話、家族の関係性に踏み込んでアプローチするのは勇気がいるかもしれませんね。

 

高濱:若い人は借り物の言葉でもいいと思います。有名な先生がこう言っていた、アグネス・チャンが「ママの笑顔が一番」と言っていました、なんてコミュニケーションでもいいと思いますよ(笑)。

 

経営者としてのモチベーションの保ち方

 

栗原:高濱社長は常にアグレッシブな印象ですが、モチベーションが下がることはありますか?経営者として、上司として、モチベーションの浮き沈みとどう向き合うべきでしょうか。

 

高濱:モチベーションが下がることはないですね(笑)。常に、あれもやりたい、これもやりたいの繰り返しです。年齢的にも、近しい人が亡くなったりもしますから、毎日充実して過ごせたこと、今日はこれができてよかったな、と感謝して過ごしていますね。いいことしか起こらない、と思って生きています(笑)。

 

大人になってから「自分の心」に向き合うことの難しさも

 

栗原:セミナーでは「自分の心」に向き合うことが大切だと教えていただきました。

子どもがそれに気づいて「これをやりたい!」と思ったり、大人がそれを見つけて伸ばそうとしたりすることは素晴らしいと思うのですが、大人が今からそこに向き合うことは難しい場合もあるのではないでしょうか。例えば、自分はこれをやりたいけれど、上司に言ったら反対されそう、なんていうシーンが目に浮かんでしまうのですが……(笑)

 

高濱:やりたいことがあるけれども、それをすると生活が立ち行かなくなるかもしれない、それでもやるか?ということは、現実的にあると思います。そこはそれぞれの判断です。今は自信がないからやめておこう、今やるべきことをまずやろう、そう考えることも生きる道です。

 

大人になってしまえば、「自分の心」というものがなくても他に没頭できるもの、または没頭しなくてはならないものができてしまいます。子育てがその代表です。自分のやりたいこと、哲学なんて関係なしに、子どものことに集中してしまうものです。そういう時期は必ずあると思います。

 

人生100年時代になったわけですから、「自分の心」に向き合うのはいつでもいいんです。子育てが終わってからでもいいですし、その哲学も歳を重ねることで変わってくるかもしれませんしね。

 

それよりも、「やりたいことが見つからない」という相談の方が多いかもしれません。自分が本当は何がしたいか、何が好きかがわからない人は、子どもの頃を思い返してみるといいですよ。何に一番熱中したかを思い出してみてください。そういえば、自分は習字が好きだったとか、誰にでも何かしらあると思います。

 

大抵、小学校に上がって成績をつけられるようになってから、そういうものを見失ってしまうんです。他人と比較されて、競争しているうちに大切なものが見えなくなってしまうのだと思います。大人になった我々は、同じことを子どもたちにしてしまわないように、「自分の心」を大切に育んでいきたいものです。

 

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<前編>塾の教育理念・哲学をオリジナルの言葉と事例で伝える

 

<後編>教室の顔をいかに魅力的にするか。花まる流人材育成