<後編> 退塾者を半減させる生徒のやる気アップ術  ~成績管理の要諦は、“数字”で示し具体策を伝授~

塾経営にとって最も大切な指標の一つが、入塾した生徒の退塾をいかに防いでいくかという点です。退塾者を増やさないためには様々な対策が考えられますが、重要事項の一つは、言うまでもなく生徒の成績を上げることでしょう。 成績を上げるためには、多種多様なアプローチがありますが、一番大切なのは個々の生徒の勉強意欲、やる気、モチベーションをアップさせることです。やる気にさせることによって、勉強時間が増え、勉強時間の増加は必然的に成績の向上につながるからです。シンプルに言えば、学習するかしないか、合格するかしないかは、全て、生徒をやる気にさせられるかどうかに掛かっているといっても過言ではないでしょう。 今回は、モチベーションアップのためにやるべきこと、さらに、モチベーション向上につながる成績データの使い方の、<後編>「データ活用が生徒のやる気に火をつける」の解説をします。

監修いただいた先生

データ活用が生徒のやる気に火をつける

前編では、どのように生徒のモチベーションを高めていけばよいかを解説しました。

後編では、モチベーションアップにつながる数値の活用法や伝え方を、具体的な方法と共に、示していきます。

志望校に合格した先輩のデータとの乖離を見るギャップがあれば埋める手段を考える

塾に通う個々の生徒や保護者の最大の関心事は、その時点で、志望校に合格する水準に達しているのかどうか、達していなければ、あとどれくらい点数を上げる必要があり、何をすればよいのかという点です。

テストの点数や模試の偏差値の上がった下がったはもちろん気になりますが、全ては合格への途中過程です。「何点だった」という事実は、答案を見れば生徒も保護者も理解できますから、「目の前のこの点数が合格につながるのか」ここを塾の先生方はお伝えできるようにならなくてはいけません。

そこで、効果的な方策となるのが、過去にその志望校に受かった先輩が、模試から確認テストまで、いつの時点で何点取っており、合格までどのような推移を辿ったかを見て、当該生徒のデータと比べることです。合格した先輩と当該生徒の点数を比較し、その先輩と同等かそれ以上の点数を取り続けていれば、合格する確率は高くなるからです。

B高校を目指す生徒の1学期の偏差値が、合格基準まで乖離していたとしても、「1学期の頃に同じ偏差値だった先輩が、勉強を1日△時間頑張って2学期には偏差値◯を取り、B高校に合格した」この事例を実際のデータを持った上で生徒・保護者に伝えられるかどうかで、塾への信頼度も変わってきます。模試の合格判定だけでは見れない、よりリアルな途中通過点が見せられるのです。

また、生徒の点数から正しく現状を認識し、対策を講じていきましょう。

先輩がある時点の定期試験で5科目合計450点取っており、当該生徒が430点と下回っていれば、その差の20点を埋めるためにどうすれば良いかを考えることができます。例えば、英語の受動態の問題において、平均正答率が80%で、他の生徒は20点配点で16点取れているのに、当該生徒は正答率が40%で8点しか取れてなく、そこで平均より8点のロス。公民の税制の問題、数学の二次関数の正答率も低く、それぞれ平均と6点の差を開けられているなど、単元に落とし込んだ場合の弱点を見出します。

弱点となっている箇所と埋めるべき点数がわかれば、プリントを渡したり復習を指示したり、対策することが可能になります。点数から「今後すべきこと」まで見通して生徒保護者に伝えていくことで、塾への信頼度もぐっと高まります。

そして模試や定期試験以外の、毎週行う確認テストでも、とにかく先輩の点数との乖離を毎回チェックし、苦手を見つけて点数を近づける努力を繰り返します。こうして、自分の“現在地”と足りない部分を把握し、合格者と同じ軌跡を辿れるように自身を鼓舞し、高めていくことが、志望校の合格を勝ち取る有効な手段となるのです。

成績データは入力と集計管理がしやすいようにデジタル化が吉

生徒の“現在地”を把握し、比較と迅速な対策が容易に

ただし、そうした比較を行うためには、過去の合格者から現役の生徒まで全てのデータを蓄積していくことが必要です。塾の大事なデータになりますから、入力や収集がしやすく過去のものにもアクセスしやすい状況で保管しましょう。

そこで「Comiru(コミル)」が役立ちます。生徒ごとの成績データの蓄積を簡単に行えます。カルテのように、生徒一人ひとりの様々なテストの結果をデータとして記録できグラフ化することもでき、各生徒の成績の軌跡を示すことができます。

もし、生徒ごとにテストの点数などのデータを紙に書いてファイルで保管していたら、置き場所が分からなくなるなどの問題が生じ、簡単に比較することも困難です。Comiruなら、生徒名や志望校で検索し、データを簡単に確認できます。

今後は、各自の日々の勉強時間を入力、集計できる機能も実装する予定です。志望校別に生徒の平均勉強時間を提示できるようになり、自分との乖離を確認することで、より勉強しようという意欲が沸きます。入試直前に自身の勉強時間のデータを振り返ることができれば、「これだけやったから大丈夫」と自信を持てるようにもなるでしょう。

個別指導塾はデータを使った細やかな対応で大手に対抗

Comiruではテストの結果を、各保護者がスマートフォンで入力することもできます。学校のテストなど、テスト返却後に、講師が生徒一人ずつから聞き取って入力すると、データの収集に時間がかかりますが、保護者による直接入力であれば、リアルタイムでデータを更新でき、講師が入力する手間も省けます。常に最新のデータで、生徒の“現在地”を確かめ、迅速に対策を打てるのがメリットです。

このように個々の生徒のデータを集めて分析し、一人一人に合った対策を打っていくことは、小規模の個別指導塾であるほど、行うべき方策です。集団指導では、全体に合わせて授業を進める必要があり、個々の生徒に十分な時間を掛けることが難しい場合もあります。

しかし、個別指導であれば、生徒ごとに丁寧に分析し、対策として苦手な単元を教える際も、個々に合わせてじっくり分かるまで指導することが可能だからです。

データを活用した指導でのでやってしまいがちな落とし穴

否定から入ると、心を閉ざす

成績データを活用した指導法は非常に有効ですが、一歩間違えると生徒のやる気をそぐことにもなるので、注意が必要です。

やってはいけないこととして、「否定から入る」のは避けるべきです。データで生徒が点数を取れていない部分、苦手な領域が明らかになるため、つい「ここがだめ」「ここができていない」と言ってしまいがち。いきなり否定されれば、生徒は聞く耳を持てなくなり、心を閉ざしてしまいます。

重要なのは、まずはできた箇所、良い部分をほめることです。その上で、「けれども、ここが苦手だから、頑張ればもっと点数が上がる」という順番で話し、数字がどれくらい乖離していて、どの単元を勉強すれば克服できるか、具体的な対策を提示するのです。こうすれば、生徒はしっかり最後まで聞き、対策を実行に移しやすくなります。

もう一つ、重要な点は、個人情報保護の観点から、他の生徒も入っている一覧データは見せず、対象の生徒のデータだけを抽出して提示することです。過去の合格者のデータを示す場合は、名前が分からないようにする配慮も必要。データを活用する際には、こうした情報漏れを起こさない意識と対処もポイントになるでしょう。

集めたデータは共有でライバル心を掻き立てる
密にコミュニケーションを取り、やる気を醸成

期テストなどデータをすぐに集められると、生徒のテストの記憶も鮮明なまま「今回は前回の英語のテストから10点アップした人がいたよ」など周囲の頑張りが共有できます。

ここでもComiruが使えます。Comiruは、生徒や保護者とのコミュニケーション機能が充実しており、スマートフォンのLINEや専用アプリに、今回頑張った生徒やライバルとなる生徒の頑張りを通知するなど、通塾していない日にもコーチングを行うことが可能です。

生徒のライバル心を掻き立てることもできます。例えば、確認テストなどで満点を取った生徒に関して、採点した問題用紙を持った本人を撮影。写真を一斉送信することで、他の生徒のやる気に火をつけるといった使い方です。

数値の話とは外れますが、画像での共有も生徒のモチベーションアップに有効です。

成績優秀者のノートの写真を撮らせてもらい、生徒に向けて配信するのも手です。自分のノートの取り方と比較して、改善することで、成績の向上が期待できます。

一方、塾で生徒が勉強している様子を写真に撮って保護者に配信したり、保護者にテストでよくできた箇所を、ほめ言葉と共に個別に通知したりといった方法も有効です。保護者が生徒に「真面目に勉強していて感心した」「講師の先生がほめていた」と伝えることで、自身の励みになり、やる気がアップする効果が狙えます。

通ってくれている生徒の点数や学習の軌跡はその塾の財産です。活用しない手はありません。きちんと収集、集計管理を行い、次の生徒へと活かしていってください。

それが生徒のモチベーションアップにつながり、やがてその塾の強みや文化となって行くはずです。