退塾防止や弟妹通学率の向上に! 保護者コミュニケーションの重要性とその手法

塾という構造上、保護者が立派な顧客というのは言うまでもありません。その顧客である保護者とちゃんとコミュニケーションをしっかりと取っておかないと、塾としての役務提供ができていないということにもなり得るのです。そこで今回は、保護者に求められるコミュニケーションとその手法についてComiruアドバイザーの大澤先生に解説してもらいます。

監修いただいた先生

なぜ保護者コミュニケーションが重要か

成績向上や難関校合格など、保護者がお子さんを塾に通わせる目的はさまざまですが、どの保護者も当然何らかの効果を期待しています。

中には、塾に通わせれば定期テストの点数が上がるといった、わかりやすい効果を求める方もいらっしゃいます。もちろん成績が上がれば良いのですが、目に見える結果がすぐに出ないこともあります。そのような時に大切なのが“保護者への日々の報告の中で、生徒の小さな変化をどれだけ伝えられているかということです。

小さな変化とは、「宿題を取り組む姿勢が変わった」「自分から質問できるようになった」「字を丁寧に書くようになった」などといった、ささいなこと。実は、こうした日々の小さな良い変化の積み重ねが、数カ月〜半年後の成績に現れてくるのです。

塾の講師や教室長は周知の事実ですが、保護者はそれを知りません。そのため、目に見える効果が出るまでの間、何もアプローチしなければ保護者の不安は増し、退塾につながる可能性が高まります。ここで実際に、退塾経験のある保護者200人から退塾した塾への満足度についてとったアンケートをご紹介します。


注目したいのが、「やや不満」「非常に不満」として挙がった項目です。保護者の多くが塾に期待している項目ともいえる「学力や成績の向上」よりも、わずかではあるものの「指導内容、塾での様子、苦手なところの報告頻度」に対する不満が多いのです。

つまり、保護者は成績向上や志望校合格といった目に見える結果はもちろん、そこに至るまでのプロセスや、どれだけ生徒一人ひとりをきちんと見てくれているかという点も重視しているのです。

このことから、保護者への報告頻度を増やすことは、退塾防止や弟妹通学率の向上につながり、それが結果的に志望校合格や成績向上にもつながるといえるでしょう。

2種類のコミュニケーションで効果的にアプローチ

では、具体的にどんなコミュニケーションが必要でしょうか。コミュニケーションには二種類あります。先述したような小さな変化をこまめに報告する「日常的コミュニケーション」と、入塾面談や保護者会、個人面談など「定期的コミュニケーション」です。それぞれ、どんなことについて話すべきか、タイミングや誰が担うべきか。そして、それぞれに目指すゴールも異なってきます。

日常的コミュニケーションとは?

日常的コミュニケーションは、生徒を一番近くで見ている講師が担うべきです。成績や勉強に向かう姿勢だけでなく、「挨拶をしっかりしてくれるようになった」というような、生活態度のよい変化を伝えると良いでしょう。

こういった報告は、保護者から見れば、講師一人ひとりがしっかりと我が子を見てくれているという安心感にもつながります。

また、塾と一緒に生徒の成長を見守るサポーターとして、保護者に協力してほしいことを随時お知らせすることも大切です。

「塾からお子さんが帰ってきたら、やさしい声掛けをお願いします」「塾での様子を問い詰めないで、1カ月だけ我慢して見守ってください」といったような定期面談でお伝えしているようなことも、日々のコミュニケーションに取り入れましょう。

その際、「即時性」を意識しましょう。月1回の指導報告書を書面で保護者に送っている塾もあるでしょう。しかし、状況がどんどん変化する中で、例えば先月の模試の結果報告をしてしまっては意味がありません。それよりも「今日模試の結果が前回よりも20点アップしました。教室内でもみんなで喜びました、ぜひお家でも褒めてあげてください」というように、その日の成果や課題だけでなく、生徒の気持ちも共有することが大切です。

目指すべきゴールは、塾と保護者の協力体制が適切に維持され、生徒・保護者・塾が同じ目標や目的に向かって進んでいくこと。そうはいっても、保護者と頻繁に顔を合わせて話ができるタイミングはそう多くありません、小学校低学年なら保護者が送迎をしていることも多いですが、高学年になると保護者と顔を合わせる機会はぐんと減ります。

しかしながら、紙の指導報告書を生徒に持たせても、生徒が保護者に見せるのを忘れるかもしれません。こういったときに役立つのが「Comiru」です。Comiruのシステムを活用すれば、教室長など上長の確認の上で配信される仕組みによって、講師だけでなく塾として一人ひとりの生徒の状況を把握することができますし、保護者側もスマホで簡単にチェックきるというメリットがあります。


定期的コミュニケーションとは?

定期的な個別面談は教室長(社員)が行うのが一般的ですが、受験を控えた中3生や高3生の保護者と定期面談をする際は、講師も同席するのが望ましいでしょう。本題となる入試までの学習プランなどは、生徒を間近で見ている講師から話します。そうすることで保護者からの信頼感が増しますし、講師自身も、保護者に直接対面することで、責任感が高まります。

ただし、面談を主導するのはあくまで教室長です。講師への要望や不満は講師のいない席でヒアリングしましょう。

また、入塾面談では、入塾動機や志望校をヒアリングするのは当たり前ですが、もう一歩踏み込んで「将来、どんな大人になってほしいと思っているか」を聞いておくべきです。この質問は直接保護者の要望を聞くものではありませんが、お子さんへの思いが見えてきます。

また、保護者自身にも自分の子育ての軸を自覚してもらうことで、今塾に通わせる目的が明確になり、その後の協力姿勢も高まります。

いずれにしても、面談で一番大切なことは「面談室から出てきた保護者が笑顔であること」です。もちろん、現状の成績では志望校合格が難しいといった現実もありますが、改善策を講師がしっかり伝えましょう。

また保護者の方の心配事や、モヤモヤした気持ちをすべて吐き出してもらうことが必須です。最終的なゴールは「先生にお任せします」と言われるような信頼関係を構築し、何でも気軽に相談してもらえるようになること。そのためには、保護者から話を引出さなければなりません。

最後に、面談についてはしっかりと記録する必要があります。そうでないと次回面談時はもちろん、数日後には忘れてしまい同じことを最後聞いたり、そのご家庭の目標等をわすれてしまうことにもなりかねません。

前述した内容を表にまとめました。ぜひ、貴塾での見直しに活用してください。

保護者コミュニケーションのゴール

①合格や成績向上という目標の達成
②退塾防止

③口コミの向上

④弟妹通学率の向上

 

日々のコミュニケーション

定期的コミュニケーション

ゴール

塾と保護者の協力体制が適切に維持され、生徒・保護者・塾が同じ目標や目的に向かって進んでいけること。

「先生にお任せします」と言われるような信頼関係を構築し、何でも気軽に相談してもらえるようになること。

伝える内容

長期的目標

将来どんな大人になってほしいか、どんな職業を選択するかなど

中期的目標

家庭での声掛けなど協力体制の維持

資格取得や大学進学、志望校など

短期的目標

学習習慣の定着、学習意識の変化

志望校合格のための学習プラン、勉強の方法など

例/注意点・ポイント

「授業に取り組む姿勢が変わった」「優しい声掛けをお願いします」など、成績だけにこだわらず、小さな成長や、子どもとの関わり方をこまめに啓蒙することで、親子間や塾・保護者間の会話のきっかけに。

志望校を目指す理由ではなく、志望校に合格した後、将来どんな大人になってほしいかといった「目指す目的」をヒアリング。

タイミング

・即時が鉄則

・3ヵ月に1回など定期的に
・入試年度前など、保護者に悩みが芽生える前に

方法

・日々の連絡帳・お便り
・送迎時の声かけ
・Comiru

・面談
 └Comiruにて面談設定

 └Comiruにて面談記録


誰が

・講師

・教室長(社員)
・場合により講師

講師が主導するものの、教室長の承認の上で保護者に報告するのがベスト。Comiruを活用することで、教室長の目を必ず通るようにし、塾全体で把握。

【講師の役割】
生徒個々の学習プランなどは担当する講師が責任をもって説明。
【教室長の役割】
講師に対する要望など、保護者が直接言いにくいことは教室長がヒアリング。


保護者からどうやって悩みや不満を引き出すか

保護者とのコミュニケーションにおいては、本音を聞き出すことが必須ですが、なかなかそれを引き出せない場合もあります。

経験の浅い教室長などに面談で役立つアドバイスをするとしたら、第一声で「どうやってこんないい子に育てたのですか」などと、生徒の良いところを褒めてみてください。「元気よく挨拶ができる」とか「脱いだ靴を揃えられる」など、ささいなことでも構いません。そうすると、「そんなことはないですよ」と言いつつも保護者は徐々に話してくれるものです。また、たとえば自身の子育てにおける失敗談を話したり、悩みの相談に乗ってもらうように接することで、保護者自身も失敗や悩みを話しやすくなるものです。

また、悩みが起きそうなタイミングを先取りするという方法もあります。来年中学3年生になるお子さんがいれば、当然受験の悩みが出てきます。それが具体的になる前、例えば中学2年の春休み前に入試セミナーを開き、不安に思うことをアンケートに記入してもらうのです。そこでさまざまな保護者の意見を吸い上げ、後日アンケートのフィードバックをすることで事前に不安を払拭することもできます。

注意していただきたいのは、保護者から自発的な相談が来るのを待ってはいけないということ。保護者から塾に話があるという時は、ほぼ「退塾」を決心されているタイミングでしょう。その時になって不満を聞き出し、改善提案を行っても意味がありません。

そもそも、保護者の立場から考えると、塾に電話するということ自体、エネルギーがいることです。「ちょっとした不満ごときで塾に電話できない」と、ためらう保護者も多いもので。事前にしっかりとコミュニケーションをとり、悩みや不満の種が蒔かれる前に対策をすることが大切です。

一方で、不満の種がいつ蒔かれるかは予測不能な場合も多いでしょう。そのため、保護者からのコメントや質問にいち早く確認・対応することが可能なComiruを活用すれば、不満の種をすぐに見つけることができるようになります。

まや、保護者会の開催も、ひとつのコミュニケーション方法。保護者会では、受験や講習などについて、保護者から質問される前に“先回りした情報”を伝えましょう。保護者会では保護者同時のコミュニケーションやつながりもできます。保護者としても心強く、塾に通わせる意義を見いだすことが可能になる場合もあるでしょう。

保護者の話をしっかりと受け止めよう 

いくつか具体例を提示しましたが、最も肝心なことは「保護者の話をしっかりと受け止めること」です。良い悪いや、好き嫌いといった個人の価値観に関係なく、保護者の方の話しに興味を持って耳を傾けましょう。

そこで共感や判断をする必要はありません。この保護者はどういう人なのか、何を大切にして子育てをしてきたのかという興味関心こそが、相手から本音を引出し、信頼関係を構築する足掛かりになるのです。 

相手に興味関心を持って話を聞くことは、意識していても簡単なことではありません。しかし、これまでお話しした内容を実践することで見えてくることもあると思います。保護者コミュニケーションでお悩みの方は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。