学習塾の真の価値はマネジメントにあり。 生徒のモチベーションを上げる手法とその効果は?

生徒の勉強へのモチベーションは、勉強への意欲を向上させ、現役合格率のアップにつながり、ひいては生徒自身の夢をかなえることにもつながります。しかしながら、「勉強しましょう」「勉強時間を増やしましょう」と伝えるだけでは、モチベーションは向上しません。 それでは、具体的にどのような手法を用いれば良いのでしょうか。『自己説得による自学を促すメソッド』を体系化した、コミマグアドバイザー峯先生がレクチャーします。

監修いただいた先生

塾講師はマネジメント力が問われる時代

マネジメントとは、直訳すると「管理」や「経営」を指します。塾講師のマネジメントとは、生徒を目標達成へと導くための手法です。。もちろん、ティーチング=答えを与える指導法は大切ですが、それは塾講師の必要条件の一つに過ぎません。ティーチングの能力だけが求められるなら、能力の高い講師の動画を作成して生徒に提供すれば良い、という話になってしまいます。

目標達成のために、塾講師に求められるマネジメント要素は①PDCAマネジメントと、②モチベーションマネジメントに二分されます。後者がコーチングと呼ばれるものです。

1.PDCAマネジメント

まずは目標を定めることが大切です。さらにモチベーションマネジメントにも通じますが、志望高校、大学、成績は勿論その先の夢であり、目的の設定も大事です。目標については、希望の大学に進学するためには各科目につき何点必要で、そのために必要な勉強時間等のブレイクダウンを行う必要があります。

2.モチベーションマネジメント

勉強はいわば「長距離走」です。そのため、モチベーションを常に上げておく工夫も塾の大きな役割の一つ。モチベーションを上げておかないと、勉強を継続できないだけでなく、自ら学ぼうという前向きな姿勢を保つことができなくなり、何よりも勉強が苦痛になってしまいます。

人のモチベーションはどうすれば上げられるか

それでは、どうしたらモチベーションを上げられるのでしょうか。人を動かすには、安心感・危機感・言語・非言語の、下の4つの事象において物事をバランス良く伝える必要があります。

<人を動かす4つの事象>


この4つの事象を用いて、どのように生徒を導けば良いのでしょうか。次に具体例をレクチャーします。中3生のケースを想定した方法です。

1.論理×危機感:事実を数字で伝える

講師:Aくんは塾のテストの英語標準問題部分の、助動詞の問題40点中、10点しか取れなかったね。パーセンテージに置きかえると25%。クラスで見ると、平均は28点で、70%の得点率だね。

助動詞は必ず入試で出題されるし、各高校とも平均10点分の配点なんだ。

クラスの得点率は70%だからほとんどの生徒が7点とると思うけど、Aくんはこのままだと2.5点となるよね。ということはみんなと何点差ある?

Aくん:4.5点です。

■ポイント:PDCAマネジメントを用います。ここでは感情的な表現をしないよう注意し、数字だけで危機感を与えましょう。

そのほかのテクニック①

大学受験を控える生徒の場合には、某公立高校の高2生の学習時間アンケート結果から、「目標とする大学に現役で合格した学生の勉強時間」を示すと良いでしょう。勉強時間の集計は、同じ志望校の生徒同士で刺激を与えることができます。また、「難関大学合格者の通塾年数」は、現実とのギャップを埋め、勉強へのモチベーションを高める作用があります。

<目標とする大学に現役で合格した学生の勉強時間>


 

 

2.非論理×危機感:感情で不安や危機感を与える

講師:先生も助動詞は苦手でね。高1ではさらに発展して完了形助動詞というのも習うんだけど、「すべき」が「すべきだった」と過去になるのに、shouldedなんていう表現はないのでどうしたらいいか???で…もう、本当に訳がわからなくなってね。

実は、先生が第一志望の大学に不合格になった大きな原因はまさにこれかなって思う。

でね、助動詞以外にも受動態や比較も先生の経験からAくんにぜひ復習して欲しいところを紙に書いてきたよ!

■ポイント:モチベーションマネジメントを行います。自身の経験や反省を伝えながら、寄り添う姿勢を見せます。

そのほかのテクニック①先輩ノート

公立最上位高合格の中3生の勉強内容のノートを見せることも効果的です。先輩ノートを見せることで「先輩はこんなに勉強しているんだから、自分ももっと頑張らないと!」と、自己説得を促す効果が期待できます。

そのほかのテクニック②先輩トーク

合格者の具体的な体験談を読んでもらうのも、モチベーションのアップに効果的です。

例えば、中学入試でも高校入試で思うようにいかず、それでも塾に通い続け、大学入試でようやく志望校に合格した先輩の声には説得力があります。

その先輩が、実際にクラスを訪問して経験談を直接聞く機会を設けると、事前に読んで得ていた「やる気や意欲・決意」がさらに高まります。体験談を保護者の方にメールマガジンで送れば、ご家庭で話題になる可能性も高まるでしょう。

3.論理×安心感:数字を用いて安心感を与える

講師:そうそう。その前に、Aくんの塾内模試の結果のデータを見て! Aくんが行きたいB高校は、先生の経験上“410点”は必要だと思う。ちなみにAくんは総合で何点?

Aくん:398点です…

講師:ということは、何点足りないかな?

Aくん:12点です。

講師:でも助動詞や受動態や比較の部分をみんなと同じ得点にできたら、何点アップするかな?

Aくん:ええと…14点アップで62点→76点です!

講師:英語を76点にすると、総合点も412点になるね! これで合格可能性が一気に80%を越えた!!

■ポイント:再度PDCAマネジメントを行います。どうすれば解決できるかを数字で具体的に示しましょう。

そのほかのテクニック①達成可能性の提示

例えば、マラソンで長距離を走った経験のない人に「これから40km走ろう!」と鼓舞しても何も響きません。でも「毎日3kmなら達成できそうでしょ?」という風に目標を分解すれば、できるかも!と感じさせることができます。

そのほかのテクニック②優秀な結果を掲示する

定期テストで90点以上の生徒名を掲示するのも一つの手法です。掲示された生徒は自信につながりますし、張り出されなければ危機感を持ちます。ライバル視している生徒が良い成績であることを知れば、「自分はゲームばかりしていた」「次は負けないぞ」などと、反省します。こういった雰囲気を醸し出す工夫が、モチベーションに影響します。

4.非論理×安心感:危機感と安心感をバランス良く伝える

講師:去年もAくんと同じ様に、ここが苦手な生徒がいてね。その子は基本例文30文を暗記して、先生が作った演習プリントを1枚解いて、理解できるようになったんだよ。入試の時も不定詞と受動態の問題は自己採点で満点だったそうだよ。Aくんは、どうする?

Aくん:先生、僕にも演習プリントをください!

講師:やっぱりそう言ってくれたか、嬉しいよ! Aくんには先生と同じ失敗をして欲しくないから、Aくん用に30文の基本例文を選んで、復習プリントも1枚だけ用意したんだよ。次の授業後に解いた問題を見せてよ!

■ポイント:最後に再度モチベーションマネジメントを。危機感を与えたあとは、同じくらいの安心感を与えましょう。バランス良く伝えることが肝心です。そして本人に決意を言葉にしてもらうことも大切です。

そのほかのテクニック①生徒のことを知り、声をかける

講師と生徒の間の「伝達に必要な」信頼感や雰囲気を醸成することはとても大切です。相手に興味を持ち、誕生日やクラブの入賞歴といった情報をしっかりと収集し、そしてそれを見える形で伝えましょう。

誕生日に「おめでとう」と伝えたら、きっとAくんは気分が良いでしょうし、集中度も増して、その日に勉強したことや講師から伝えられた内容を素直な気持ちで受けとめられるでしょう。

そのほかのテクニック②将来の夢を考えてもらう

3生の最後の授業で、進みたい大学や将来の夢を具体的に書いてもらいます。一方的に講師側からアプローチするだけでは意味がありません。書いたり、発言してもらったりすることで、本人に「なりたい自分」への強い認識と覚悟を与えることができます。

以上の手法で効果を上げるためには、授業の質と講師自身の清潔感などは大前提。憧れである講師塾の言うことなら生徒は耳を傾けてくれます。魅力ある講師であるか、自身を振り返った上で実践しましょう。

​​自己説得は保護者の方にも必要

人は他者から「変えろ」と言われても、そう簡単には変わるものではありません。実際に私自身もそうでした。私は30年に渡って喫煙をしており、家族からは健康に悪いから早く禁煙してほしいと言われ続けてきました。それでもやめませんでした。しかしあるとき、タバコを吸い続けた人の肺のホルマリン漬けを目にしたのです。このときは、さすがに「これはマズイな…」と思い、難なく禁煙できたのです。他者からの説得ではなく、これは紛れもなく自己説得です。

また、生徒の自己説得は大前提ですが、保護者の方にもモチベーションを上げていただくことも当然必要です。安易に「高校に受かったら、いっぱい遊べばいい」などと声をかけるようなことが家庭で起これば、次に控える大学受験へのモチベーションを大きく引き下げてしまうことになるからです。

そのため、生徒にも保護者の方にも、私立大学と国立大学に進学した際の学費と生活費の差を伝えておくと良いでしょう。

「国立と私立では、一人暮らしをした場合700万円前後差が出る」と知れば、国立大学進学を目指して、さらに勉強し始めるかもしれません。それで頑張り「国立は思うようにいかなくても」難関私立大学へ合格するかもしれません。しかし学費の差を知らなかったら、さらに奮起していなかった可能性もあり「私立難関大学」にも合格しなかったかもしれません。

塾のシステムとして構築することも大切

自己説得をさせるために、講師の役割はとても大きいものです。講師が前述したような合格に必要な点数や勉強時間、本人の夢を全て把握し、全ての生徒に並走することが難しいケースも考えられます。そのため、塾としてデータを蓄積し、本部から保護者や生徒に直接連絡するフローを検討することも大切です。


塾通信というような紙の配布物を準備するのも良いでしょう。また、そのようなデータを活用し、Comiruを通じてLINEやアプリで配布することも可能です。

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