保護者にとっては数年に一度あるかないかの入試、塾にとっては毎年必ずやってくる大本番!試験日に近づくにつれて生徒の表情、態度からも緊張がひしひしと伝わってくるでしょう。
そんな入試直前の生徒や保護者に、どんな声がけをするのがよいのでしょうか。毎年のことなのに困ってしまうという塾の先生方の嘆きや迷い、実は少なくないんです。
必ずやってくる「本番」に向けて、塾はどんなことを心がけるべきか、具体的にどんな言葉をかければいいのか、やる気を引き出す達人・峯岳徳先生にお聞きしました。
いざという時こそ、教師としての本質が問われる
入試本番にどんな言葉をかけるか、もしかしたら、今から言葉を選んでいても遅いかもしれません。なぜなら、生徒にその言葉が届くかどうかは、これまでの関わり方で決まっているからです。
つまり、生徒の背中を押す言葉は何かではなく、「それを発するのが誰か?」の方が重要だということです。教師としての本質は「授業(講義)」です。もちろん、生徒に好かれる人間性、例えば嫌味を言わない、明るいなど、そんな要素もありますが、やはり教師としての本質は授業にあるのです。ですから、普段から生徒のやる気を引き出すような授業をしているような教師の声であれば、どんな言葉であっても、生徒の心を突き動かすことができるはずです。
教師が注力すべきは授業であって、その積み重ねがあれば、言葉なんて本当はなんでもいいかもしれないのです。日頃の授業準備や生徒対応が、他のことに時間を取られるなら、Comiruのようなシステムでどんどん効率化して、本来注力すべきことに時間をかけてください。
入試直前は、これまでの努力を具体的に明示するとよい
どんな言葉でもいい、とは言っても、しゃかりきに「絶対合格するぞ!」というスローガン的なものはあまり響かないでしょう。勢いだけで根拠がないからです。そんなときは、これまでの取り組みを数字や視覚的に訴えると説得力が増し自信を深めると思います。
・この1年間で塾で1週間に6時間、家で15時間〜20時間くらいは勉強しているはず。1ヶ月に90時間勉強したとして、10ヶ月で900時間もやってきた。だから大丈夫だよ。
・今まで勉強してきたノートと教科書、積み上げたらキミの身長より高いんだ。自信を持って。(実物の写真を見てもらったり、送るのも良いと思います)
こんな風に、具体的にこれだけ努力したから大丈夫だと言ってあげた方が伝わりやすいでしょう。本人も自分の努力を振り返り、自信を持つことと思います。
ちなみに、努力を可視化することは普段の生徒とのやりとりで取り入れることをおすすめします。例えば、生徒が意欲的に自宅学習を行うために使える「意欲を高めるアンケートシート」。入試までどのくらいの時間が残っていて、どれまでに何をどれだけやれなければいけないのか。具体的な日数や時間を明らかにし、少しの危機感で生徒の自発性を促します。
具体的な数字にする、客観的にデータで説得するという技は、どんなシーンでも使えます。
参考記事:【無料ダウンロード可!】説教なしにやる気UP?生徒が意欲を高める魔法のアンケートシートとは?
思うようにならないこともある事実は最初に伝える
残念ながら、入試が思うようにならないことはあります。私もそんな生徒をたくさん見てきました。その事実は、入塾の段階から保護者と生徒に伝えておきましょう。
多くの塾は、合格実績を大々的に掲げ、合格者のインタビューを紹介しています。思うようにならなかった生徒の声はどこにも見当たりません。しかし、現実はそんなことはないはずです。全員がうまくいくわけじゃないんだと、最初に伝えている塾はどのくらいあるでしょうか。倍率が3倍ということは、3人に2人はうまくいかないということ。入試が思うようにいかなくても、それで人生が決まるわけではないという話を、「最初の入塾手続き時点」や「授業開始時にも繰り返し」するべきだと思います。
思うようにいかなかった生徒の話なんて、合格する気満々の生徒には響かないのではと思うかもしれませんが、実はこれがとても効果があります。
私は過去にそんな先輩を塾に呼び、生徒の前で経験談を話してもらったことが何度もあります。中学受験で全敗した先輩のインタビュー記事もたくさん紹介してきました(その後捲土重来、高校入試や大学入試でうまくいった先輩たち)。たった1〜2点で不合格になった実例も、実際の得点開示と共に共有しました。特に大学入試はスマホで合格最低点とともに本人の得点が送られてきますよね。生徒たちはどんな反応をしたでしょうか。
・こんなすごい先輩でも中学受験全敗なら、私はもっとがんばらないといけない。
・入試は1点に笑い、1点に泣くって本当なんだ。私はケアレスミスをしがちだから、
より注意していかなければ。
・中学受験に全敗しても、高校受験でリベンジができるんだ。
・すごい大学に行くには、やっぱり中学・高校でもがんばらないといけないんだ。
受験が終わってもまだまだ努力は続くんだ。
・希望の学校に合格しても、油断せずに塾に通って勉強しよう。
そしてこの先輩と同じ大学を目指そう。
同じ塾を卒業した、あるいは、同じ先生に習った先輩が、どんな勉強をどのくらいしたのか、どんな風に戦ってきたのかを具体的に知ることで、あっという間に入試が自分ゴトとなり、覚悟を決めます。特に、リベンジに成功した先輩はヒーローさながら。みんな目を輝かせて話を聞きます。
このような先輩事例を、合格した生徒、そうでない生徒それぞれに話してあげてください。合格しても努力を続けること。今回はうまくいかなくても、人生はいくらでもリベンジできる。挫折が人を強くするのです。勝ち続ける人なんていないのですから。
塾の先生が話すよりも、身近な先輩の声の方がより伝わります。
私はたくさんの教え子にインタビューをしてきましたが、ほとんどが思うようにいかなかった生徒です。華々しい合格を決めた生徒のインタビューはほとんどありません。思うようにいかなかった生徒を見届けるのが私の役目だと思っていました。
たくさんの教え子が会いに来てくれました。途中の入試で思うようにいかなくても、大学入試や高校入試でうまくいったことを報告しに来たかったのだと思います。かつて彼ら自身が受験に思うようにならなかった時に、「立ち上がり大学入試や高校入試でうまくいった先輩たちのインタビューを読み、経験談を聞いて」勇気を与えられたことを忘れず、次は自分が後輩たちの標になる番だと考えていたと思います。
関連記事:合格した生徒へかける言葉、思うようにいかなかった生徒へかける言葉
参考記事:【無料ダウンロード可!】説教なしにやる気UP?生徒が意欲を高める魔法のアンケートシートとは?