学び紀行伸学舎編:働き方改革と成績向上は両立する。徳島の個別指導塾が実現した持続可能な仕組み

コミマグ編集部が、全国各地の塾経営者の塾づくりへの思いや取り組みを聞く「学び紀行」。今回は徳島県で15校舎を展開する「伸学舎グループ」の代表取締役・井後義人氏にお話を伺いました。 働き方改革を進めながら、成績向上も同時に実現している伸学舎。一見矛盾するように思える両立はなぜ実現できたのかーー。持続可能な成績向上の仕組み構築と、教育による地域貢献の歩みをお話いただきました。

▼教室紹介
1979年創業。徳島県徳島市に本部を構え、県内15教室を展開する地域密着型の個別指導塾。小学生から高校生までを対象に、小中高一貫の個別指導を行っている。長年の指導ノウハウをもとに、個別指導・自習・家庭学習を組み合わせたオリジナル指導システムを構築。生徒の成長を一貫して支えることで、教育による地域貢献を続けている。

伸学舎グループ
徳島県徳島市
https://www.shingakusha-gp.co.jp/

▼井後義人さまご紹介
伸学舎グループ 代表取締役

「徳島のお子さま、保護者のみなさまとともに約30年歩ませていただいております。伸学舎での学びが人生の半分以上となります。学習塾での指導の醍醐味は、年長生から高3生まで指導させていただけることです。大切なお子さまをお預かりし、教育という一面ではありますが、保護者のみなさまをサポートさせていただける希少価値のある仕事だと誇りをもって日々研鑽しております

「教育による地域貢献を」創業者から受け継いだ思い

伸学舎のスタートは1979年。先代が始めた小さな個人塾が出発点です。その後10年ほどで有限会社化。現在は15校舎を運営する企業塾へと拡大してきましたが、創業以来、一貫して地域に根ざした学習塾として運営を続けています。

規模の拡大は、あくまでも地域でのニーズに応え続けた結果です。売上を目的とした経営判断ではありません。私たちが大切にしている「教育による地域貢献」という思いと、熱心な指導で成績があがる塾としての評判が広がり、必要に迫られる形で校舎が増えていきました。

私は創業者の一族ではなく、もともとは従業員の立場でした。それでも事業を引き継ぐことになったのは、創業者が一族経営にこだわらず、「教育による地域貢献」を何よりも重視していたためです。引き継ぎには約10年の時間をかけ、その過程で創業者の思いも継承してきました。

創業者が大切にしてきた「地域の子どもたちに教育を通じて貢献する」という考え方は、今も当社の運営の土台になっています。

成績向上を持続可能な仕組みにする

事業継承後は、働き方改革と指導システムの再設計に着手しました。成績向上を持続可能な仕組みとするために、必要不可欠だと考えたためです。

それまでの伸学舎では、生徒・保護者ファーストで、多くのニーズにできるだけ応えていくことを大切にしてきました。その結果、労働時間は長時間化しやすく、月曜日から土曜日は授業、日曜日は補習やイベント各種対策授業などの運営をしておりました。

私自身も従業員の頃は、自ら進んで働き、ハードな環境にもやりがいを覚えていました。一方で、こうした運営は持続性に課題があるとも感じていました。時代の変化に伴い、人材の安定的な確保も難しくなっています。今後も教育の質を維持していくためには、ブラックとも言われがちな塾の働き方そのものを見直していく必要があると考えるようになりました。

従業員とその家族の生活を守ること、適切に休息をとることで精神面の安定やパフォーマンスの向上につながることも踏まえ、働き方改革に着手することを決めました。

現在は、平日は授業、三者面談・補習・体験授業などは土曜日に、日曜日は完全休養日と変更しました。

さらに平日の勤務時間も残業時間ゼロの運営に切り替えました。

とはいえ、働き方を変えることで肝心の生徒の成績が落ちてしまっては意味がありません。生徒の成績向上は、最優先で守るべきものです。

そこで、単に働き方を見直すのではなく、成績向上を支える仕組みも一緒に見直すことにしました。生徒ファーストの考え方はそのままに、指導のあり方の再設計にも着手しました。

痛みを伴っても働き方を見直す

働き方改革は、少なからず痛みを伴うものでした。

たとえば、これまでは月曜から日曜まで教室をあけていたものを、日曜日は完全に休校とする形へと切り替えました。

こうした変更によって、地域からの評価は一時的に下がったと思います。「以前よりも熱心さに欠ける塾になった」という見方をされたこともあったはずです。生徒数も一時的に減少しました。

それでも、この判断は必要なものだと考えていました。無理のある働き方を前提にした運営では、長く続けていくことができません。人材が定着せず、結果として教育の質を維持できなくなる可能性もあります。

一時的に生徒数が減ることはあっても、提供するサービスの質を改めて積み上げていけば、評価は必ず戻ると考えていました。結果、サービス再構築の効果もあってか減少した生徒数も回復し、持続可能な形で成績向上を実現できる基盤が、ようやく整ってきたと感じています。

生徒に「合わせすぎない」指導設計で学力を引き上げる

当塾は個別指導塾ですが、もともとは集団指導を行っていました。指導の再構築に関しては、集団指導で培われてきた考え方も大切にしています。生徒一人ひとりに寄り添うことは前提としながらも、過度に合わせすぎるのではなく、塾側が一定の方針を持って学習を進めていく。いわば「個別と集団のハイブリッド」のような形です。

生徒に合わせすぎてしまうと、必要な学力にたどり着けないこともあります。だからこそ、あえて一定の負荷をかけながら、学力を引き上げていく指導を意識しています。45年以上に渡る指導ノウハウを集約し「伸学舎グループオリジナル指導システム」を構築しました。

まず、基礎・基本の確認および問題演習の確認は必ず1対1型の個別指導を行っています。教材は、生徒の理解度に応じて複数のレベルを用意。市販教材も活用していますが、志望校合格に必要となる数学・英語の土台部分はオリジナル教材で補っています。

個別指導だけではなく、自習時間も設けています。生徒1人ひとりが目標を設定し、学習する自立的な取り組みです。

さらには、家庭学習も含めた学習設計を行い、徹底管理しています。塾での指導だけに依存するのではなく、自宅で取り組める学習コンテンツを導入し、その進捗も管理することで、学習全体をトータルで支えています。塾と家庭を切り分けるのではなく、一体として学習プロセスそのものを設計すること。それが、限られた時間の中でも成果を出すために必要な形だと考えています。

「学習の見える化」で保護者との信頼関係を築く

伸学舎では、生徒の成績向上を支えるうえで、保護者との関係性も非常に重要だと考えています。

塾というサービスは、実際に学ぶのは生徒ですが、費用を負担するのは保護者です。そのため、生徒だけでなく、保護者にも納得していただける形で価値を提供することが必要だと考えています。

特に意識しているのが、保護者への情報共有とコミュニケーションです。他の塾と比較しても、保護者へのアプローチは密に行っていると思います。

その一つが、学習状況の「見える化」です。塾での学習だけでなく、家庭での学習についても把握し、保護者にも共有しています。お子さまが自宅でどのように学習しているのかが分かることで、安心して任せていただける環境をつくることができます。

また、家庭学習のコンテンツを活用し、その進捗を管理することで、「どれだけ学習しているか」だけでなく、「どのように学習しているか」までつかめるようにしています。

生徒と保護者、その双方に寄り添いながら信頼関係を築いていくこと。それが、継続的な成績向上にもつながっていると考えていますし、他塾さんと大きく違う点だと考えています。

教育による地域貢献を続けていく

私たちが目指しているのは、単に成績を上げることだけではありません。生徒一人ひとりが学ぶ力を身につけ、それぞれの目標に向かって前向きに学び、まだ目覚めていない能力に気づき伸ばしていくことで、成長を長く支えていける塾であり続けることです。

働き方を見直し、指導の仕組みを再構築し、保護者との関係性も含めて学習環境を整えてきました。そうした取り組みのすべては、「教育による地域貢献」という創業者から受け継いだ思いを、これからも続けていくためのものだと考えています。

(編集後記)
働き方改革と成績向上。この二つは一見すると相反するもののようにも感じられます。しかし、今回の取材を通じて見えてきたのは、その両立は「仕組み」そのものから見直すことで実現できるという事実でした。

長時間労働によって支えるのではなく、学習プロセスそのものを再設計する。そして、生徒だけでなく保護者との関係性も含めて学習環境全体を整える。そうした一つひとつの積み重ねが、持続可能な成績向上につながっているのだと感じます。

「教育による地域貢献」という創業時の思いを軸に、時代に合わせて変わり続ける。その姿勢こそが、長く地域に支持される理由なのかもしれません。

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