学び紀行 新生塾編: 教材費ゼロ・週6でも同一料金・バイト講師ゼローーそれでも成績を上げ続ける塾

コミマグ編集部が、全国各地の塾経営者の塾づくりへの思いや取り組みを聞く「学び紀行」。今回は大阪府高槻市に本校を構え、5教室を展開する「新生塾」の代表・平木与範氏にお話を伺いました。 新生塾は、塾業界の常識を覆すユニークな取り組みを行いながらも、「最も成績を上げる塾」として地域で確かな存在感を築いてきました。 ・教材費ゼロ ・通塾回数は、週2回を基本に週6回まで増えても追加料金ゼロ ・アップセルもアルバイト講師もゼロ こうした取り組みの裏側には、「成績を上げる」という一点に向き合い続けてきた、シンプルでまっすぐな思いがあります。平木氏に、その考えや取り組みについて、お話いただきました。

▼教室紹介
2011年開業。大阪府高槻市に本部を構え、5教室を展開。地域の子どもたちの「がんばりたい気持ちを応援する学習塾」として、通い放題、追加料金ゼロ(教材費・追加指導料・テスト前対策講座)、アルバイト講師ゼロなどユニークな取り組みで成績UPを支援している。

新生塾
大阪府高槻市須賀町7-2 新生ビル 1階
https://www.shinseizyuku.com/

▼平木与範さまご紹介
大手学習塾、個別指導塾で6年勤務後に、新生塾を立ち上げ。「成績を上げる」ことに特化したシンプルながらもオリジナリティ溢れる教室運営を推進。多忙になりがちな塾業界の働き方改革の遂行にも注目が集まっている。

生徒の成績について聞かれないことへの違和感

新生塾を始める前は、6年間で2つの塾に勤務していました。最初は大手塾、次に個人塾です。

どちらの塾でも学ぶことは非常に多く、今につながる経験もたくさんさせてもらいました。一方で、働く中で少しずつ違和感を覚えるようになったのも事実です。

1つは、売上や講習の提案数が重視される一方で「担当している生徒の成績がどうなっているか」を聞かれたり、そのことについて話し合ったりする機会がほとんどなかったということでした。

もう1つは、教材についてです。とにかく数が多いんですよね。教材もアップセルに繋がります。テストや講習を機に「これも必要」「これもおすすめ」とどんどん提案が増えていく。「さすがに生徒も混乱するのでは?」「やりきれずに、無駄になるのでは?」と感じることが、少なくありませんでした。

私自身、売上などの目標達成を目指すことは嫌いではありませんでした。むしろ積極的に取り組んで、成果も出していたと思います。それでも、もっと生徒の成績そのものに向き合っていいんじゃないかーー。そんな思いが、心の中から消えることはなく、日に日に大きくなっていきました。

そこで、勤務を続けながらも、理想の塾のあり方について考えを整理していきました。
「自分がやるなら、こういう塾にしたい」
その思いを形にするため、2011年に高槻市で新生塾を立ち上げました。

「成績を上げる」ために必要のないことは削る

「成績を上げる」ことに特化したい。どんな生徒であっても最大限伸ばすことにコミットしたい。その思いは、新生塾の理念にも反映されています。

新生塾の理念

  • がんばる生徒を応援したい
  • 最も成績を上げる塾
  • 最も安価な授業料

最も安価な授業料でも、成績を上げる。これは一見矛盾しているように感じられるかもしれません。

ただ、私自身は、「成績を上げるために本当に必要なものは、実はそれほど多くない」と考えています。むしろ、やることを増やしすぎるほど、生徒は混乱し、理解が浅くなってしまう。だから新生塾では、必要のないことは思い切って削り、やることをシンプルにすることを大切にしてきました。

その象徴的な取り組みが、教材です。新生塾では、各科目につき教材は1冊だけ。教材費は無料です。それを、ボロボロになるまで、何度も何度も使い込みます。

たくさんの問題に触れることよりも、限られた問題を徹底的にやり切る。何度も繰り返して「考えなくても解ける」状態まで持っていく。そうして初めて、知識は定着し、次の内容に進むことができると考えているからです。

教材を増やせば、「やっている気」にはなります。でも、実際には前に学んだことが定着せず、抜け落ちたまま次に進んでしまうことも多い。それなら最初から、やることを絞って、やり切る。その方が、結果的に成績は上がると考えています。

実際、生徒からも「今までの塾と全然違う」と驚かれることが多いですね。でも、シンプルだからこそ、生徒も集中できるし、社員も同じ指導ができる。実際に生徒の成績も驚くほど上がっています。

成績を上げるために、通塾回数で料金を変えない

この考え方は、通塾の仕組みにも反映されています。

新生塾では、通塾回数を制限していません。基本は週2回ですが、成績を上げるために必要であれば、週4回でも、週6回でも通ってもらいます。それでも、授業料は変わりません。

成績を上げるために必要な学習量は、生徒によって違います。通塾回数に基づいて「料金」を設定してしまうと、料金がネックとなって、本来必要な勉強を諦めることにも繋がりかねません。だから、授業料は週に何回通っても同一にしているわけです。

入塾時には、生徒と保護者にはっきり伝えます。「成績を上げたいのか、上げたくないのか。どちらですか」と。上げたいのであれば、必要な回数を通うことに納得してもらうだけです。料金を理由にはできません。

だからこそ、生徒も覚悟を持って通うことになります。こちらも全力で向き合います。その代わり、中途半端な気持ちでは続けられない塾だと思います。

アルバイト講師は置かない

新生塾では、アルバイト講師を置いていません。各教室を、社員1人で運営しています。

理由はシンプルです。間にアルバイト講師を挟むことで、伝えたい内容が薄まってしまうからです。100のメッセージも、社員、講師と人を挟むうちに30くらいまで弱まってしまうこともあるでしょう。それでは、生徒に本当に伝えたいことが届きません。

社員の働き方も、成績を上げることに特化する

各教室社員1人だと、社員の負担が大きいのではないかと思われることもあるかもしれません。しかし、新生塾では社員の労働時間を1日8時間に収めています。

やることを厳選し、アップセルや無理な提案をしない。その分、社員が日々の指導にしっかり向き合える環境を整えています。

こうした働き方が実現できている背景には、私自身の苦い経験もあります。以前勤めていた塾では、講習前になるとアップセルのために徹夜に近い働き方が続き、体を壊して入院したこともありました。

だから新生塾では、講習受講率〇%といった売上目標を設けていません。そもそも講習は全員参加にしているため、売上のためのコミットやアップセル活動は必要ありません。生徒の成績を上げることだけに集中できる体制をつくっています。

「がんばる覚悟のある生徒」だけを受け入れる

新生塾では、入塾前に必ず生徒本人と話をします。「なぜ、ここに来たのか」「本当に成績を上げたいと思っているのか」。それに加えて、「成績を上げるために必要な勉強量を頑張れるか」の覚悟も問います。

成績を上げるには、塾だけが頑張っても意味がありません。生徒本人の覚悟がなければ、結果は出ないからです。たとえば、5教科で100点台の子であれば、週6回、1回3時間ほど通わなければ成績は上げられない。そうした現実も、はっきり伝えています。

正直、誰でも受け入れるやり方のほうが、経営としてはラクだと思います。それでも新生塾では、最初に覚悟を共有することを大切にしてきました。

その結果、やる気のある生徒ばかり集まっているので、教室の雰囲気はいいですね。「成績を上げる」という一点に集中できる環境が保たれています。他の塾からきた生徒が「ここは誰もおしゃべりしてない」と驚くことも少なくありません。

口コミで広がった「成績が上がる塾」

こうした積み重ねによって、地域でも「成績が上がる塾」としての評判が少しずつ築かれてきました。もともとは、成績下位層の生徒が中心でしたが、成果が出るにつれて、上位層の生徒も入塾してくるようになりました。

集客のほとんどは口コミです。校門前でチラシ配布を行ったのも、最初の1年間だけ。最近になってリスティング広告を始めましたが、それ以外はほぼ口コミだけで生徒が集まっています。

大手塾が参入し、無料キャンペーンなどを打つ中で、一時的に入塾が落ち込むこともありましたが、生徒数はまた増えていきました。

売上目標や講習の受講率に追われることはありません。社員に考えてもらっているのは、「担当している生徒の成績をどう上げるか」だけです。

やることを絞り、シンプルに向き合う。だからこそ、一人ひとりにコミットでき、結果を出し続けることができる。その積み重ねが、今の新生塾につながっているのだと思います。


(編集後記)
新生塾の取り組みは、一見すると大胆な選択の連続にも見えます。

しかし、その根底にあるのは、「成績を上げる」という一点に、長年向き合い続けてきた揺るぎない姿勢でした。

仕組みや料金、指導体制。そのすべてが、「成績を上げる」という目的から一貫して設計されています。成績を上げることに集中した結果、働き方もホワイトになっていることには、驚かれるかたも多いのではないでしょうか。

塾の在り方は、一つではありません。「学び紀行」はこれからも、現場の声を通して、多様な塾教育のかたちを伝えていきます。