成功する授業づくりの新ルール デジタル化で授業準備も生徒・保護者の意識も変わる

通塾を継続する大きな要因となるのは、質の高い授業です。とはいえ、そのためには授業準備から授業の実施、授業後の指導報告と必要なタスクが多くなってしまうもの。忙殺されてしまうこともあるかもしれません。はたして、授業づくりに成功するケースと失敗するケースとにはどのような違いがあるのでしょうか。

監修いただいた先生


授業準備が成否を握る 

——通塾を継続させる良い授業とは、どのようなものなのでしょうか?

良い授業には「共演授業であること」「保護者も効果を実感できること」の2点が求められます。一方、避けた方が良い授業とは講師による一方的な講義のシャワーで、海外からcram school(詰め込み教育)と揶揄されてしまうものと言えるでしょう。

1点目の共演授業とは、講師と生徒で作り上げていく授業のことです。生徒の発言や、間違いを活用して授業を展開していくため、授業もライブ感に溢れた生き生きと楽しいものとなり、生徒の参加意識も高まります。

2点目の保護者も効果を実感できるというのは、塾だからこそ求められるものと言えます。生徒に通塾を継続してもらうには、生徒だけでなく保護者も効果を実感し、満足していただかなければなりません。そこまで念頭に入れて、授業を組み立てることが求められるわけです。

——良い授業を構築するには何が求められるのしょうか?

授業準備で授業の成否が決まるといっても過言ではないでしょう。何を教えるかだけでなく、どう教えるか、そしてあらゆるケースを想定してストーリーを構築することが求められます。そのときに役に立つのが、現在、過去の生徒データ、指導記録といった財産です。塾内にさまざまなデータはあると思いますが、意外と散逸してしまっていることも多いのではないでしょうか。それを一元化し、取り出しやすくしておくだけで授業準備は劇的に変わりますよ。


授業前はデータを活用した授業準備を

——データを活用した授業準備について、具体的に教えてください。

授業準備には「①前回の授業とのつながり創出」「②前年度など過去の授業の改善ポイントの反映」「③どの生徒がどのような反応や間違いをするかなどあらゆるケースを想定した授業構想」の3つが必要になります。

このとき特に②③に関して、蓄積されたデータがモノを言います。英語の感嘆文でwhatとhowの使い分けを教える際を例に見ていきましょう。

まずは、前年度の生徒たちの定期テストの点数はどうだったか、生徒たちの反応はどうだったかを成績記録や指導報告から確認します。点数が高いクラスと低いクラスがあるとしたら、その理由を考えるわけです。そうすると、理解がいまひとつだったクラスでは「howは形容詞や副詞を強調」といったように英語なのに国語の文法のように教えていたなど改善ポイントに気づくのです。そこで、文法用語を使わない解説を考える、うまくいっていたクラスで使ったプリントを使ってみるといった改善案が生み出されてきます。

さらに、現在の生徒の指導報告や成績から、想定される間違えのパターンも洗い出します。「生徒Aは、この問題にこう間違えると思われるから、それを起点に追加解説をしよう」といった形に共演授業のシナリオを構築をしていくわけです。

このように見ていけば、現在や過去の生徒のあらゆるデータが授業準備の質を高めることに寄与することをお分かりいただけるのではないでしょうか。教師は博覧強記であることが求められますが、全てを頭の中に記憶しておくことはできません。しかし、蓄積されたデータという材料があれば、それを手がかりに良い授業を構築していくことができるはずです。

——データが蓄積されていなかったり、一元管理されていないケースもありそうです。また、講師に授業準備の負担が大きくのしかかるのではという懸念もあるのではないでしょうか。

データの蓄積・管理には、専用のツールを利用するのがおすすめです。私が経営していた大手塾では、Comiruを活用していました。成績や指導報告、授業で使ったプリントに至るまで、あらゆるデータをワンストップで一元管理できるため、授業準備のたびにデータを探しまわる必要もなく、効率的な授業準備をすることができました。

蓄積されたデータがすぐに取り出せると、振り返りが容易になることはもちろん、改善点のあたりもつけやすく、計画を立てやすいんですよね。改善した内容は、またコミルに格納していくので、改善のサイクルが積み上がっていくのを実感し「使えば使うほど楽になるぞ」と思ったほどです。

データはあるのに蓄積されていないというのは、宝を見過ごして財産化できていないということ。デジタル化は強くおすすめしたいですね。


授業準備が効率化できれば、生徒のモチベートに集中できる

授業準備を効率的に進めることは生徒のモチベートという観点からも効果的です。授業準備を前日までにすませておけば、当日は、塾に登校するタイミングから生徒の様子に集中することができます。「部活の試合はどうだった?」「今日は疲れてるな。大丈夫か。」など、生徒の変化に気づいて声をかけることや、「誕生日おめでとう!」と声掛けできれば、生徒の授業参加への意識をチューニングしていくことができるでしょう。

データを活用して効率的に授業準備をした分、生徒と向き合う・生徒とのコミュニケーションというデジタルでは置き換えられないアナログ情報に気を配るのが鉄則。授業当日に慌てて準備をするようでは、言語道断です。


授業後は保護者に塾に通わせている意味・効果を実感してもらう

——授業後には、どのようなことに注力すべきでしょうか?

冒頭でも申し上げた通り、通塾を継続していただくには保護者に塾に通わせている意味・効果を実感していただくことが必要です。効果を感じていただく観点としては、成績の向上だけではありません。学習への取り組み姿勢や言動、身についたスキルや苦手の克服など、どんな変化があったのかを具体的に知ることで、効果を具体的に感じられるようになります。そのため、授業後はそれらの点を指導報告書で伝えることに注力できるといいでしょう。

——これまでたくさんの指導報告書を見てきたと思いますが、良い指導報告書とそうでない指導報告書の違いはどこにあるのでしょうか?

良くない指導報告書は、やったことと点数が記されただけの淡泊なものです。事実が書かれているだけで、無機質に感じられるでしょう。

一方で、良い指導報告書は、取り組んだことだけではなく、生徒の変化の様子や未来の計画が書かれています。「以前は論説文の要約ができず、白紙のままのことが多くありましたが、集中して埋められるようになりました。ポイントもつかめているため、あとは文字数に合わせてまとめられればOKです」といった具合ですね。

保護者は、点数や順位という材料でしか子どもの勉強の成果を知ることができないことが多いものです。そこに、点数や順位では測れない変化を言語化して伝えられたらどうでしょうか。自分の子どもの良い点を具体的に伝え聞くことは喜びを感じるものです。「こんな変化があっただなんて、塾に通わせてよかった」と実感することになるでしょう。

そうなれば、塾の指導に家庭を巻き込むことができるのです。塾が提案する計画にサポーティブに反応し、生徒をモチベートしてくれるようになるでしょうし、生徒が疲れてやめたくなってしまった際も、保護者が防波堤になってくれることもあるでしょう。

さらに、良い指導報告書を保護者に送れると、生徒の学習行動も好転します。指導報告で知った生徒の良い変化を、保護者も家庭で子どもに伝えたり、褒めたりする。そうすると、家庭での会話が変わる。会話が変わると、生徒の意識が変わる。意識が変わると行動も変わるというわけです。

講師によって指導報告書の質に偏りが出てしまうこともあるので、特に最初のうちは、教室長が講師の書いた報告書に目を通してから保護者に渡すようにすることをおすすめします。Comiruの指導報告書に講師に記載はしてもらい、その承認は教室長が行うと効率的でしょう。

——様子や未来の計画を伝える指導報告書をうまく作るコツはあるのでしょうか?

ここでも蓄積されたデータの活用が有効です。たとえば、Comiruなら生徒の成績や過去の取り組みの様子をワンクリックで確認できることはもちろん、指導報告書のパターンをテンプレート作成しておけます。「集中力が高まったケース」「英語の比較級を克服したケース」など、テンプレートをもとに生徒に合わせてカスタマイズしていけば効率的です。パターンを増やしていく、つまり使い続けるほど、より効率的に作成を進めていくことができます。

「指導報告書を書くにも経験がいるのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、生徒の様子を伝えるのは能力ではなく気持ちの問題ですよね。また、Comiruにテンプレートが登録されていれば、経験の浅い講師であっても、それらを参考に作っていくことができるはずです。ここでも、デジタルの力を用いて効率化するからこそ、血の通った温度感のあるコミュニケーションが可能になるのではないでしょうか。


デジタル化で情報の財産化と効率化、指導力とチーム力UPが実現する

——成功する授業づくりにデジタル化が大きく役立つことがわかりました。単なる情報の一元化にとどまらない多くの効果があるんですね。

今回ご紹介した授業準備や、保護者への指導報告を手動で行ったとしたら、時間がどれだけあっても足りません。成績データや過去の指導内容を確認するのに、紙を束ねたファイルをひっくり返して探し回るより、ワンクリックで確認するほうがはるかに効率的です。さらには、指導内容や指導報告書のテンプレートを蓄積していくことで、状況に合わせた指導法やテンプレートを選び、カスタマイズしていくことがどんどんできるようになる。授業構築そのものも効率化するわけです。

実際、Comiruを導入しているある塾では、講師の授業準備や指導報告書の作成等の時間が毎日平均1.8時間ほども削減できたそうです。塾に散逸しているデータを一元管理して財産化することで、圧倒的な効率化が実現するわけですね。

ただし、Comiruによるデジタル化の効果はそれだけに止まりません。指導力とチーム力のUPにも寄与すると考えています。

指導力に関しては、蓄積されたデータや指導プリントを参考にすることで、講師による指導力のバラつきを防げますし、試行錯誤した指導報告が蓄積すればするほど、指導の改善が積み上がります。データで一元管理されることで、講師が変わったため過去の内容が引き継がれないという「塾あるある」も回避できるでしょう。

チーム力UPに関しては、講師と生徒という単線の繋がりだけでなく、保護者や生徒同士も含めて、繋がりが複線化することが挙げられます。保護者の巻き込みに関しては、先ほどお伝えした通りですので、他の例をお伝えしましょう。

たとえば、Comiruでは過去の生徒のデータを引っ張ってくることも簡単です。あるとき、京都大学に現役合格した卒塾生の勉強時間や、高1、2のときの学習内容(ノートの写真)を添付して、京都大学志望者にComiruのお知らせ機能を使って送ったことがありました。合格者の実例データは、説得力がありますよね。生徒たちが奮起したのは言うまでもありません。

また、Comiruではアンケートも簡単にとることができます。通塾している生徒にComiruで1日の勉強時間を聞いて「平均時間を出し」その結果を送り返しました。すると、仲間の様子や「自身の勉強時間との差異」を知ることでまた奮起するのです。

このようにデータを活用することで、過去の生徒が現在の生徒に刺激を与えてくれたり、生徒が生徒を駆り立てるといったピア効果も生まれます。講師、生徒、保護者がさまざまに関わり合い、刺激し合うことで、個人戦になりがちな勉強にチーム力が付与されるのは、非常に大きな効果なのではないでしょうか。

デジタル化に二の足を踏む塾経営者の方もいらっしゃるかもしれません。とはいえ、デジタル化の副産物は業務効率化だけにとどまりません。効率化と並行して、授業準備の質も効果も高まり、保護者の巻き込みも可能になります。何より、データを蓄積すればするほど、質と効率の両方を高められて負担が減って楽になるのは嬉しい驚きとなるはずです。そのインパクトをぜひ多くの方に実感していただきたいですね。