<後編> 多教室展開戦略を実現させるために フェーズごとに注意すべきポイント

個人で自分の教育理念や理想とする学習環境を実現する塾を立ち上げ、一定の成功を収めている場合、次の一手として考えるのが、多教室展開です。 ビジネスとして拡大していく際には、注意すべきポイントを押さえ戦略的に進めていくことで、事業が成功する確率は上がっていきます。 今回は、多教室展開を進めていく際に考慮したい点を、<前編>「フェーズ①単独教室から2教室へ増やす」、<後編>「フェーズ②3教室以上に教室数を増やすフェーズ」「フェーズ③10教室以上にスケールする」の3段階に分類し、解説します。

監修いただいた先生

フェーズ②3教室以上に教室数を増やすフェーズ

前編では、単独教室から2教室に増やす際の注意点をまとめましたが、後編では、それ以上にスケールしていく時に気を付けたいポイントを解説します。

塾は、どこまで拡大しても、労働集約型のビジネスであることに変わりはなく、すべての勝負は講師の質がものを言います。つまり、人材育成こそが最重要課題であり、2教室を運営する中で、3教室目、4教室目を任せられるプレーイングマネージャーが育てることが引き続き不可欠となります。

明確な評価制度を確立する。モチベーションの維持で離反を回避。

教室が多くなった場合、プレーイングマネージャーの育成と同時に、必要となってくるのが明確な人事評価制度を整えることです。教室長(マネージャー)や講師が増えた場合、どのようにすれば評価されるかを体系化し、しっかりと伝えていかないと、働く側のモチベーションを維持できず、離反を招いたり、キーマンが退職するという憂慮すべき事態も起こりかねません。

どのような評価制度が必要かは、また別の記事で詳述する予定です。ぜひご期待ください。

各教室に足を運び、自分の目で問題の芽を見抜く!“プレーイング”をやめて“マネージメント”に徹する。

さらに、多教室化が進む中で重要な点は、塾長が“プレーイング”をやめること、すなわち、自分が教室を持ったり、授業で教えたりすることから「引退」し、完全なマネージメント専門にシフトすることです。

教室が増えれば増えるほど、講師の教え方の管理は難しくなります。中には勝手に自己流のやり方で教える講師も出てきます。例えば、塾長が「自ら主体的に考え、物事の本質を捉えて学ぶことが重要」という教育理念をうたっているのに、ある教室の講師がテストの点数を上げることだけに終始し、生徒にひたすら丸暗記を強いていては、全く逆の教育となってしまいます。

あるいは、ただ闇雲に単語を5回書くことを指導するのが好きな講師もいます。そうした細かい現場の暴走は、自ら足を運んで確認しなければ見つけることはできません。もし、塾長が教室を持っていたら、その時間を確保できず、見過ごすことになりかねないのです。結果、生徒と保護者に不評を買い、年度末に半数が退塾するなど最悪の事態に陥ることは、実は塾の世界ではよくあることなのです。

塾長としては、いかに問題を早くキャッチし、手を打つかが求められます。そのためにも、マネージメントに徹し、毎日各教室を自分の目で視察し、変化を鋭く捉えることが重要になります。

各教室のデータを見て問題解決の優先順位を決める

ただし、教室が多くなれば、毎日自分の足で全てを回るという“超アナログ”な方法を行うことは難しくなります。そこで、塾長のマネージメントをデジタルデータで補佐する役割を果たすのが「Comiru」です。

Comiruを使えば、各教室の生徒の出欠状況のデータが一目でわかるようになります。出席率が低い教室があれば要注意です。成績や授業の内容の理解度を問う確認テストの結果が上がっているかどうかも、グラフで一目瞭然です。

毎回確認テストを実施している塾もありますが、そこで不合格者が続出しているようであれば、そもそもその講師による授業が成り立っていないことを意味し、塾長自ら講師に対して指導するなど、メスを入れることができます。

また、Comiruには、LINEや専用アプリによって保護者にお知らせを通知する機能があり、「既読率」を数値で示すことも可能で、その既読率を見て、変化を知ることができます。例えば、既読率が低迷していれば、保護者の関心が薄くなっていると推察され、コミュニケーションがうまくいってのではという仮説を立て、対策を指示することができるわけです。

大切なのは、とにかく早く手を打つことです。状況を素早くキャッチし、出向いて早めにメスを入れれば、傷は浅くて済むのです。Comiruを使えば、データによって、「もしかすると、うまくいってないのでは」と問題や変化を察知し、その日に回る教室の優先順位を決めることもできます。それによって、問題の芽をいち早く潰し、正常な形に迅速に戻すことが可能になるのです。

③10教室以上にスケールするフェーズ

1万人以上の生徒を持つ大手塾や、数千人規模の地方の中堅塾が盤石な基盤を築いている中、単独教室や数拠点の教室で運営している小規模塾で、今後、10教室、20教室と広げていく戦略は現実的ではないかもしれません。全国展開している大手塾に対抗し、ある地方限定で強みを発揮している中堅塾ともしのぎを削って拡大していくことは、非常に難しいと言わざるを得ないからです。

大規模展開を考える場合、独立志向のある社員によるFCでスケールが有効

しかし、それでも大手や中堅の塾に挑み、大規模展開を目標にするのであれば、取るべき選択肢はあります。それは、独立志向があり、実力も兼ね備えた社員に、自社ブランドをのれん分けして、FC展開によってスケールを図ることです。

社員のままであれば年収は最大で500~600万円にとどまりますが、独立すれば1000万円の大台に乗せることも夢ではありません。社員にとっても利点があり、塾長としてもFCの仕組みを作ることで、“看板代”が収益として上乗せされるメリットを享受できます。

大手塾や中堅塾にはない独自のカリキュラムを持ち、勝算がある場合は、FCでのスケールを考えるのも一つの手でしょう。