ミッション1:テンションが低い「低体温系」女子中学生

講師にやる気があっても、まったく生徒に響かない、同じミスに対して毎回同じ指導を繰り返す……。生徒のモチベーションが上がらないと、講師のモチベーションも上がりません。そんなお悩みを抱える塾・スクールは少なくありません。 このコーナーでは、モチベーションアップに悩む生徒のタイプ別に対応の仕方、声のかけ方を解説していきます。

監修いただいた先生

第1回は「テンションが低く低体温系女子中学生:中2女子」Aさんのケースです。

相談者:個別指導T塾 塾長

Aさんは、自分の意見を主張したり、積極的に質問したりすることはほとんどありません。とはいえ、すべてを理解しているわけでもありません。担当の講師も「具体的に聞いてくれたら答えるのに」とモヤモヤしているようです。

テストの結果が良いと明るい表情になりますが、悪くてもすごく落ち込んだり悔しがったりということもありません。休憩時間や授業を終えて帰るときには友達と楽しそうに話しているし、きっと授業は楽しくないんだろうな、講師に心は開いてくれてないんだろうな、と思ってしまいます。でも、もう少しモチベーションが上がってくれれば、成績も絶対に上がるんです。

 

新田コーチ

女子中学生に多いタイプですね、わかります。というか、何人か思い浮かびます。

先生がおっしゃるとおり、モチベーションが上がれば確実に成績は上がります。だから少しずつやる気を引き出すきっかけを与えてあげるといいと思います。

 

決まった方法はありませんが、注意しなければいけないのは「テンションが低めの子のテンションをあげようと、やたらハイテンションに接しないこと」。やればやるほど空回りしてしまいます。

テンションが低い子は、機嫌が悪いとか、講師が嫌いとかではなく、ただそういう性格なだけです。Aさんがどんな言葉に響きそうか誰の声なら聞きそうか、もしかしたら保護者を巻き込んだ方がいいのかなど、普段の会話をヒントに、次の基本ルールをもとに一緒に考えていきましょう。

 

<テンションが低い生徒のモチベーションUPの基本ルール>

  • テンションを無理にあげようとしない。空回るだけ。
  • 落ち着いたトーンで語りかける。
  • 大げさにではなく、さりげなく気にかけている様子を態度で示す。
  • くどくど褒めず、短い言葉でさっぱり褒める。
  • 共通の好きなもの(推しなど)を見つける

 

ーーー登場人物・普段の授業ーーー

Aさん

公立中学校に通う中2女子。高校受験を見据えて中2の夏期講習から保護者のすすめで入塾。イラスト部。中学受験の経験なし。学校の成績はちょうど真ん中くらい。保護者は普段の学習には口を挟まないがテストの結果にはピリピリする。1日4時間はスマホをみている(自己申告)。

 

T塾塾長・H講師

中高生向けの個別指導塾を運営。生徒数80名、講師8名。Aさんの指導は主にH講師(女性・M大学2年・明るくて優しい、割と物静か)が担当。

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Aさん入室

......こんにちは。

 

塾長

Aさん、こんにちは。今日は雨で大変だったね、バスで来たの?

 

Aさん

あぁ、まぁ。

 

塾長

今日は英語だね、ブースで教科書開いて待っててね。

 

Aさん

(ぺこり)

 

H講師

Aさん、こんにちは。雨やだね。

 

Aさん

(ぺこり)

 

ーー

じゃあこの前の続きからやろうか。

 

Aさん

(無言でテキストを開く)

 

ーーー新田コーチ割り込み!

いいですね!大きな声ではなくてもちゃんと挨拶ができるのはいいことです。大きな声でこんにちはって言える方がめずらしいですよ!(笑)

雨大丈夫?疲れてそうだけれど大丈夫?テストが続くけど大丈夫?など、「気にかけてるよ」という姿勢を見せることはとても大切です。

H講師

では英語の比較表現の続きから。提出してくれた宿題をチェックしました。夜遅くにありがとう。これはテキストを見ながらやったのかな?全部できていたけど。

 

Aさん

わからないところは見ました。

 

H講師

どこがわからなかったかな?

 

Aさん

まあ、だいたいわかったけど、前置詞がこんがらがったりとか……

 

H講師

前置詞はパターンが決まっているから、覚えてしまえば大丈夫だと思うよ。比較表現はルールに慣れて行けば大丈夫。規則変化、不規則変化は覚えたかな?erをつける場合と、moreがつく場合、不規則変化は例えばlittleが出てきたね?

 

Aさん

あぁ、だいたいは、はい。

 

ーーー新田コーチ割り込み!

いいですね!リアクションが薄い子には、抽象的な質問はご法度です。質問を具体的にして例も出しながら、これのことだけどわかる?と聞きましょう。それならYesかNoで答えやすいし、ここまではわかるけれどここからはわからない、というラインが見えやすくなります。

生徒も、省エネな反応で済まそうとしますが、具体的な質問に対する相手の理解が間違っていると、さすがに「いや、そうじゃなくて…」という反応を示します。相手のリアクションが薄い場合は、状況(ここまでは理解している、など)をお互いに確認し、メモしておくといいですよ。

H講師

では比較表現の続きに入ります。最後に演習をして、今日でこの単元は終わりにします。次の受動態という単元がけっこう難しいので比較はさらっと終わらせるね。

 

Aさん

はい。

 

ーーー新田コーチ割り込み!

ちょっと一方通行ですね。もし比較表現の単元に苦手意識があったとしたら、これ以上難しい単元が控えていることに動揺します。今回で授業を終わらせるにしても、どうやったらモチベーションを上げたまま次に進むかを考えましょう。

課題の内容や、前回の授業の反応から、「きっとAさんはできるよ」と思わせてあげるのはどうでしょうか。子どもは褒めて伸ばすのは基本のキ!今回の場合、「宿題を見たけどこの単元はよく理解していた」「不安だった前置詞はこれから先も出てくるから今苦手でも大丈夫」「今日の授業でこの単元をマスターしよう!パターンを覚えれば点取り問題!」という前向きなコメントでどうでしょうか。

 

新田コーチ総評

 

AさんとH講師、Aさんのリアクションは低めですが、静かに寄り添うH講師のスタイルは合っているように感じました。

 

生徒のモチベーションを上げるも下げるも、講師やまわりの大人の対応次第です。「やるぞ!ぶちかませ!」という気合いでモチベーションフルマックスになる生徒もいれば、本人も気が付いていないやる気のタネを、大人が少しずつ育ててあげるとうまく行くような生徒もいます。

 

そもそもまったくやる気のないお子さんは塾にも来ませんし、もし来ても結果に繋がりにくいのでお断りしてもいいくらいです。

 

今回のAさんは後者の方でしょう。「やる気があるのを知ってるよ」と直接言わずに態度で示すのがいいと思います。具体的には「さすがだね」「うん、よくできてるね(肯定の”うん”を入れるだけで、できると思ってたという意が伝わりやすい)」「(あなたには)簡単だった?」などの短い言葉が刺さりやすいと思います。

 

なかなか話が弾まない、リアクションがない生徒には、共通の好きなもの・ことがあるといいと思います。推しのアイドルとか、ゲームはちょっと受験生には難しいかもしれませんが(笑)。例えばこんな感じです。

 

 

新田コーチ劇場開幕

新田

Aちゃん、YOASOBI(歌手)すきだよね?

Aさん

あ、はい。

新田

YOASOBIの曲の中にも比較級出てるって知ってた?

Aさん

え~?わかんないかも。

新田

もうすこしだけ♪ってあるでしょ?あれを英語にするとjust a little moreって表現になって、「もっと」の時にmoreを使うんだよね。

Aさん

へ~。ほかにもありそうかも。YOASOBIって英語版もあるよね。

 

こんな感じでしょうか。知っている推しと学習を絡めて話してみると、低テンションの子でもちょっとは興味を示したり、場合によっては急にハイテンションになります。

 

テンションが低い子は無理にあげなくてもいいです。少しでも開いてくれていた扉を無理にこじ開けようとすると、鍵をかけられてしまいます。少し開いた隙間から、肯定のメッセージをたくさん投げかけてあげてください。

 

子どもも好きでモチベーションを下げているわけではありません。大人の適切で適度な声がけで、スムーズに学習ができるよう、サポートしてあげましょう。

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