保護者からの紹介数150%増を実現する「顧客密着度」の高め方

保護者との良好な関係性の構築は、塾・スクール運営に必要不可欠。関係性がよければ、継続に繋がることはもちろん、口コミでの紹介数も増えるはずです。とはいえ、忙しいスクール運営の中で、保護者とのコミュニケーションの時間を作ったり、フランクに接することは難しいと感じることもあるのではないでしょうか。 そこで今回は、保護者コミュニケーションのスペシャリストで、保護者からの高い顧客満足度と紹介数150%UPを実現している「個別指導学院ヒーローズ」北赤羽校の代表・渡辺剛之先生にその極意をうかがいました。高い顧客密着度の裏側に隠された、数々の真似したいノウハウに迫ります!

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保護者コミュニケーションの時間を確保するアイデア

ーーComiruの調査によると、塾運営に携わる方の69.3%が保護者コミュニケーションの時間確保が難しいと回答しています。渡辺先生はどのように時間を確保されていますか?

保護者コミュニケーションの時間を取るのが難しい実態は、私もよく理解しています。業務の多さはもちろん、共働き家庭が増えたことでなかなか連絡がつかないこともありますよね。だからといって、後回しにしていてはいつか致命傷となってしまう。そこで、当塾では社員と一緒に毎日必ず10分間は保護者のことを考え、対応する時間をとるようにしています。

 

10分間の使い方は、まず6分で保護者とのこれまでのやり取りなどを思い出したり振り返りながら考えます。「そういえば保護者のAさん、前回の面談で学校の宿題をやらないのが悩みといっていたなぁ」といった具合ですね。

 

次に残りの4分で保護者への行動を実施します。Comiruのメッセージ機能を使って先程のAさんに「最近、宿題やっていますか?」と送るといった感じです。

 

業務の多さに忙殺されてしまいがちであるからこそ、意識的に時間を確保することが大切だと考えています。10分であれば、たとえ毎日だったとしても確保できそうだと思いませんか?

「顧客密着度」を重視している理由

ーー多忙な中でも、毎日保護者コミュニケーションの時間を確保されています。「顧客密着度」を重視しているのはなぜですか?

 

顧客密着度こそがお客様の満足度・信頼度に関わることに加え、中小塾や個人塾が大手に勝てる可能性が最も高い要素だからです。お客様が塾を選ぶのには「商品力」「利便性」「顧客密着度」の3つの理由がありますが、この中で「商品力」「利便性」は資金力や生徒数の多い大手が優位でしょう。商品開発にお金をかけたり、単価を下げて人数を増やしたり、良い立地で開校できたりしますからね。

 

でも「顧客密着度」だけは、工夫次第で大手を超えることができます。「顧客密着度」は信頼関係構築のベース。たとえて言うならば、サザエさんの三河屋の「サブちゃん」が理想のモデルですね。サブちゃんって、勝手に裏口から入ってきて、時には軽口も叩きながら勝手に商品を置いていくじゃないですか。値引きがあるわけでもないのにサザエさんも文句も言わない(笑)。なぜなら、サブちゃんは磯野家を熟知していて、今何が足りないか、何が必要かを把握しているから全幅の信頼を寄せられているんです。

 

サブちゃんのように、プライベートも含めて距離感を近づけ、気にかけている姿勢を感じていただき信頼を得る。その結果、継続的にサービスを提供し続ける。中小塾や個人塾が勝っていくには、「顧客密着度」が最優先事項だと考えています。

 

ーー「顧客密着度」の重視は開校当初から意識されていたのでしょうか。それとも、何かきっかけがあったのですか?

 

開校9年目で教室長から代表になった際の出来事がきっかけです。教室長を社員に任せたのですが、これまで右肩上がりだった売り上げが下がっていってしまって…。そこで、これまで売り上げが上がっていったのは、塾の商品力や価格に競争力があったからだと思っていたけどそれは違うということに気づきました。そうではなくて、私が顧客とコミュニケーションを取ることで高めていた「顧客密着度」にあったのだと。そんなわけで、誰でも顧客密着度を高められる再現性のある仕組みを作ろうとするようになりました。

保護者との距離感の図り方 

ーー「顧客密着度」を高めるためには、保護者とフランクなことも言える関係性になるのがいいのでしょうか?Comiruの調査では、38.4%のかたがフランクな関係性を築けていないようです。

私自身は、できるだけフランクなことも言い合える関係になりたいと思っています。「塾のファンになってもらう」がテーマですね。「役に立つ」も続けるモチベーションですが、「ファンだから」も続けるための大きなモチベーションになりますから。

極端な例になるかもしれませんが、卒業してから3年後に「先生、子どもの進路で相談があって」と連絡してきてくださったケースや、ビールを持ってご相談にいらしたケースもあります(笑)。「いろんな塾長に会ったけど、先生が一番」と言っていただいたことも。それは必要な情報を適切に提供するだけでなく、プライベートなことも含めて血の通ったコミュニケーションを積み重ねたからこそなのではないかと自負しています。

とはいえ、もちろん、誰にでもフランクにいけばいいというわけではありません。ある程度の距離感を保つコミュニケーションを好む保護者に対しては、プライベートには踏み込まずに、生徒の様子やおすすめの勉強法などに関するこまめな情報提供を心がけています。

「顧客密着度」が高まると紹介も増える⁉︎

ーーヒーローズ北赤羽校では顧客密着度が高まった結果、保護者からの紹介入塾も150%増加しています。紹介を増やすために取り組んだことや意識したことを教えてください。

紹介を増やそうというよりは、ファンになっていただいて、塾のことを他の人にしゃべりたくなる状況を作るというイメージを持っています。先ほどお話した”毎日10分保護者のことを考え、行動する”ということに加え、紹介カードも工夫していますね。実際のカードをご覧に入れましょう。 

 

どうですか。「紹介してくれたお父さん・お母さんは教室長河内から直々に個別指導の授業を受けることができます」とは、なかなか斬新な特典ですよね(笑)。これだと保護者の方も知り合いの塾ニーズのあるなしに関わらず、「いや、うちの子の塾、変わったことしててさ〜」と話のネタにもしてくれます(笑)

また、教室長や講師が保護者に生徒紹介のお願いを話題にしやすいというメリットもあります。「ぜひ知り合いを紹介してください」だと売り上げを伸ばそうとガツガツしてると受け取られそうで言いづらいですが、「お母さん、僕の授業受けませんか?」「何の授業受けたいですか?」だと気負いなく楽しくお願いできると思いませんか?保護者のかたも「実は理科の天体に興味があって…」と興味ある分野を答えてくれたりして、保護者のプライベート情報や興味関心を知るいい機会にもなっています。

講師の保護者対応力をあげるには?

ーー「顧客密着度」を高めるには、塾長はもちろん、教室長や現場の講師の保護者とのコミュニケーションスキルを向上させることも大切です。どのような取り組みを行っていますか?

まず大前提として、コミュニケーションスタイルを変え、スキルUPするには1年は続けることが大切です。元々コミュニケーションが得意なタイプであればいいですが、自己開示が苦手なタイプであると半年では結果が出ません。

一緒に「保護者のことを考える10分間」に取り組むこと、面談に同席すること、保護者とコミュニケーションをしている姿を見せること。それらを積み重ね、1つひとつの顧客対応の意図を伝え続け、「相手に興味を持つ」とはどういうことかを体感してもらっています。

また、すぐに結果が出るものではないからこそ、顧客からの反応を共有することも大切ですね。私は保護者からいただいた「A先生の指導報告書のコメント、好きです」といったささやかなメッセージであっても全て伝えるようにしています。保護者からの反応は成功体験。小さくても成功体験を実感すると「なんのために毎日10分時間を割くんですか?」「なんで自己開示してプライベート情報まで伝えなきゃいけないんですか?」と懐疑的だった人も変わっていきますよ。

塾経営者のかたは、もともとコミュニケーション力が高い方が多いため、歯がゆく感じることもあるかもしれませんが、粘り強く伴走していってあげてほしいですね。

今回は「顧客密着度」を高めるためのアイデアやマインドセットについてご紹介させていただきました。次回は実践編として、当塾の実際の保護者コミュニケーション事例をご紹介していきます。「塾通信」や「保護者とのやり取り」までまるっとお見せしますので、ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。