志望校の決定は最も塾と保護者を悩ますシーンと言っても過言ではありません。実際にどのような会話がなされたのか、リアル保護者に取材しました。
NKさん(中1の次女が集団塾と個別塾に通塾していた。高1の長女も同集団塾同教室を卒塾)
<家族構成>
夫:40代/都内勤務会社員
妻(NKさん)/40代・事務職
姉:高1/都内私立中高一貫校在校
妹:中1/都内私立中高一貫校在校
Comiru
今回は志望校選びについてリアルなお話を聞かせてください。集団塾と個別塾を併用された経験を踏まえて、それぞれの塾でどう対応の違いあったのかについてもお聞きしたいです。
まず、候補となる学校はどのように選びましたか。
NKさん
長女も次女も、学校に足を運んで気に入った学校を志望校にしました。塾の先生にも、偏差値は気にせず、選択肢に入りそうな学校はすべて見せてくださいと言われていたので、行けるところはとにかく行った、という感じです。次女はコロナのタイミングと重なってなかなか苦労しましたが、3歳上の姉と一緒にいろいろな学校を見たので、その中から決めました。
親としては通学経路、大学進学実績も調べました。口コミもいろいろなサイトを見ました。長女のときは初めての中学受験で、これは親の情報収集が大変だなーと思ったのを覚えています。首都圏で私学が多いのはわかるのですが、集団塾ならもう少し学校や卒塾生のデータをまとめて教えてくれるといいなと思いました。部活動や施設(プール・カフェテリアの有無など)で検索できたり、実際に進学した生徒さんと、できれば親御さんの特徴なども知れたらいいですね。
Comiru
候補の中から更に実際の受験校を絞込んでいくなかで、塾とはどういったお話をされましたか?
NKさん
長女の場合、本人が志望した学校のレベルと現状の成績が離れてはいなかったので、じゃあそこを目指しましょうという感じでした。併願校に選んだ学校がその塾からの実績がなかったため難色を示されましたが、やれるだけのサポートはします、ということでした。
特に併願校に関しては、本人に強い意思がないと、塾のパターンに当てはめられてしまうんだなと感じました。クラブが優先だと伝えているのにそのクラブがない学校を勧められたり、出題内容が類似しているから遠い学校の受験を勧められたりということもあり、違和感もなくはない、とはいえこちらに知識と経験値がない、そんなモヤモヤはありました。
Comiru
集団塾と個別塾を併用された次女さんの時はどうでしたか?2つの塾で違いはありましたか?
NKさん
まず、熱望していた学校への受験がかなり厳しくて、集団塾の方でははっきりと志望校を変えましょうと言われました。それがきっかけで個別塾に駆け込みました。個別塾の教室長に「どうしてもこの学校に入れてやりたい、なんとかなりませんか」と(笑)
個別塾の入塾面談で、「まだ1年あるので、今すぐ諦めず、でも他の学校も見てみましょう」という話をされました。「いい学校がたくさんありますよ、1校に絞ったらもったいない、いろんな学校のいいところ、本人に合うところを一緒に探しましょう」と言われました。個別塾というのは本当に生徒に個別に寄り添うんだな、と感動しましたね、弱っていたので(笑)
その場で、ここはどうですか?と提案してくれたり、成績表を見て、ここを伸ばしましょうという具体的な指導案もくれました。集団塾との併用のメリットや、それぞれの勉強の仕方を聞きました。
授業の復習テストの対策に力を入れなくてもいいので、模試で結果を出せるようにしましょう。
模試対策に力を入れることで塾の評価は下がるかも知れないけれど気にしないで。
過去問は少し早めに着手しましょう。
志望校の過去問ではなく、頻出分野の基礎問題に徹底的に取り組みましょう。
そんな話でした。「諦めるのはまだ早い、諦めることでモチベーションが下がるのはよくない、基礎を固めればチャレンジの道は開ける」そんな前向きな話が続きました。
志望校の話は保護者にとってとても重く、「ダメだった場合」などと言われると仮定の話でも落ち込みます。そんな心情を理解してくれるとありがたいと思いました。
流れ作業のように行われる保護者面談で「寄り添う」というのは難しいのかもしれませんが、保護者のケアもできる塾はまわりのお友達にお勧めしたくなりますよね。
Comiru
次女さんの志望校について、集団塾の面談では具体的にどんなお話をされましたか?
NKさん
次女の担当の先生は若い先生で、おそらくマニュアル通りのトークをされたのだと思いますが、意外と次女のことを理解してくれていて、「Hちゃんとこんな話をしましたよ」「Hちゃんはこの分野が得意ですよね」という話もしてくれて、娘のことをよく見てくれているんだなと感じました。家では見せない塾での様子を知ることで、この時期の張り詰めた気持ちにゆとりができたりもしました。志望校の過去問で基準点に届かなくて泣いている娘も、塾では友達と楽しく勉強できているんだな、まだがんばれそうかな、なんて思いました。
どちらの塾も、本人が悔いのない受験にすることが何よりも大切、と話されました。そのための道筋を具体的に示してくれたのが個別塾の方だったかなと思います。とはいえ、やはり集団塾は情報量で圧倒的に差がありますし、結果的に、生徒それぞれの持ち偏差値と合格校の乖離が少なかったという点で、一般的に考えて順当な選択肢を与えられたということになるでしょうね。
Comiru
実際の受験期間中の対応に集団塾と個別指導塾での違いはありましたか?入試の結果によって受験校を変えていくと思うのですが、その都度塾とのコミュニケーションはされましたか?
NKさん
長女は受験シミュレーションどおりに進行しました。その日のうちに結果を電話で報告し、2日目はここを受けて、その結果次第ではここに出願して、という感じです。親も冷静さを失っていましたから(笑)それはそれで助かりました。
次女の受験は本当に想定外な受験で、第一志望の1回目が不合格だったことで心が折れてしまい、そのあとの併願校を受けないと言い出すという、とにかくヒヤヒヤの5日間でした。両方の塾に相談したところ、集団塾の先生からは「気持ちを切り替えて併願校を受けよう、大丈夫だから」と説得されました。わたしも、そりゃそうだ、と思いました。
ところが、個別塾の教室長は「本人の意思を尊重しましょう。Hさんの好きな先生に来てもらいますから、今すぐ来てください。第一志望の2回目の試験に向けて、気がすむまで何時間でもやりましょう。悔いを残してはいけません。実力は十分です。」と言われました。びっくりしました。結局、前日なのに22時近くまで勉強して、泣きはらした顔が、少しすっきりした表情に変わって帰宅しました。
次女は気合で第一志望に合格しました。個別塾の教室長に電話したら声が震えていました。もちろん集団塾の担当の先生も喜んでくれて、こんなことがあるんだって、わたしも勉強させてもらいましたとおっしゃっていました。
特に中学受験は塾と生徒と保護者のチーム戦です。どんなチーム運営にするかは保護者が決めるのがいいのでしょうが、たいていの場合保護者は初心者です。やはり、塾が戦略を立ててチームを導いてくれるとありがたいです。その際に、どのくらい生徒や保護者の気持ちに寄り添ってくれるかが肝になるのではと感じました。