小6から中1になっても通塾を “説得”無しで継続してもらう方法 ~兄弟アプローチのコツと “資料”に語らせる重要性~

小学校から中学に上がる生徒に、通塾を継続してもらうことは、塾経営の上でも重要なポイントとなります。例えば、有名私立中や国立中を目指して塾で勉強してきた生徒は、合格を勝ち取った後、「通塾は不要」と考え、退塾する事態は容易に想像できます。 しかし、一方で、退塾する生徒を最小限にとどめ、引き続き通塾してもらうことに成功している塾もあります。あるいは、今まで塾に通っていなかった生徒を、中1になるタイミングで獲得し、生徒数を増やしている塾も見受けられます。 『小6⇒中1の継続(持ち上げ)』時点で生徒を大量に逃してしまう塾と、生徒の継続(持ち上げ)や獲得に成功する塾とでは、取り組みのどこに差があるのでしょうか。今回は、小6から中1への“壁”をものともせず、中1になる生徒の継続(持ち上げ)率と新規獲得率をアップさせるためのポイントを伝授します。

監修いただいた先生


どうすれば中1になっても引き続き通塾を促せるか

中学入試をゴールにしない“長い目”戦略とは

小学生の中学受験を指導する塾の悩みの種は、中学入試が終わると同時に、生徒の目標が無くなり、通塾の意味を失うために、塾を退塾する生徒が相次ぐ可能性があることです。合格者のうち7割以上が退塾するというデータもあります。中学入試希望者を対象としていない塾でない限り、何らかの対策を打たねば死活問題になりかねません。

中1に上がっても通塾を継続してもらうためには、「続ける理由」が必要です。中学入試だけが通塾の理由であれば、当然のことながら継続を促すことには困難を伴います。

ポイントは、中学入試が始まる前から、塾に通う意味を「最終的に希望する大学に合格するため」という上位の目標にレベルアップしておくことです。もちろん、個々の生徒に行きたい大学をイメージさせておくことや、自塾で大学受験まで面倒を見る体制を整えておくことが前提となります。その上で、小学生のうちから、ゴールを中学入試ではなく大学合格に設定する、いわば“長い目で見る”戦略を示すことによって、中学入試は単なる通過点となり、その後も続けて通塾する意味を見出すことができるわけです。

説得は逆効果、「数字を見せて自己説得」が有効

ただし、塾長や教室長が、「通塾を続けてほしい」と説得することは逆効果になりかねません。説得されると、生徒や保護者は「単に塾が授業料を得たいだけではないか」などと反発しかねず、通塾の動機付けを行うことは難しくなるからです。

そこで、有効なのが、日ごろから実績や数字を見せておくことです。例えば、塾の壁などに「A君、早稲田大学政治経済学部現役合格、通塾歴:中1~高3」「早慶大学現役合格者平均通塾年数6.26年」「国立大学医学部医学科合格者平均通塾年数8.2年」と掲示するなど、暗に小学校高学年から中1になっても続けて通うことが合格につながるという事実を示唆しておくのです。長く通って志望大学に合格した先輩の声を聞いてもらうのもいいと思います。

こうして日常的に、中1になっても通塾することで大学合格のチャンスが高まるという事実を認識させることによって、生徒は私立中や国立中に上がっても通塾の必要性を意識するようになります。結果的に、中1になっても退塾せずに、そのまま継続する割合がアップするというわけです。

授業料は首都圏では安く、地方では多少高くても良いのはなぜか

通塾を継続してもらう場合、重要なポイントとなるのが授業料です。首都圏では中学受験をし、合格した私立中に通う生徒が少なくなく、その場合、私立中の授業料が高いため、塾に通わせる費用を負担に感じる家庭も多いからです。

対策として考えられるのは、私立中に通う中1の生徒に週1回の通塾プランを提示し、金銭的に無理の無い範囲での継続を提案すなどです。週1回で全ての教科を教えることは難しいですから、その場合は「苦手な教科を徹底的に強化する」と謳い、英語だけ、あるいは数学だけと1教科に特化して補習していくことも一つの手です。そうして、まずは“中1の通塾の壁”を乗り越えてもらい、その後状況が変わったり、大学受験が近づくにしたがって、回数を増やすなどプランを変えていくことが有効です。

一方、地方の塾の小学生は、補習のために塾に通う非受験生が多く、卒業後は公立の中学に通い、県立の進学校の受験を目指すのが一般的です。中学の金銭的な負担は少ないため、中1から進学校を目標に週3回など授業料が多少高くなるプランでも受け入れてもらえる余力があります。

全ての生徒に当てはまるわけではありませんが、このように首都圏と地方では事情を考慮してプランを設定することが大事です。

中学受験失敗組も成功組も継続させる最強資料

通塾して中学受験した生徒の中には、試験で思うような結果を出せず、希望の中学に行けなかった「失敗組」も何人かはいるでしょう。そうした生徒を継続させるのは一見至難の業のように思えます。ですが、実は通塾を続けてもらうための秘策があります。

それは、同じように中学受験に失敗したものの、通塾を続けて最終的には希望の大学に合格した「先輩」のインタビュー記事を読んでもらうことです。そうすることで、自分も先輩のように行きたい大学に最終的にで合格できるという望みが芽生え、塾を続けるモチベーションにつながる可能性が高くなるからです。そのためには、失敗から合格を勝ち取った生徒の了解を予め得ておき、インタビュー記事をまとめて用意しておくことが重要です。実際に生の声を聞いてもらう機会をもうけるのは、さらに効果的です。

また、中学受験に成功し、大学受験も上手くいった先輩のインタビュー記事も、揃えておくと良いでしょう。希望の中学に受かった生徒が、油断せず、そこから目標とする大学に受かるまでに何をすればよいか、その軌跡を辿って自分の将来を重ね合わせるのに有効だからです。こうして、先輩のインタビュー記事という“最強資料”を活用することによって、中学受験失敗組も成功組も、通塾継続の可能性が見えてくるというわけです。

中1を新規獲得チャンスにする方法

使わない手は無い、超確実な兄弟アプローチ

一方、中1に上がったのを機に、新規で生徒を獲得するのに効果的な方法はあるでしょうか。絶対的に有効であり、使わない手は無いのが、既に自塾に通っている生徒の兄弟姉妹を勧誘すること。新聞折込や街頭で配布するチラシは該当する生徒や保護者が目にする可能性が不透明であるのに対し、通塾する生徒を介して兄弟姉妹にアプローチすれば、確実にチラシや資料がターゲットの手に渡り、読まれる確率が高いからです。

では、具体的に誰をターゲットにすべきか。多くの塾が行っているのが、スポンサーとなる保護者の財布の負担を和らげるため、「兄弟姉妹であれば入塾金無料」「教材半額」などと訴求する割引キャンペーンです。ただ、こうしたキャンペーンはどこの塾でもやっています。つまり、差別化になりにくいのが難点なのです。

生徒本人の心を掴む“対策プリント”とは

そこで、良い打ち手となるのが、通塾する生徒の兄や弟本人をターゲットにして、小6時点で何度か中学の内容の紹介冊子を渡したり、中1スタート後通塾していなければ、たとえば「期末定期テスト対策プリント」を渡すことです。実は、中1で最初の中間テストは、内容が比較的簡単なため、多くの生徒が良い点を取れて安心します。ですが、問題は期末テストです。普段の勉強の難易度が一気に上がり、テストで好成績を残すのが難しくなります。

「果たして期末テストは大丈夫だろうか」。多くの生徒が不安を覚えます。そうした時、例えば通塾する中3の兄を通じて中1の弟に、期末テスト対策に有効な問題を記載したプリントを提供するのです。もちろん回答や解説も合わせて渡し、「分からないことがあれば、いつでも教えるので気軽に連絡して」と、一言添えておきます。

そこで連絡が無くても諦めません。定期テストは年5回あるので、その後の中間、期末とテスト前には毎回対策プリントを兄・姉経由で渡します。プリントと共に、「当塾に通う生徒の期末テストの点数は5教科合計平均点は436点」など、通塾のメリットも伝える手紙も入れておきます。「通塾生は436点、自分は……」と否が応でも比べるようになります。

こうして何度もアプローチすることで、自塾の存在を記憶の片隅に残すことができ、いざ塾に通いたいと思った時にいの一番に想起され、新規獲得できる可能性が高まるわけです。対策プリントは紙で手渡しでも良いですが、Comiruを導入していれば、LINEやアプリを通じて直接通塾する生徒や保護者に対策プリントのPDFを送り、「弟さん(あるいは妹さん)にお渡しください」と、手間無くアプローチできる点がメリットとなります。

数字や文言には細心の注意を

兄弟アプローチは行うためには、既存の生徒に何年生の兄弟姉妹がいるのかなど、家族構成を正確に把握しておく必要があります。「自塾の生徒に何年生の兄弟姉妹がいるかを知っているか」と聞いて、答えられない塾も少なくありません。しっかりと「生徒カルテ」として、データを管理することが第一歩です。

また、自塾生徒の成績など数字を訴求する際は、誰をターゲットにするかも重要な検討項目です。個別指導塾でそれほど成績が良くない生徒を対象に塾を運営している場合、「当塾の生徒は期末テスト5教科合計平均点は436点」とアピールしても、そうした成績を取る生徒は“雲の上の存在”で、自分とは無関係の話と思われかねません。

その場合、数字を効果的に宣伝するのであれば、通塾によって何点得点がアップしたかを張り出したり、チラシに書いて配布するといった手もあります。「当塾生徒、入塾によって期末テスト5教科合計で100点アップ」などと記載し、各科目がどれだけ上がったかを明記するのです。こうして、自塾のポジションやターゲット層によって、どの数字をどのような文言でアピールするかは、細心の注意を払って決めることが重要と言えるでしょう。