[12]認知7回の法則 ~「認知される」について誤解していませんか~

監修いただいた先生

マーケティングの世界では「認知7回の法則」が広く知られています。意味は「人に認知されるには7回の接触が必要だ」ということです。誰だって、1度だけ名刺交換した人の顔と名前を覚えるのは至難です。何度もお会いする中で自然と認知していくものです。その回数が(もちろんアバウトですが)7回だというのです。

この「認知」というのは塾生獲得のために重要な意味を持ちます。どれだけ魅力的なチラシを配布しても、見たことも聞いたこともない塾に問い合わせるのは躊躇します。「見たことも聞いたこともある塾」を優先するのは道理です。広告宣伝の目的の1つは、地域の方に認知してもらうことにあると言ってもいいでしょう。

多くの人が、この「認知」について誤解をしています。「もう10年もこの場所で塾を続けているのだから、地域の人は皆、自塾のことを知っているだろう」と。これはとんでもない誤解です。

あなたにもこんな経験がありませんか?

例えば車をプリウスに買い替えようと決断します。そう思った瞬間、街を走るプリウスが目に付くようになったという経験が。「あっ、プリウスだ。あの色もいいなぁ…」と。

それまでもプリウスは何台も街を走っています。しかし意識をしていないと、その街を走るプリウスが目に入らない(認識できない)のです。それを「アンテナが立っていない状態」と言います。意識のアンテナが立っていなければ、人はモノを認識することはできません。

以前、とある塾経営者が愚痴をこぼしていました。

「20年も塾を続けているのに、先日の入塾面談で母親に『こんな近くに塾があるなんて知りませんでした』と言われました」と。

不思議でも何でもありません。どれだけ大きな看板を掲げようが、真っ赤なカッティングシートを窓に貼ろうが、我が子が塾年齢になる(塾を考える)まで母親の目には入らないのです。

世間に認知されるというのは、実に難しいものです。その上、前述のように自塾を選択してもらうための重要な要素になっています。ところが、多くの塾(中小・個人塾)が、「何枚撒いても反応がない」という理由でチラシの投入を辞めたり、年に数回あいさつ程度のチラシしか撒かなかったりします。それ以外の方法で「認知」を実現する手段を取っているのならいいのですが、たいていの場合は「ますます認知度が低くなる結果」を招いています。

田舎に位置するK塾もそうでした。長い不振で塾生も徐々に減り続け、いよいよ17名になってしまった。その年の春期に生徒数が30名まで回復しなければ塾を存続できないと、私のところに相談に来ました。聞けばチラシは、それこそ挨拶程度のメニューチラシを年に2~3回、新聞に折り込むだけでした。古くから知っている塾長で、その真摯な性格も学習指導に掛ける情熱も解っていましたので、再建のお手伝いをすることにしました。

予算がありませんでしたので、安いコピー用紙を大量に購入し、私が作成したチラシを私の事務所の輪転機で印刷し、新聞店に郵送することにしました。その数7種7回…認知7回の法則に従って、1月末から3月まで毎週のように新聞に折り込む計画です。内容は割愛しますが、片面は塾長の顔写真と教育理念・方針を中心としたエモーショナルチラシです。とは言え、白黒の輪転機印刷という粗末なチラシです。

3週目が過ぎた頃、塾長から「泣きの連絡」が入りました。未だに1件の問い合わせもない、このまま続けても無駄じゃないだろうか…と。私はその声を無視してチラシを作成・印刷し、当初の予定通りにチラシを送り続けました。すると…

泣きの連絡の直後に初めての問い合わせが入り、その後は次々と電話が鳴るようになり、結果、4月のゴールデンウィーク前には塾生数が35名まで回復しました。もちろんその間、塾生&保護者を対象とした親子セミナーを開催したり、友人紹介のキャンペーンを推進したりと、あらゆる塾生獲得の手段を講じたのは言うまでもありません。

ゴールデンウィーク明け、塾長が保護者の言葉を伝えてくれました。「粗末なチラシが毎週のように目に入り、どうしても気になって問い合わせちゃった。こんな塾長、本当にいるのかしらと思って…」

某FC系の塾は、開校時に数十万枚のチラシを撒くと聞いています。テレビコマーシャルも大量に流します。それも全て「認知」のためです。

以前、「チラシよりもDMの方が効率がいいのではないか」と質問されたことがあります。確かにDMは「今すぐ客」を掴まえるには効果的です。しかし認知を広め、未来の客を育てるためにはチラシが有効です。「どちらが」ではなく、「どちらも」必要なのです。今、新聞の購読率が下がっているのは確かです。折り込みチラシだけではなく、門配・駅配、ポスティング、地方情報誌…ありとあらゆる手段を駆使して、常に地域の認知度を上げてください。認知度が高くなれば、DMも友人紹介も有効性が高くなります。

認知7回の法則と言いますが、7回よりも8回、8回よりも9回の方が認知度が高くなるのは当然です。ぜひ、できることは何でもやって自塾の認知度を高め続けてください。

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