生徒が陥りやすいネットトラブル。無駄な退塾を防ぐために塾にできることは?

監修いただいた先生

昨今、小学生高学年からスマホを持っていると言います。いまどきの子どもたちはデジタルネイティブ、新しいツールを与えられるとすぐに使いこなし、大人の知らないところでトラブル含めいろいろなことが起こります。

 

Googleが発表した「 中高生インターネット利用白書 2021 」によると、インターネットのトラブルについて、回答者のおよそ3割(複数回答)の中高生が「 SNS で知らない人から不快なメッセージが来た 」と回答し、これは先生の想定を大きく上回る結果でした。大人の知らないところでトラブルを経験しているということです。

 

塾関係者から聞く話でも、ネットトラブルは増えていることを実感しています。スマホ、PC、ゲーム機器など複数のデバイスに囲まれていることから生じるトラブルも、退塾の原因の一つになっているかもしれません。

 

塾でトラブル自体を解決することは難しいのですが、予兆を見つけられたり、相談などを通じて信頼関係を強めることができます。

中高生インターネット利用白書 2021

対象:中高生 15, 557 人(中学生 5,835 人/ 高校生 9,722 人)および中高生の教員 119 名内容:インターネットの利用実態、インターネット利用で感じるメリットやデメリット、実際に経験したトラブル等についての調査

 

「ネッ友(インターネット上だけで親交があり、現実世界では接点のない友人)から嫌がらせを受けていて、脅迫されている。」とわたしに告白してきた生徒も、中学2年生でした。

 

明らかに様子がおかしい…。何かあった?と聞くと…

 

毎週顔を合わせていると、なんだか浮かない表情だな、悩みごとがあるのかなと感じることはあります。思い過ごしならいいのですが、本当に思い悩んでいることもあります。この生徒は、心ここに在らずでまさに勉強が手につかない様子でした。「何かあった?」と声をかけると、

 

「ネッ友に脅迫されていて、家を突き止めて乱暴しにくるかもしれない。怖い。」

 

と訴えました。彼は、いわゆる不登校気味で、交友関係はもっぱらインターネット。脅迫された原因も、ネット上の人間トラブルでした。

 

そんなこと気にせずまずは勉強しよう。そう言うことは簡単ですが、本当に悩んでいるように見えたので、「住所を教えていない限り家には来ないよ。どうしても不安なら警察に言ってもいいんだよ」と声をかけました。保護者にも相談しているとのことだったので、指導報告書のコメントを通じて、一連のコミュニケーションを共有しました。

 

コミュニケーションが不得意な生徒への声がけ

 

この生徒さんは、コミュニケーションが不得意で、不登校気味のため交友関係も限られています。そんなケースは、特に言葉遣いに気を使います。深く考えすぎないようにあえて軽めに「大丈夫大丈夫!」など明るい声がけを心がけています。問題を解き終えたらまず褒める、間違っても「次からこうすれば大丈夫!」というように。この先生は信用してもいいんだなと思ってもらえれば、信頼関係が築けます。

 

また、あまり学校へいけない生徒さんについては、学校の授業進度も意識して指導するといいと思います。

例えば、学力がある程度ある生徒さんは、学校より少しだけ早く授業を進めるのが良いと思います。学校には行きたくない・行けないけれど授業は遅れたくない、勉強ができなくなるのが怖いと思っているような場合、みんなと比べてまだ大丈夫だという気持ちの余裕が、成績UPに繋がります。

また、学力に不安がある生徒さんの場合は、じっくり時間をかけて基礎力を身に着ける指導になるでしょう。

 

生徒・保護者・塾の理想トライアングル

 

生徒の悩みを保護者に伝えるかどうか、迷うシーンもあると思います。例えば恋愛相談など、親には知られたくないかもしれませんね。

 

今回のように、保護者にも相談していることがわかっている場合、今後も一緒にフォローしていきましょうというスタンスで報告しても構わないと思います。保護者にとっても、親身になって相談してくれる相手がいることで安心しますし、面倒見の良い塾だと満足度も上がるでしょう。

 

一方で、親には言わないでほしいという悩みは注意が必要です。とはいえ保護者も知っておくべきこと(進路の悩み、深刻な交友トラブルなど)は無視できません。「保護者の方へは言わないでほしいと本人は言うのですが、どうしても放っておけないので」と前置きをして伝えることもあります。生徒本人に、全部は伝えなくても少し知っておいてもらったほうがいいんじゃない?と確認することもあります。

 

そして、保護者の反応も様々です。このことで保護者との信頼関係が強くなることもあれば、そうでないこともあるでしょう。何れにしても、悩みごとのせいで成績不振になっていたり、出席状況が悪いなど影響が出ているとしたら、学習塾としては手を打った方がよいと考えます。この場合、電話やメールでも構わないのですが、Comiruの場合は指導報告書のコメント欄がいいと思います。

 

どんなケースも、普段の関係性が良好に保たれていることが大前提です。そうすれば、期間講習などの受講率も高まり、試験前や入試直前の増コマもよくあります。

 

最近は出費をなるべく控えるために、自分で勉強させます、自宅でやれることはやりますと言う保護者が増えています。そんなときに、じゃあがんばってと突き放すのではなく、出来る限り生徒・保護者に伴走し、信用貯金をどんどん貯めていきましょう!