監修いただいた先生
塾・スクールは講師の質にかかっている!ならば講師を育てなくては!と思っても、目の前の業務で手一杯…。育成計画や指導マニュアルをつくる余裕なんてない──それが、1人教室長のリアルではないでしょうか。
「理想はわかる。でも現実には、そこまで手が回らない…。」
そんな声に応えるべく、がんばらなくても講師が育つ教室の作り方にフォーカスし、今日からできる講師育成アイデアをご紹介します。
そもそも、アルバイト講師を育成する必要があるのか
塾の講師は大学生アルバイトが多いと思います。つまり、長くて4年、就活など考えると2年足らずで卒業してしまう可能性が高いでしょう。ということは、アルバイト講師を育成する必要なんてないのでは…?
そう考えるのもわかります。ただ、講師の質は塾の評判に大きく影響します。限られた時間でも良い講師に育ってもらった方がよいでしょう。
そこでおすすめしたいのが、講師が育つスクール運営です。ちょっとした声がけや工夫で、ポテンシャルの高い講師は短期間でメキメキと成長します。
堅苦しい育成プランは不要!ポイントは声がけと雰囲気作り
特にアルバイト講師は、本人も期間限定のちょっと時給の良いアルバイトだと認識していることが多いかもしれません。そんな彼・彼女らに、厳しく指導したり、「Will-Can-Must」だの「SMART目標」といった小難しい目標設定をやらせたりというのも、「めんどくさいから他のバイトに変えよう」と辞められるのがオチ。
であるならば、「やりがいのあるバイト」「短期間で成長できるバイト」「就活でのアピール材料を得られるバイト」としてできるだけ長くいてもらえるように働きかけてみましょう。ポイントは適切な声がけと雰囲気作りです。
「さっきの授業よかったね!」授業後に認めて褒める
小さな塾の場合、授業中の声が聞こえてくると思います。生徒がよく反応した、あの伝え方はよかった、など、授業後に、できれば他の講師、スタッフに聞こえるように褒めてあげてください。誰でも褒められるとうれしいものですし、モチベーションになります。他の講師も学びのきっかけになるでしょう。
ちょっとしたことですが、声をかけようと意識しなければ、他の業務に追われていたり、他の誰かに声をかけられたりして、そのまま忘れてしまいがち。逆に、きちんと評価してあげようとすると、おのずと講師の授業内容が気になったり、生徒の反応を確かめたくなったりするものです。
教室長はあえて高難度の生徒を受け持たない
講師の授業内容や教室の様子を気にかけるためには、教室長が全体を見渡せる状況にいることが何より大切です。そのため、特に個別指導の場合、手がかかる生徒は教室長は受け持たない方がベター。
自分が受け持ちたくなる気持ちはわかりますが、教室長の仕事はミクロよりもマクロを見ること。全体が見渡せない状況ならば、コマ組みのバランスを考え直すなどの工夫が必要です。
講師との適切な距離を見極める
授業が終わったらさっさと帰宅する講師もいるでしょう。家が遠いのかもしれませんが、「お疲れさまでした」と言って5分でも10分でも休んでから退勤してもらえるような環境が理想です。ちょっとしたお菓子を用意しておくのもいいでしょう。
話しやすい空間があれば、小さな不満が積み重なる前にその芽を摘み取ることもできます。何か困っていないか、生徒の様子はどうか、はたまた、就活の進み具合はどうかなど、雑談がたくさん生まれる雰囲気を作りましょう。具体的に見えていることがあれば、「A君ちょっと最近大変じゃない?」など生徒名を入れて聞いてあげると打ち明けやすくなります。
受け持ちの生徒を工夫する
毎回手がかかる生徒もいれば、手をかけずとも成績が上がるような生徒もいます。難しい生徒を担当してもらう場合は、成績が上がりそう、コミュニケーションが取りやすいなど、反応のいい生徒とセットで持たせるといいでしょう。
声がけのポイントは「(反応の良い)Aさんはうまくいってるね!じゃあ(反応が良くない)Bくんはどうしようか。」という風に。モチベーションになる生徒を受け持つことで、退職のトリガーをなくすことに繋がります。
今の時代に合わせた講師の指導
今の時代の若者に、一方的なアドバイスや指導は合いません。「今ちょっといいかな?」という声がけさえ、「今すぐですか!?」と難色を示すかも…。どんなタイミングでどのような指導をすればいいのか、ポイントをまとめます。
たとえ5分でもアポを取る
たとえ5分、10分だとしても、「ちょっと時間くれるかな」「いつが都合いいかな」とアポを取りましょう。今の若い人は予定外の拘束を嫌がる傾向にあります。鉄は熱いうちに!と思いがちですが、きちんとアポを取ることが大切です。
場合によっては1on1も効果あり
1on1(1対1の打ち合わせ)は必ずしも全員にすることはありません。しかし、リーダー的な存在の講師、またはそれを目指している講師や、目をかけたい講師に対しては効果があることもあります。
この場合に話す内容としては、以下のような、少し踏み込んだ話ができるとよいでしょう。
・この塾でどうなりたいか、長期的な目標
・就活中なら、この塾で得た経験をどう活かしたいか
・長期的な目標に対する現時点での自己評価
・今後伸ばしたい能力や身につけたいスキル、
・担当の生徒のコミットメント。具体的な目標。
また、これは裏技的ではありますが、不満分子のある講師にじっくり向き合うきっかけにも使えます。不満を持つ講師の雰囲気はどんどん他の講師にも伝染します。気が付いたら即対応するのがベターです。
指導報告書をチェックする
指導報告書の書き方や内容をチェックし、必要があればアドバイスをします。細かい指導内容というよりは、この書き方で保護者にきちんと伝わるかどうかをチェックすると良いでしょう。
講師育成プランは必要か
繰り返しになりますが、大学生のアルバイト講師は長くて4年、就活に入ると継続が難しくなります。ですから、細かい講師育成計画は必要ないと思います。期間限定でその間でいかに育ってもらうか。なるべく手をかけずに、普段のコミュニケーションを大切に関わっていきましょう。まずは講師の先生たちが楽しいと思える塾・スクールに。この仲間がいるからがんばれるという雰囲気を作るのも塾長の大切な仕事です。