学習の定着にはインプットよりアウトプットが重要

監修いただいた先生

 

インプット学習とアウトプット学習

学習には「インプット学習」「アウトプット学習」があります。

「インプット学習」は、見る・読む・聞くなどの受動的な学習です。知識を入力する作業で、例えば、本を読んだり、授業を受けたりして、内容を理解するといったことを指します。

「アウトプット学習」は、書く・話す・体験する・人に教えるなどの能動的な学習です。インプット学習によって蓄えた知識を組み合わせたりして出力する作業です。授業の内容をノートにまとめたり、学んだりしたことを、誰かに説明するなどといったことを指します。

人の脳は、インプットだけでは知識の定着に限界があると言われ、アウトプットを繰り返してはじめて自分の知識として消化できることがわかっています。しかし、現在の日本の教育システムでは、どちらかといえばアウトプットする機会よりもインプットに重きを置かれています。これでは学力の向上に効率的だとは言えません。

インプットはできてもアウトプットができない!?

生徒の悩みの一つに、「授業ではわかるけれど、家で勉強するとできない」ということがあります。いわゆる「わかる」と「できる」の違いです。「わかる」=インプット、「できる」=アウトプットと言い替えてもいいでしょう。

「わかった!」と思っても、いざテストとなると自分の力で解けないのは、アウトプットする力が低いからだと考えられます。

アウトプットには2種類あります。一つは「自分の中にあるものを自分の方法で出力する」というアウトプットです。この場合、多くの場合は他人がどう思うかや、何が求められているかを考えてアウトプットするわけではありません。その意味で独創性の高い、クリエイティブなアウトプットです。

もう一つは、何が求められているかを視野に入れながら、自分の考えや学んだことを整理して出力するアウトプットです。原理原則の理解や、論理的思考、物事を俯瞰して出力する能力が求められます。

テストや演習問題で求められるアウトプットは、後者のアウトプットです。例えば、数学の複数の公式をインプットした後に、出題パターンに応じて公式を当てはめ、正解に辿り着かなければいけません。英語で学習したイディオムを駆使しながら作文していく、理科ではなぜその現象が起こるのかを説明できなくてはいけません。

インプット学習で知識はあるのにアウトプットがうまくいかないと、生徒は落ち込んでやる気を失くしてしまいます。そうならないために、学習指導の段階から「この単元では何をアウトプットさせようとしているのか、それはなぜなのか」という本質的なことを生徒に理解させることが重要です。

本質的なことを理解して学習する、問題を解く、という習慣をつけることで「自分で問題を解決する力」が身につくようになります。

良い授業でアウトプットのコツを学ぶ

ここからは、アウトプットがうまくできるようになる学習指導についてご紹介します。

アウトプットを重視する先生の授業は、わかりやすさが工夫されていたり、生徒の興味をひくような例え話や生徒に響く言葉を上手く利用しています。また、無表情でぼそぼそ話をするよりも、笑顔で堂々と話した方が相手に伝わります。

このようなノウハウを、先生自体が実践し、その重要性を生徒に伝えていくことが大切です。そうすれば、生徒は授業を通じてアウトプットのコツを身につけることができます。アウトプットがうまくいき、自分の知識を伝えられるようになると、生徒のモチベーションが自然と継続するようになるでしょう。

生徒のアウトプット力を高めるアイデア

生徒のアウトプット力を高める具体的なアイデアについて、エヌラボスタディの新田先生に伺いました。

<小学生の場合>

授業の最後に、「今日学んだこと」をまとめてあげると良いと思います。その際、板書やノートに、図や矢印を用いて視覚的に伝わるように意識してみてください。それを見て、「図解するとわかりやすいな」「見出しをつけると見やすいな」ということを、直感的に学んでくれると思います。

授業では「なぜそうなるのか説明できる?」と、アウトプットの機会を作るよう意識します。「わかった?」と聞いたら「はい」と答えるので、「今日初めてわかったことはどんなこと?」「今日難しかったところは?」など、Yes or Noで答えられない問いがけをしましょう。また、定期的にノートを提出させると、「見せるために書く」という意識が生まれると思います。

保護者には、「今日何を習ったの?」という声がけをお願いしましょう。指導内容をあらかじめ指導報告書で共有しておくと”答え合わせ”ができて良いと思います。

具体的な学習内容がスラスラ出てきたらもちろん合格ですが、「わからない」「いろいろ習ったよ!」など抽象的な答えは不合格です(笑)

<中学生の場合>

授業の最後に、「今日学んだこと」を言葉もしくは文字でまとめる癖をつけると良いと思います。うまく表現できない=理解が浅いということ。それを本人自身が知ることが大切です。理解できていないポイントを、先生と生徒双方で認識できるのも大きいです。

学校でも、夏休みの宿題などで新聞を作らせたりしますね。自由研究などもそうですが、調べたことをまとめて、最後に自分の意見を述べる、とてもいいアウトプット学習だと思います。塾でも受験で忙しくなる前のタイミングでぜひ取り入れたいですね。

<高校生の場合>

高校生になると、アウトプットがうまくない生徒は如実に成績に表れます。最近の大学受験はアウトプット、つまり小論文や面接、理系科目でも「説明せよ」という問題が多くを占めます。こうなってくるととにかく慣れることしかありません。徹底的にアウトプットさせることです。

これに付け加えて、「そもそものインプットができているか」を確認してほしいと思います。内容自体が急に難しくなるのが高校生です。正しく理解し、きちんとインプットするということを意識づけるようにしたいですね。

スタンプ一つで会話ができる世代だからこそ、自分の言葉で表現する能力が求められます。会話ひとつとって、「今のはどういう意味?もっと深く教えて」と、嫌な顔をされても、とにかく突っ込みまくってください(笑)

アウトプットの苦手を克服するために

アウトプット苦手な生徒には、「どこの話?」「いつの話?」「どんなふうに?」など、5W1Hで細かく区分けして聞いていくと考えがまとまりやすくなります。このような補助輪の出し方は、講師の技量そのものだと思います。

うまくアウトプットできそうなタイミングで補助輪をどう外していくか。スモールステップを意識できる先生が、最強のアウトプット製造機だと考えています。

アウトプットに慣れてきたら、あとは繰り返しです。苦手だからと避けていては、いつまで経ってもアウトプットできるようにはならないということ、そして、何のためにアウトプットを繰り返すかという本質の話を、先生から生徒に伝えられると良いと思います。

もちろん、正しいインプットは大前提。インプットとアウトプットの両輪を気にできる講師は、最強です。